毛津有人の世界

毛津有人です。日々雑感、詩、小説、絵画など始めたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

気楽にいこうよ。take it easy

2025-02-13 14:42:06 | マラッカ紀行

(この文章は2000年前後に書かれたものと思われる。PCの中のドキュメントを整理していたら見つかった。本人はまだ絵画よりも著作活動に邁進していたようだ)

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幼い頃より変に旅づき、18歳までに西日本をあらかた自転車で旅して回っていた。未知の世界をさ迷い歩くのが何よりの好物で、この性格は社会に出てからも少しも変わらない。したがって地道な生活の出来ようはずがなく、人々の望む安定した生活とは無縁に暮らして、とうとう50歳になった。

この間、人さまが聞いたら眉をしかめるような人生行路を歩んできたのだが、本人は少しも反省の色がない。好きなことを好きなだけやってきたのだから、これはこれで立派な人生ではないか、とひどく割りきりがいい。こんな風だから、今になっても普通人の生活にはトンと溶け込めない。しないですむなら普通の世界には近づきたくもないが、食べるためには時として妥協を強いられる。そんな時には、余計な摩擦を避けるため、借りてきた猫の従順を装うことにしている。無論そんな無理は一年と続かない。周囲の人もこちらの異質を敏感に嗅ぎ取って、多くは敬遠して近づいてこない。ために実の親とも袂を分かって久しく、妹弟とも丸っきり音沙汰のない生活をしている。親しい友も今では日本国内には全くいなくなった。

それではいくらなんでも淋しかろうと思うだろうが、本人はいたって呑気。どうしようもない孤立感とは幼いころからの長い付き合いなので、いまさらそのことで煩悶することもない。心を開いて語れる友は、むしろ書物の中にしかいないと早くに思い定め、本さえ読めれば、さし当たっての苦しみは無い。最近では良寛さんをこよなく愛し、

生涯身を立つるに懶く
騰々天真に任す
喪中三升の米
炉辺一束の薪
誰か問わむ迷悟の跡
何ぞ知らむ名利の塵
夜雨草庵の裏
双脚等閑に伸ぶ

といった境地を真似ている。出来ることなら、和尚のようにお布施に頼って生きたいが、世知辛い今の世ではそれも叶わない。だからこの8年間はタクシーの運転を身過ぎ世過ぎとしている。思い立ったとき即座に退職でき、金に詰まれば翌日から再就職可能な職業は、日本ではタクシー運転手以外にあるまいと悟ったからである。そのタクシー稼業も、この春先から急速に悪化、今では高校生のアルバイト代くらいにしかならない。町には失業者が溢れ、公園や道路端を無数のホームレスが占拠する暗い時世であれば、それもせん無いことと諦め、さっさと旅支度、今回8回目の日本脱出とあいなった。


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