思う・学ぶ・発達支援 心のケア サイト

特別支援教育の実践情報など。また,日々の喜びを見つけ、よくする手立てはないか考える、成長・教育のサイトです。

視覚教材と発達段階に応じたクイズで惹きつける

2018年12月29日 | 教育
1 発達段階が初期の子

ことばがあまりない、もしくは自閉的な傾向があり、オウム返しになってしまう子
ども達がいる。「太田ステージ」でいうと、ステージⅡからⅢの子ども達である。発
達年齢的には1歳半から3歳程度である。

 この段階の子ども達には、絵本の読み聞かせからクイズを出していくのがよい。絵
を見せ、楽しいお話をしながらそのお話の中の動物、食べ物、出てくる数などを聞く
のである。次に、どのような絵本がよいかである。

【イラスト・絵は極めてシンプル】


 これが見せる絵本の条件となる。発達段階の初期の子、また、自閉的傾向のある子
は視覚的な情報に惹きつけられるが、その情報の整理は極めて苦手である。ぐじゃぐ
じゃした絵、込みいったカラフルすぎる絵はそれだけで混乱を招く。少し小さい子向
けのものになってしまうが、「ミッフィーシリーズ」「ノンタンシリーズ」は余計な
情報が背景に少なく、惹きつけやすい。

「さつまのおいも」「えんそくバス」という絵本冊子もヒットした。

2 「えんそくバス」実践例

 絵本を読む。そして、バスに揺られて左右に動いたり、がたがた道で上下に弾んだ
りするところは一緒に体を動かす。模倣の動きも入れながら絵本に引き込んでいく。
そして、場面に応じてクイズである。

「どんなおやつがでてきたかな?」
「どのおやつがすきですか?」
「どれをもっていきたいですか?」
「おやつはいくつでてきましたか?」

 子ども達の状態に応じて、絵本の場面を隠して質問してもいいし、見せながら質問
してもいい。一緒に数えながらでもいい。要は子ども達に、「思考」させ、「できた
」という思いを持たせれば成功である。

3 日常の会話ができる段階の子

 ことばの数が増え、日常の会話ができるようになってきた段階の子ども達は、「太
田ステージ」でいえば、ⅢからⅣの段階である。発達年齢的には3歳以上である。こ
の段階になると、物と物との関係性がつかめてきて、状況設定をある程度理解できる
ようになっている。発達障がいがある場合やはり視覚的な支援は外せない。この段階
を越えれば複雑な見せ方や、ことばの問いかけが可能である。クイズの形式ややり方
はかなり幅広く使えるようになる。

次にあげるようなクイズが有効となってくる。 

4 様々な授業開きクイズ

(1) 部分を見せて動物クイズ

①動物の絵、または教科書の絵とB5程度の画用紙を用意する。
②絵を画用紙で描くし、「何が隠れているでしょう.分かった人は素早く答えてくださ
 い。」といって少しずつ見せる。
③絵を教師の背中や机の下に見えないように隠しておいて、さっと見せて隠し、「な
 んでしょう?」と聞く。


 ※ この見せる絵は友達や教師の写真にして当ててもおもしろい。

(2) パワーポイント映像クイズ


 動物、乗り物や食べ物など、パワーポイントで輪郭を見せ、考えるクイズも楽しく
惹きつけることができる。

「今から乗り物が出てきます。分かったら手を上げてください。」

といって次の映像を順に出す。

    

 順番にヒントが見えてくるので、子ども達はかなり惹きつけられる。最後の答えに
写真を見せるときには、大いにじらす。出てきたときには歓声が上がる。

(3) ☆本を使ったクイズ

 特別支援学校で使われる教科書に☆本という物がある。☆一つが小学部一・二年生
☆二つが三・四年生、☆三つが五・六年生でつける力の目安になっているが、実際は
様々な発達の段階に応じて扱われる。

 この☆本の中にも様々な目を引くイラスト、ストーリー性のある数枚の絵などが含
まれている。見て考えたり、パワーポイント画像に貼り付けて、大きく写してみんな
でクイズを楽しんだりすることもできる。

①こくご☆・シルエットクイズ

 特別支援が必要な子の認識は不確かなことが多い。形の特徴と実物が合っていない
ことがある。たとえば、牛のシルエットに対して、ある子は「うま」、ある子は「や
ぎ」と答えた。次のページで正しい動物が現れる。そこで特徴を確認すると、新しい
情報が正しく蓄積されることとなる。

②こくご☆☆・これなあにクイズ

 正しい答えのイラストが次ページの同じ位置にある。見比べながら、足はいくつあ
るか、羽はいくつあるかなど、生き物の特徴を学ぶことができる。誤学習しているこ
とを正しく修正できる。

③こくご☆☆☆・誰が出てきたクイズ


 「出てきた動物は?」という問いかけから、答えをイラストで確認できる。
 シンプルではっきりとしたイラストなど、視覚的手がかりがしっかりしている。そ
のことが、特別支援が必要な子ども達の知的な好奇心をかき立て、正しい知識の蓄積
につながるのである。
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グレーゾーンの子への指導技術

2018年12月28日 | 教育
学級には発達障害で苦しむ子が必ずいる

【6.5%】

 通常の学級にはこれだけ障害の疑いのある児童生徒が存在する。2012年,文部科学
省の調査(通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全
国実態調査)によるものである。

 30人のクラスに2名程度は障害の疑いのある子が存在するということになる。そ
の子をひきつける授業が教室で展開されなければならない。

【1.6%】

 この数字はある県の8市町村を対象に調査し,障害の疑いのある児童生徒が存在す
る割合である。国の調査の3分の1以下となっている。これは,地域性ということを
差し引いたとしても全国の調査と比べてあまりに少ない数値である。このことは,そ
れだけ,見落とされている子が,数多くいるという証である。

【存在を自覚する】

 学級の中には,発達障害で苦しむ子が必ずいるのである。その存在を自覚し,正面
から受け止め,巻き込んでいく授業,学級のすべての子が力をつける指導を目指さな
ければならない。

 通常の学級に存在する発達障害は,おもに,注意欠如/多動症(ADHD)
自閉症ウペクトラム症,学習障害(LD)である。
 以上の子ども達は,それぞれの障害の特質が違う。しかし,発達障害児の認知の性
質から,共通して言える性質がある。

【ワーキングメモリーが少ない】

 ワーキングメモリー。これは「作業記憶」である。これが大変少ないと言われる。
このことを理解しないと,発達障害の子は授業についていくことができない。

 たとえば次のようなことはないだろうか。算数の時間。

T「教科書の23ページを開いて,3番の問題をやりなさい。」
C「先生,どこやるんですか。」
T「何でよく聞いていないんですか!」


「先生,どこをやるんですか。」と聞いた子は本当に分からない場合がある。
先ほどの指示には,

①教科書を出しなさい。
②23ページを開きなさい。
③3番の問題を探しなさい。  
④その問題をやりなさい。


というように,ざっと4つほどの指示が入っている。発達障害のある子は,作業記憶
が一般に少ないといわれる。一度に4つの指示を出されて分かるはずがない。その場
合,指示を分けて一つ一つ出し,「隣の人と確認。」「3番の問題に指をおいてごら
んなさい。」と確認作業を入れて進めていくことが時には必要である。

 さらに,そのような子への配慮として,以下がポイントとなる。

【 一目で分かる工夫 / 言葉を削る /言い換えない】

 板書はし過ぎない,シンプルにキーワードをしっかり囲むなどぱっと見て分かる工
夫が必要である。

 説明はし過ぎない。10秒以内で重点を伝える努力をする。

 言い換えない。説明を加えようとしたため,言葉を言い変え,説明の説明になって
しまうと,分からない子はさらにわからなくなる。

【心理検査は不可欠】

 発達障害,とりわけ,学習障害(LD)の子は,やはり心理検査が必要である。た
とえば,「K-ABC心理・教育アセスメントバッテリー」では,その子の得意なこ
とは何かが分かる。また,全体を見せて学習を進めたほうがいいか(同時処理型),
スモールステップで教えるほうが理解が早いか(継次処理型)が分かる。「WISC
-Ⅳ」では,その子の課題が見え,次につなぐ学習のヒントが分かる。
 気を付けてほしいことは,検査をして検査の解説になってはいけないことである。
どの学習が次に必要であるか。そのことを見つけ,伝えなければ意味はない。

 まずは,学級に存在することを自覚する。そして,作業記憶に乏しいといった基本
的な理解をする。さらに,心理検査でその子の得意と弱点を把握し,指導に当たる。

 学級に存在する発達障害の子ができるようになることは,教師の力を伸ばし,教育
力を高めることにつながる。おのずとよい学級が作られていくのである。
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クリスマス連休の研修会

2018年12月25日 | 教育
12月22日 
・教育研修会で公認心理師の問題から,教員に必須な物について,解説を行った。
・特に,いじめ,虐待の対応,特別支援教育のシステムなど身近な問題である。

12月23日 
・教育サークルで改めて公認心理師の事例問題解説。 

12月24日 
・WISCの研修会,事例検討会。WISCの話は何度聞いても深い。
・事例検討会では意見のぶつかりがあったが,それも学びとして受け止めたい。
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修行の時

2018年12月22日 | 励み言葉/癒し言葉
自分に訪れた苦しみは,
自分の身の丈に合った
成長のための修行。
順調順調。感謝。
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授業:ボールゲーム

2018年12月20日 | 教育
ハンデがゲームを盛り上げる

 低学年の子ども達や知的障害のある子ども達が集団でボールゲームを行う場合、力
の差に関係なくどの子も楽しめるゲームにしたい。そのときのポイントは次の2点で
ある。

①自分の力に合ったコースを選べること
②ハンデをつけること

 低学年の子ども達や知的障害のある子ども達は,まだ運動経験が少ない。経験して
きた中で、その子によって可能な動きと、難しい動きがある。しかもかなりの差であ
る。一つ一つの技術を身につけさせていく場合にはグループに分け、さらに個別的な
指導が必要となってくる。

 集団でゲームを行う場合、同じ種目で行うと差がつき過ぎてゲームにならないとき
がある。

 そこで、違った種類のコースを作り選択することで、どの子も楽しめるゲームにす
るのである。

1 授業ポイント


(1) 多様なコースを作る

①サッカードリブルコース
②バスケットドリブルコース
③小玉転がしコース
④大玉ころがしコース


 多様な4つのコースを作った。運動能力の高い子も低い子も満足させたい。①サッ
カードリブルコースと②バスケットドリブルコースはある程度能力の高い子ども達が
満足できる。③小玉転がしコースと④大玉ころがしコースはドリブルなどが難しく、
力の調整力の弱い子でも取り組めるものである。



(2) 距離のハンデをつける

 1回戦は同じ距離で競う。そして2回戦目は、その順位と差に応じて、それぞれ距
離にハンデをつける。1位は長く、4位は短い距離にする。差が縮まり、僅差の競い
合いが生まれることでゲームが一気に盛り上がる。


(3) 音楽をかける

 音楽をかけることで、動きが変わってくる。知的障害のある子ども達も音楽によっ
て動きが変わり楽しさが増す。※ただし、自閉的な子は苦手とする音楽、大きな音に
抵抗がある場合があるので配慮しなければならない。

2 授業の実際

 一つ一つの種目について、ある程度練習をして自分の力、自分の得意な種目を考え
る時間を取る。最初は練習として一種類の種目で競争してもよい。そして選択する。

「今日は好きなコースを選んでゲームをします。コースの後ろに一列で並びなさい」

 並ぶとそれぞれのコースに人数の差が出る。その際の調整は次の通りである。

・多いところの人数に合わせてレースの回数を決める。
 (少ないところは2回行う人が出る。)

・多すぎる場合は、そのコースを2コースに増やす。

①音楽をかけボールリレーゲームをする。

「バスケチーム、ややリードしています!」
という具合にゲームを盛り上げるよう実況も入れたい。

②順位を発表する。

 順位の発表は、少しじらしながら、4位から発表する。
「ただいまの4位は最後まで大健闘、小玉チーム!」とチームの様子を少し入れて大
きな声で発表すれば必ず拍手が起こる。

③2回戦を行う

「2回戦を行います。今度は順位に合わせてハンデをつけます」

 順位に応じて距離のハンデをつける。距離で差がつけられないときには、途中にコ
ーンを置いて回るなど、障害物を置くという方法もある。

④いろいろな工夫で行う

 何度かリレーを行ったら、今度は選ぶのではなく、くじを引くような楽しみで行っ
てもよい。スタートにあるカラーコーンの下に種目を書いた紙を隠しておく。

「今度はどのコースになるかは分かりません。好きな色のコーンの所に並びなさい」

 並び終えたところでコーンを一斉に開け、種目の発表を行う。難しいコースになっ
てしまった子には、友達が協力してもよいことにする。※もしくは教師が支援する。

 好きな種目を選べるようにし、ハンデをつけることでまずゲームを楽しむ。慣れて
きたところでいろいろな種目にも挑戦させる。楽しくゲームが続いていくのである。

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