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思う・学ぶ・発達支援 心のケア サイト

特別支援教育の実践情報など。また,日々の喜びを見つけ、よくする手立てはないか考える、成長・教育のサイトです。

漢字は知的障害を持つ児童へも 瞬く間に入り込む

2018年12月19日 | 教育
平仮名と漢字ではどちらが覚えやすいか。

 言葉を学ぶ時、まず「ひらがな」次に「漢字」を学習する。この流れは知的障害児
教育にあっても同様である。これまでごく自然に行われてきたことだが、果たして正
しいことか。「漢字」は「ひらがな」よりも容易に学ぶことができるのではないか。
このことを検証するため、九月より漢字の学習を行った。

1 漢字学習の実際

 朝の会と帰りの会の前に行った。時間は五分以内とし、石井勲氏の指導を参考に行
うものとした。
 ※ クラス6名(小学部3年生)はこれまで教えられた経験が無いため漢字を読ん
  だ事実は無い。

(1) 朝の会で「曜日」と「一日の予定」を学習


①「月・火・水・木・金・土」の漢字を教える。
 →「げつ」「か」「すい」「もく」「きん」「ど」と教師が言いながら黒板に曜日
の漢字を一枚ずつ貼る。「もう一度言ってみます。」と言って曜日の漢字を指差しな
がら「げつ」「か」・・と繰り返す。(6名中2名は2日以内に覚えた。)

②一日の予定を漢字で教える。
 →一日の予定を話す時、漢字カード「朝の会」「図工」「遊び」「給食」「掃除」
「遊び」「着替え」「帰りの会」を並べて貼る。(6名中2名は2日以内に覚えた。
自閉的傾向の児童は、「ひらがなカード」よりも「漢字カード」の方がすぐにマッチ
ングできた。)

 (2) 帰りのあいさつ前に漢字学習

①公文式の漢字カード(くもん出版)を使用する。
 →一日5~6枚、表の絵を見せてお話をし、裏
返して漢字を見せる。
(一人の児童は、一週間で8個の漢字を覚えた。)

②一日一つ、漢字の成り立ちを教える。
 →川・雨・月・火・水・木・金・土について絵から漢字に変わっていく様子を三段
階(絵→象形文字→漢字)で黒板にかいて教えた。(成り立ちの絵を描き始めると皆よ
く注目する。)

③絵本を読み、出てくる動物の漢字を見せる。
 →動物が出てくるたびにその漢字カードを、用意したパネルに貼り付けていく。

④絵描き歌の後、漢字クイズをする。
 →絵描き歌はクラス6名の児童が黒板に注目する。その後クラスで飼っている「亀」
身近な「犬」の漢字の成り立ちをクイズで教えた。
(身近な動物はすぐに覚え忘れなかった。)

⑤パネルシアターで漢字を提示する。
 →登場人物や背景を貼り付けていくパネルシアターの話は動きがありどの子も好き
である。出てくる人や物の漢字カードを見せながら行う。

⑥手遊び歌で漢字を提示する。
 →「手をたたきましょう」の歌に合わせて「手」と「足」の漢字カードを見せる。
(動きも伴うのでよく覚えることができた。)

⑦パソコンで漢字を学習する。
 →根本直樹氏、斎藤浩康氏の作られた漢字学習サイトを使用させていただいた。
(隣のクラスの児童も興味を持って毎日やってきた。)

2 漢字の学習で見えた事実

 クラス6名の児童は小学部3年生の9月まで漢字を読むという事実が無かった。そ
れはできなかったのではなく、与えられなかったからである。

 朝の会で「月・火・水・木・金・土」のカードを読んで見せ黒板に貼っただけで、
2名の児童が瞬く間に覚えてしまった。また、一日の予定(「朝の会」「図工」「遊
び」「給食」「掃除」「遊び」「着替え」「帰りの会」など6~7項目)も同様に覚
えていった。どちらも1回3分程度、たった2日以内での出来事である。

 会話がある程度できる児童はとにかく驚くほど短時間で「漢字」の読みを覚える事
が分かった。

 隣のクラスに会話は少しできるが、「ひらがな」がなかなか理解できない児童がい
た。入学してから2年以上「ひらがな」をよく理解できずにいた児童である。その児
童も漢字なら覚えることができた。

 ある日、小プレールームという部屋に来ていたその児童に声をかけた。山の絵を描
き、「この絵はなんだか分かる?」と聞くと、すぐに「山。」と返事が返ってきた。
「そう、よく分かったね。すごい。」と誉めてから、「この絵からこんな漢字ができ
たよ。」と絵→象形文字→漢字と、絵からの成り立ちを教えた。続いて「川」について
も同様に教えた。

 その後、漢字を指差してもう一度聞くと、「山。」「川。」と大きな声で答えた。
一瞬にして覚えてしまったのである。

 言葉の見られない児童、自閉的な傾向を持つ児童も黒板に成り立ちの絵を描くと注
目し、マッチングは「漢字」の方がやり易い事がうかがえた。

 知的障害を持つ子ども達が言葉の意味を学ぶ時、「ひらがな」での理解は難しいが
写真カードや絵カードなら比較的理解が進む。絵から形作られている漢字を覚え易い
のはごく自然なことである。

 「漢字」は「ひらがな」よりも容易に覚えることができる。認識の力をまずつけて広げ
ていく場合、写真や絵の次に「漢字」を手立てにすべきである。その後「ひらがな」に
つなげる指導が有効であると実践を通して強く感じた。

3 漢字指導の微細技術


 身近なものほど覚え、記憶に留める。覚えて2週間後、毎日扱う一日の予定の漢字
はほとんど忘れなかったが、あまり身近に目にしない動物の漢字は半分以上忘れてし
まった。生活に身近な漢字から教えていくことが有効である。

 「田んぼの田だよ。」という指導は注意しなければならない。児童は「田」を「たん
ぼ」と覚えてしまった。「田」は「た」なのである。

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「準備」と「連携」が大きく仕事を動かす

2018年12月18日 | 教育
私の仕事術「校務分掌編」 

 以前,校務分掌で,生徒指導部長を行った。
 当時,特別支援学校の生徒指導部の仕事は大きく分けて2つであった。

 1つは小学部,中学部,高等部の幅広い年齢層にわたる児童生徒の生徒指導,もう
1つは,学校や家庭からいなくなってしまう児童生徒の捜索にかかわる活動である。

 仕事をスムーズに動かしていくためには,「準備」と「連携」が欠かせない。

1 捜索写真・写真一覧表作成

 4月,まず児童生徒捜索用写真及び一覧表の作成にかかった。新年度は授業参観が
終わると,すぐに遠足が実施される。そのときに携帯用の写真が必要となる。集団行
動に対する意識の弱い本校の子ども達は,遠足先でいなくなってしまう可能性がある
のだ。

 しかし,わずか2週間ばかりの間に270人すべての写真を撮り終え,捜索用写真
アルバム3冊と,一覧表4枚を作成するのは至難の業である。

 ここで「準備」と「連携」が力を発揮する。

①各学部の捜索写真責任者を決める。
②各学部でできるだけ短時間で撮影できる日と時間を探る。日時決定。
③できた写真の裏に児童生徒の特徴を書き貼り付け,職員室のアルバムへ各学年で入
 れる手順をガイドチラシと朝の呼びかけで徹底する。
④一覧表作成は作業分担を確実にしておき,生徒指導部全員でかかる。


 完成期日を決め短期間で一気に集中して仕上げ,思った以上に早く完了した。

2 生徒指導は連携と感謝

 子ども達の指導である。多くの活動があるが,やはり生徒指導部みんなでやってい
こう,という意識が必要だ。核になる部員が連携し,動くことで,全職員にも影響が
波及していく。

 そのためには役割分担をし,部員をどんどん責任者にしていく。大変な部分は自分
が進んで行う。そして,動いてくれることに深く感謝することだ。

 かかわる人々にとって動きやすい準備,環境作りをし,部員には責任を与え,感謝
する。それがいざというときの大きな力となる。

※ 当時の生徒指導部は4つの係からなり,部員23名。全職員約150名。
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ドリブルシュートを達成するためのステップ指導法

2018年12月17日 | 教育
 発達障害のある子ども達は,一つ一つの動作は見本を見せ,具体的に行う中で理解
できるが,それらを連動させて,「実際の一連の動きにつなげる」ことが難しい。そ
れは,いくつもの動作を同時にこなす協応動作が難しいためである。

 バスケットボールのドリブルシュートを行う際,「2歩でステップする・ゴールの
枠を狙う・ボールをゴールにむけて投げる」という動きを瞬時に行う必要がある。一
つ一つの動きも難しい。それぞれ分けて分解し,指導を行うことで達成につなげた。

1 対象・教科等  特別支援学校/高等部/体育/バスケットボール

2 指導の実際

①リズム太鼓

 ・リズムに合わせて体を動かす。
 ・体を動かずタイミングの取り方をつかむ。

②ケンケン相撲

 ・左足でけってジャンプする力をつける。

③基礎となるステップ練習

「1・2・3でジャンプ」
 ・右足→左足→そのまま左足で高くジャンプを繰り返す。
 ※ジャンプの後,右手を伸ばす。
 ※ジャンプの後右足を引き上げる。

④□枠を狙ってシュート練習

 ・黒い□枠を狙ってゴールしたからのシュートを練習する。
 ※ドリブルシュートでは,ここにボールを当ててゴールできるようになることが必要
  である。

⑤1・2・ドーンのシュート練習

 ・ゴール下から斜めの角度で2m下がる。そこから大また2歩でシュートを決める。
 ※三沢氏が,以前,提案されたドリブルシュートの練習である。
 ※「1・2・ドーン」が分かりづらい子には,「右・左・ドーン」でもよい。

⑥ドリブルをつけて1・2・ドーンのシュート練習

 ・さらに4mほど下がり,ドリブルをつけて一連の流れでのドリブルシュートを練習
  する。

 少しずつ,連続して行う協応動作のリズムがつかめてきた。

・どうしても「ドーン」で上ではなく前に跳んでしまう子
・「ドーン」でジャンプができない子
・ボールを上に上げられない子

など,練習の中で難しい部分が 見えてきた。

 練習の最後には,「5回連続でドリブルシュートが入ったら練習終了」としたが,そ
れほど時間をかけず全員が達成できた。

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どの子も味のある素敵な作品ができる

2018年12月15日 | 教育
仕上がりの高さにこだわる作品作り・墨絵

 特別支援学校高等部。持っている力にかなり開きが出てきてしまっている。しかし
美術で,どの子にもすばらしい,できばえの良い作品を作らせたい。どの子もできば
えのよい作品,「これは誰か上手な大人が描いたの?」と言われるような作品を作ら
せたいと思った。当然どの子も分かりやすいスモールステップでなければならない。

高等部美術 特別支援学校(知的)「墨で描こう」
   

 

      できた作品の一部

 墨は楽な力で線が描ける。そしてどの作品も個性的に仕上がる。能力差のある子ど
も達のどの子にもよい作品を作らせたい。1回目は「秋を描こう」という題材で季節
の果物を中心に(柿・りんご・みかん・落ち葉)を描いた。実際にさわり,よく見る
ことで柿を四角に描くなど独特の形を描いたり,枝の特徴をうまく捉えたりすること
ができた。2回目は「秋」等に限定せず,自由に好きなものを描かせた。やり方が分
かったところで自由な発想を大切にしたいと思った。


本時の目標


○筆を使って線をしっかりと描く。
○手順を踏んで丁寧に色付けまで行い作品を作る。
○墨や絵の具を使った作品作りを楽しむ。
 
準備物 

・描く対象の実物(多数)・小筆・絵の具筆・練墨・うちわ・水入れ・絵の具・パレ
 ット・色紙・烙印(濃淡が出るので練墨がよい。)



【手順1】自分の描きたいものを選びなさい。
【手順2】選んだものをよく見たり,触ったりしながら描きます。
【手順3】うちわで扇いで乾かしなさい。
【手順4】筆で水をつけます。全体にまんべんなく塗りなさい。
【手順5】色水で塗ります。絵の具はほんの少しパレットにのせ水をたっぷりです。
【手順6】烙印を押して完成です。

製作秘話

 私の美術の師は元中学美術教師の先輩である。この時も電話で内容やポイントを聞
き,自分なりにスモールステップで流れを組み立てた。酒井式を意識して,「実物を
よく見る,触る,ゆっくり」を心がける。その先輩は以前,絵を描くとき,秋刀魚を
持ってきた。1回では授業が終わらず,その次のときもまた秋刀魚を持ってきた。
「子ども達に本物を描かせたい」という熱意は只者ではない。当然,美術のセンスも
光っている。尊敬し,身近に学べる先輩がいることは幸せである。また,流れに困れ
ば,一工夫ほしくなれば,すぐに電話相談である。

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全国セミナーの授業

2018年12月14日 | 教育
体育実践の足跡

2007年8月。体育全国セミナーで模擬授業を行った。タイトルは,「車椅子の子
も一緒に楽しめる長縄遊びと自閉症の子もリラックスするヨガストレッチ」である。
特別支援教育の提案授業である。年度当初からずっと頭の中に起き,考え続けた。構
想ができてからは,様々な本を読み,そして模擬授業をしながら思考した。

(1) 授業の意図

「車椅子の生徒も一緒に楽しめる体育の授業をしたい」。そこから始めた縄跳び遊び
である。国の進めるインクルージョンにより,特別支援学校には知的障害の校種を問
わず肢体不自由の子も入学してくる。4月から学校教育法も一部改正され,小・中学
校にも肢体不自由の子,また,発達障害のある子が入学する傾向はますます加速して
いる。通常学級に車椅子の子や知的障害の子がいた場合,分かりやすい流れと配慮が
必要となる。そのひとつの提案である。

(2) 授業の解説

見本を見せます。

長縄の前に並んだら,まずこの一声である。本来であれば,

・縄でいろいろな動きをさせます。
・その縄を跳んだりくぐったりします。
・跳んだらコーンの外側を回ってもとの位置に戻ります。
・車椅子の子も参加するのでぶつからないように気をつけてください。
・車椅子の子はコーンの内側を通ってください。

といったことを説明したくなる。しかし,多くを説明すると子ども達は分からなくな
るのは必然である。

 発達障害の子がいる場合,まず,見本を見せることで大部分を伝える。そして,必
要なことは,一時一事で伝えればよいのである。

スモールステップで進める

 縄の動きを少しずつ変えていく。

① 止めた縄をゆっくり歩いて越える。
② 縄を少し上に上げて止める。
 (跳び越える)
③ 腰の高さに縄を上げる。
 (くぐり抜ける)
④ 床にこすらせ小さく横に揺らす。
 (小さなへびの動き:跳び越える)
⑤ 大きく横に揺らす。
 (大きなへびの動き:跳び越える)
⑥ 小さく縦に揺らす。
 (小さなへびの動き:跳び越える)
⑦ 大きく縦に揺らす。
 (大きなへびの動き:跳び越える)
⑧ 小さい波を作る。(跳び越える)
⑨ 大きい波を作る。(跳び越える)

易から難へ(スリルのあるものへ)

少しここで難易度を上げ,「縄抜け」を行う。長縄を大きくぐるぐる回して跳び越え
るのではなく,くぐって進むだけである。特別支援学校の場合,回す縄を跳んで抜け
ることができるのは,クラスの3分の1程度である。ましてや車椅子の子はできない。
しかし,縄抜けなら全員ができる。そしてやってみるとかなりスリルがあり楽しい。
ただし,ここで気をつけなければならないのは,「縄を子どもの顔にぶつけない」と
いうことである。知的障害の重い子や,車椅子の子は一度いやな経験をすると,次は
なかなかやろうとしないことが起こりうる。ここは回し手の配慮が必要なところであ
る。

かかわりを作る

一人ずつくぐり抜けたあとは,二人ずつくぐり抜ける。または,手をつなぐ。これで
さらに楽しさが増す。
特別支援学校の小学3・4年の合同体育で行ったときには,「縄抜け」が始まるとみ
な一気に動きが加速した。車椅子の子も大はしゃぎである。いろんな子と手をつない
でくぐり抜ける子も現れた。

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