Verdure 4F

茶道25年、ブログ19年! 家業を継いで13年。息子は10才。子育て、茶道、季節行事、料理、日記、読書の記録など。

「小村雪岱展」

2012年11月23日 | art
先日は、実家からお稽古へ~のあいだに、ニューオータニ美術館「大正・昭和のグラフィックデザイン 小村雪岱展」に寄り道しました。

小村雪岱は、鏑木清方とともに鏡花の本の装丁で知られた画家で、清方が日本画家として大成していったのに対し、雪岱は新聞連載小説の挿絵に本の装丁、版画などのデザイナーというイメージです。
江戸情緒ただよう、絵の外への空間の広がりと、絵の背景となる物語性への想像をかきたてる、味わいのある絵で、私のけっこう好きな画家です。

同じ頃に川瀬巴水や小林清親がいて、巴水の繊細な風景版画も好きですが、雪岱は実景というより情緒性、物語性がメインの感じ。


「おせん」という小説の挿絵という、たくさんの傘の往来の絵。傘のあいまから覗く2つの顔。
小説をまったく知らなくても、二人の間に緊張感に満ちた物語があることを想像してわくわくしてしまう。

座敷に置かれた三味線だけを上空から俯瞰する絵、ペルシャ装飾風の装丁、日本家屋のシルエットだけ、表具を上下裏表非対称に切り取ったような装丁、細かい縦線の効果、斜めに画面を切る構図、堀端に十二単の女性が座る絵・・・

すごく日本的なものを、日本的だけでないデザインをすることで、日本的なインパクトをいっそう強めているような。
どれもこれもとても印象的ですが、こうしてたくさんを一度に見れることで、デザインの多彩さにも驚かされます。

いいなぁ~。センスいいよなぁ。


歌舞伎や芝居の舞台芸術を描いていたことを初めて知りました。
「一本刀土俵入」、観たことある!
舞台装置原画だけだと本の装丁と似たような印象だけですが、それはこちらに“見る目”がないせいだけで、それによる実際の舞台の写真が並べて展示されているのを見ると、ものすごく印象的な舞台芸術になっていることがよくわかります。
月夜に松の古木のシルエット・・・太い松の存在感!! 隣の塀に「貸家」の張り紙とか・・・ 細かい。


ニューオータニ美術館は知名度が低いのか、ホテルの中なので行きにくいのか、たいしたことないとナメられているのか、いつも人が少ないです。
メジャー路線でなくちょっと知る人ぞ知る的なテーマで丁寧に作品を集めて神経の行き届いた展示をしてくれる、規模も大きすぎず小さすぎず、満足度の高いいい美術館なのですが、入館者が多いとも思えず・・・ ゆっくりじっくり観れて、とてもありがたい。
最近の公的美術館のように入館者が増えて人の肩の間からしか観れないようなことにならず、なおかつ閉館したりしないで欲しいなーーー と、強く虫のいいお願いをしております。

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2 コメント

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粋な美術館 (赤坂うさぎ)
2012-11-24 06:28:51
大げさな宣伝で入館人数を集める商業ベースの美術館が増える中で、大人の道楽として粋人がコツコツと個人的に収集した美術品を密やかに展示している美術館の存在は重要だと思います。こうして価値のある美術品が守られていくことを願うばかりです。
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選ばれる所有者 (ぴんくこあら)
2012-11-27 11:56:00
さすが高いご見識ですね。本来その任にあるべき公の美術館に損益分岐の概念が導入され商業ベースに。営利組織である企業の私立の美術館が採算度外視で運営してくださるこそ見識でしょうか。
とはいえ、かつてバブル崩壊時に母体の経営が悪化して続々と閉館になったのも私立の美術館でした。美術品は所有者を選ぶと昔から言われるのも、そういうことでしょうね。
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