気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

Stay With Me 1

2018-12-10 02:33:00 | ストーリー
Stay With Me 1




彼氏だった海人くんと別れて1週間

当たり前だけど
海人くんからはメールも電話も来なくなった

私がフラれた形で二人の関係は終わったんだもん

当然だよ...



24歳 吉野 理奈

私は華やかさもない 
ごく平凡なOL

お付き合いをした男性は海人くんで二人目

本気で凄く好きになって
ちゃんとお付き合いしたのは海人くんだけ

海人くんとは大学の同級生だった


人気者の彼と社会人になってまた再会し

私は大学の頃から片想いをしていた彼に勇気を出して告白

付き合うことになったけれど半年程で別れてしまった



今までに来た海人くんからのメールを読み返すだけで

悲しさがこみ上げ涙が溢れてくる


私にはまだ海人くんへの未練が残ってる




海人くんのメールを見ていたら

同じ大学で海人くんとも友達の修司くんからメールが来た



修司くんには私達が別れた事を告げた

修司くんは昔から優しいから気を使ったのか私を食事に誘ってくれた


海人くんとの別れを話すとやっぱり私は涙が溢れて

優しい修司くんも黙って私の話を聞きながら涙ぐんでいた



ーーー



今の部屋には海人くんとの思い出が残っているからこの部屋から離れようと決め

引っ越しには修司くんが手伝いをしに来てくれた


引っ越した次の部屋は会社から少しだけ遠くなっちゃったけど

海人くんとは歩いたことのない町にした




引っ越しの荷物の運び入れを修司くんはてきぱきと手伝ってくれたお陰で

その日の夜にはある程度まで片付けることができた

「理奈ちゃん、大丈夫そう?困ったこととかあったら遠慮なく言えよ?」

「本当にありがとう。そうさせてもらう(笑)」


修司くんは帰り
新しい部屋で一人きりになった



よし、明日からは気持ちを切り替えよう!




それから一日一日
日が経つにつれて

少しずつ海人くんのことを思い出す回数が減ってきた


そんなある日ーー



退社して駅に向かって歩いていると

見たことのある男性がチョコレート専門店の前で立ち止まっていた

えーっと… あの人誰だったかな…
あ、そうだ!同じマンションの人だ

たまにエレベーターですれ違う度に
軽く会釈をしてくれる男性だった

見た感じ年齢は30代後半ぐらいの人


「あのぉ… こんにちは」

私が声をかけるとその男性は驚いた表情をして照れくさそうに私に微笑んだ


「あ、こっ、こんにちは、、」
私に会釈をした


「お店に入らないんですか?」

私がそう尋ねると
男性は頭をかきながら


「(お客さんが) 今女の人ばかりで入りづらくて(笑)」

確かに店内は若い女の子でいっぱいになっていた


「じゃあ私、一緒に入りましょうか?」

そう言うと男性は明るい表情に変わった


「えっ?助かります!ありがとうございます!」

へぇ、こんな明るい表情をする人なんだ(笑)

いつも軽く会釈して足早に駅に向かって行く人だから表情までちゃんと見てなかった


私も入ったことのないお店ーー


女の子のお客さんが少し少なくなった隙に

男性と店内のガラス扉を開けた


店内は甘いチョコレートの香り
色とりどりのチョコレートがガラスケースに並んでいる


わぁ、可愛い…
自然と顔がほころぶ

チョコレートの甘い香りって心までとろけそうな気分になるなぁ

ガラスケースを覗きこむ男性をチラッと横目で見たら

女の子のようにキラキラした表情でチョコを眺めていた


この人 本当にチョコが好きなんだなぁ(笑)



「どれにするんですか?」
そう男性に声をかけてみた

「悩むなぁ… んー じゃあ 、、 」


10粒ほど男性は選んだ
私は5粒


「君の分は僕にプレゼントさせてください。お礼です(笑) 」


男性にチョコをプレゼントしてもらえた

「もうこのまま帰りますか?」

「はい。帰ります。」


同じマンションだからそのまま一緒に電車に乗った


お互い名前も知らないし
ただ同じマンションで顔見知りというだけの間柄


この時 初めてこの男性の名前を知った

「僕は寺崎と言います。」
寺崎さんは39歳の独身だとわかった


私より随分と年上の大人の男性

PCのショップで修繕や作動状況を調べたり

初期セッティングや不具合を調べて調整をするお仕事をしているらしい


ショップは会社の近くだし、前に何度か立ち寄ったことがあった


眼鏡の感じのせいもあって
本当に見たままの真面目な男性だな …

マンションに着いた


「今日は本当に助かりました。あの… もし迷惑でなければ、また今日みたいにスイーツを買いに行く時に付き合ってもらえませんか?

あっ、もちろん僕、おごりますから!」


スイーツは大好きなんだけど女の子が多いと気後れしちゃうってことかな?


「いいですよ(笑)予定が無い日なら(笑)」

寺崎さんは嬉しそうな表情をした

「それは嬉しい!実は他にも行きたかったところがあったんだけど
そこも今日の店みたいに若い女の子がいっぱいで。

じゃあ お言葉に甘えて… よろしくお願いします。

あ… じゃあ… えっと… 僕のID送ります… 」


照れくさそうにポケットからスマホを取り出した

寺崎さんとIDの交換をして二人でエレベーターに乗り込んだ


「じゃあまた連絡させていただきますね(笑)」


そう言うと3階で寺崎さんは降りた








部屋に入り
いただいたチョコの箱を開けてみる



「…ほんと良い香り」

今頃、寺崎さんもチョコを眺めてるのかな

チョコを眺めがらほころんでいた寺崎さんの横顔を思い出して私も顔がほころんだ


仕事以外で男性と話をするのは修司くん以外いないから新鮮な気持ちだった


珈琲を入れて
一粒チョコを少しかじってみた


わっ、美味しい…
オレンジフレーバーのチョコレート

オレンジの甘酸っぱさとチョコのほろ苦さが同時に口の中に広がる


甘いものって幸せな気分になるな…
その夜は心がほっこりした


それからしばらくして

寺崎さんが前に話していたスイーツのお店に行く約束をした

 
この人に彼女がいたらデートはスイーツ巡りなんだろうな

そして約束したパンケーキの美味しいカフェに入った

「本当に付き合わせちゃってごめん(笑)」

スイーツのこととなると途端に子供みたいな表情になる寺崎さんも

仕事の話やITの話になると途端に大人の男性の表情に変わる


この人のこのギャップ、魅力的だと思った

「寺崎さんは彼女、作らないんですか?
そうすれば彼女と一緒にスイーツ巡りできるのに 」

「うーん。そうだね(笑) 僕の仕事ってオタク系じゃない?

接客でもないし裏方の仕事だから女性との出会いもない(笑)」


微笑みながらコーヒーを飲んだ


「今更だけど‥吉野さんの貴重な休日に僕なんかに時間使ってもらっていいのかなって気になって。

彼氏とかいたら悪いななんて後から気がついて…」




「そういう人、今はいないので大丈夫ですよ(笑)それにスイーツ私も好きなので。」

「そっか。じゃあまた付き合ってもらえたりするかな。」

「ええ、是非(笑)」

ほっとした表情で私に優しく微笑みかけた




ほんのちょっとだけ
その微笑みにドキッとした


でも寺崎さんからはスイーツのお店の情報交換以外のメールが来くることはなかった



そんなある日 ーー




『吉野さん。スイーツじゃないんだけど、食事行かない?』



え?
スイーツじゃない?

初めてだな…


私はそのお誘いを快諾した



約束の日

マンションのエントランスに降りると男性から声をかけられた



「こんにちは。」


一瞬 誰だかわからなかった



「寺崎さん?」

「はい… 」
照れくさそうに頭をかいた



この仕草
寺崎さんだ(笑)


「誰だかわかりませんでした(笑)とても素敵です。」



スーツ姿 初めて見た
今日は眼鏡もかけてない


いつもと雰囲気が違って別人のよう

なんだか…
格好良い










「ありがとう、あっ、行こうか… 」


めちゃくちゃ照れてる

凄く年上の男性なのにシャイに照れる所が可愛い(笑)




車のドアを開けてくれて乗り込んだ


ほんと…
いつもとイメージが違うなぁ

運転をする寺崎さんの横顔をついチラチラと見てしまう


真面目な雰囲気は全然変わらないのに
渋くて格好良い大人の男性になってる

大人って… (笑)

15も年上なんだから当然でしょ!(笑)



「今日は僕、デートみたいな気分だけど、、、いいかな(笑)」


デート?
あぁ、だから今日はオシャレな感じなんだ


「あ!ごめん… 先にデートなんて言ったら君が来てくれなくなりそうで… 」


苦笑いする横顔


「だから今日はいつもと雰囲気が違うんですね(笑)」

「中年のおやじなりに頑張ってみた(笑) 」

そう言いながら照れ笑いする寺崎さんがほんとに可愛い


「デートなら私もそれなりの格好してくれば良かったな 」

「君はいつもそのままで十分可愛いから(笑)」


可愛いなんて言われたことないよ

私は平凡で華もない地味な女だし…


「ははっ!中年のおやじが何言ってんだか、だよね(笑) 」

そう言いながらもずっと前を向いたまま私の顔を見ない


おやじだなんて、スイーツ巡りをしてた時はそんなこと言わなかったのに…

年齢差を気にするようになったのかな
私は全く気にしてなかったけど…



オシャレなお店に到着した

へぇ~! 素敵なお店!


そこで寺崎さんと話をしながら食事をした

ほんとにデート感…
ドキドキする


こんなに年上の大人の男性とデートなんて初めて 

しかも今日の寺崎さんは素敵だし

少し緊張しているように見える寺崎さんの表情が可愛い


「あの、、吉野さんのこと、、理奈ちゃんって呼んでもいいかな」


え?


「あ、ごめん、馴れ馴れしいか、、

驚いた私の表情に寺崎さんは苦笑いした


「あ、いえ… 構いませんよ(笑) 」
私のその一言にホッとした表情に変わった

ちゃん付けだと余計に年の差を感じない?(笑)


寺崎さんは私のこと
どう思ってデートに誘ってくれたんだろう

デートだから恋愛対象...とか?


まさかね(笑)


でも
もしそうだったら…?


私は?

寺崎さんのこと
恋愛対象なのかな…






ーーーーーーーーーー


Gotta Be You

2018-12-03 13:56:00 | ストーリー
Gotta Be You






ーーー 5年前


25歳の俺は一人

50日間の予定で北欧、ヨーロッパへと旅に出た



今日で旅は10日目






カフェでコーヒーを飲みながら
一眼レフカメラに視線を落とす



納めた画像の一枚を眺める

フィンランドのオラヴィ城 
良かったな…



オラヴィ城が気に入り
次も湖城に行ってみようと決めた


そして気になったリトアニアのトラカイ城に向かった



遠くに見えるトラカイ城

俺はトワイライトタイムを待った



次第に太陽が沈んで 街には街頭が灯り始める


トワイライトタイムが来た


ぼんやりと美しく浮かびあがってきたトラカイ城




夢中でシャッターを押す

完全に太陽が沈んだ後もライトに照らされて浮かびあがる姿も美しい



ここも来て良かった


言葉にできない心が拡がっていくような不思議な感覚


食事を済ませ事前に取っていた宿に向かう


ーー だいぶ旅慣れしたな、俺も



疲れが一気に出たのかベッドに沈むように眠りについた


翌朝、チェックアウトを済ませ街を出るため列車に乗り込んだ

車窓から見える景色をしっかり覚えておきたくてずっと窓の外を見ていた

すると日本語で誰かに話しかけられた


「おにいさん、もしかして日本人? 」


通路を挟んだ隣の席にいた女性だった


「はい… あなたも?」


「ええ。仕事でこの国来ているの。」



30代なかばのナチュラルな雰囲気の女性


「仕事って何の仕事をしてるんですか?」


その問いかけに彼女は鞄の中からカメラを取り出した


「これ!」


彼女は女性向けの旅雑誌の写真と記事を書いていた

一般的な観光ブックには載っていない所を中心に

一人旅する女性に実際に見て欲しい素敵な所を紹介するためらしく

いろんな雑誌社から依頼があった時だけ仕事で旅に出るフリーのライターらしい




俺は知らなかったが

彼女はその道では名が知られている人物だった



彼女は俺の知らない世界を沢山知っていて

彼女の話を聞いているだけで行ってみたくなった


話の中に出てくる街並みや食べ物、出会った人達の話を聞いている内に


まるで彼女と一緒に体験したような気になってくる…



もっと彼女が見る世界を一緒に見たくなり
旅の同行ができないかを尋ねてみた



「かまいませんよ。ただし、旅費は別ね。私は雑誌社の経費だから(笑)」



彼女は微笑んで快諾してくれた






彼女は咲希


35歳で独身
東京で一人暮らし


年に数回 何週間かかけて世界中を飛び回るらしい


移動中はメモを見ながらパソコンで原稿を書く


目的地に着いたらまずは高い建物に登る

そこから見える街並み、次に向かう場所を決めることもあるそうだ


移動はできるならタクシーは使わず徒歩


徒歩だと車では見落とすような良いスポットが見つかるそうで

あえて回り道しながら目的地に行く時もある



これがプロなんだなと感心しながら彼女に魅力を感じていった




彼女は何をしている時も楽しそうで一緒にいるだけで俺は幸せな気持ちになっていた



「ねぇ、ハルくんはいつ日本に帰るの?」

「あと半月ぐらいかな?」


“あと半月でお別れか…”

寂しさが湧いてきた





「そう。私もそのぐらいには帰国予定だよ。一緒に旅した写真送ってあげるよ。」



写真容量が大きいからと言うのでPCのアドレスを教えることにした



宿泊している宿に着き
一緒に食事をしていたある夜ーー




「ハルくん。私、彼と別れちゃった(苦笑)」

苦笑いをする彼女



「え?いつの間にそんな話したの?」



彼氏がいるとは聞いていたけど

本当にいたんだ…




胸がぐっと苦しくなった



「彼から電話があったの。」


長く海外に出かける彼女と彼の心のすれ違いのようだった


「こういう仕事してると恋愛なんて無理だね(笑)」

明るく振る舞う彼女を見ていると余計に胸が痛む


「無理なんかじゃないよ!俺はそんなことないと思う!」

「そうかなぁ(笑)ハルくんありがと。なんか前向きに生きていけそう (笑)」


彼女と食事を終えて俺は自分の部屋に戻った



しばらく時間が経った

どうしても彼女が気になる




もう寝てるかな…


メールを打ってみると直ぐに返事が返ってきた



『眠れなくてまだ寝てない』


やっぱり…
別れたばかりだもんな


傷ついてて当然だ…



俺は酒を片手に彼女の部屋のドアをノックした


「俺。開けてくれない?」

「今日はもう寝よう…」



ドア越しの彼女の声が少し変だ


「酒持ってるからさ。一杯だけ俺に付き合ってよ(苦笑)」



何とか扉を開けてもらおうとした




するとゆっくりドアが開いた


目が真っ赤なのをメガネと前髪で隠そうとしながらドアから離れた


「やぁだな〜恥ずかしいな(笑)」



…やっぱり泣いてたんだ



「あーうん、咲希さんごめんよ〜(苦笑)なかなか眠れなくてさ!一杯だけ付き合って(笑)」



ーー俺は彼女の涙に気づかないフリをした



彼女が少しでも笑顔になれるなら

少しでも今の悲しみを忘れられるなら



昔の俺の失敗談やしょうもない話まで

彼女と笑いながら沢山の話をした



それからも彼女はいつも通りの明るい笑顔で旅をした


そしていよいよ俺が日本に帰国する日の朝になった

フライト時刻は現地時間で夜18時30分発


残りの時間までは俺が彼女の写真を撮らせてもらう約束をしていた


朝、彼女の部屋の扉をノックする



ーーー返事がない…


そっとドアを開けてみると

もうそこには彼女の姿はなかった





一瞬 時が止まった


なんで…!



電話をしてみても電源が切れている

慌ててチェックアウトを済ませ街中を探した




なんで!?

なんで何も言わずにいなくなったんだよ!




胸が痛くて苦しくなる


俺は… 
俺は咲希さんに

恋をしていたんだーーー




彼女にその想いを告げようとしていた

好きだという一言を…





もう街を出てしまったのかもしれない…


空港に向かう列車の車窓から見える景色かぼんやりと目に映った



ーー“おにいさん、日本人?”ーー




とっさに隣を振り向く


彼女はいなかった…




次第に視界が見えなくなってきた


なんで俺もっと早く咲希さんへの想いに気がつかなかったんだろ…


なんでもっと早く想いを伝えなかったんだろ…



溢れる涙が止まらなくなった




もしかしたら彼女が空港にいないかと目を凝らして見渡しても

やっぱり彼女はなかった





そして俺は

飛行機に搭乗し日本に帰国した




東京は悲しいくらい 
良く晴れていた



久しぶりの自分の部屋

こもっている部屋の空気を入れ換えるために窓を開けたら

清々しい風が入ってきてカーテンが揺れた


PCに写真を送ってくれると約束したことを思い出し

慌ててPCの電源を立ち上げた




しばらくぶりに立ち上げたPCの受信ボックスは未読メールが溜まっていた


彼女からメールが来ていないか見落とさないよう慎重に探した



ーーー 見つけた‥!!



出発する前日の夜に送信されていた



そのメールの添付画像を開いてみた


写真は一緒に旅した様々な街並み

そして 俺が写った写真…




“ハルくん

あなたと一緒に旅ができて本当に楽しかった。

いつも優しくて誠実なあなたと一緒にいろんな素晴らしい景色を見られて

一人では感じられない幸せを感じることができた。

そして私の心はあなたに救われ優しさや誠実さに触れられて

あなたに出会えて本当に幸せだった。

心から ありがとう。”




そしてもう一通

メールが届いていた




そのメールの文面と一枚の写真に涙が溢れ出た


「なんだよ… 嘘だろ…」





その写真は




うたた寝している俺の頬に

キスをしている咲希さんの自撮り写真だった



“旅している内に

いつの間にか私はあなたに恋してた。

ありがとう。 咲希”








窓から吹き抜ける春の風と共に

彼女の想いが僕の中を駆け抜けていった






"Gotta Be You"






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