長すぎる「ひとこと感想」19。(結末に多少触れます。)
最近、こういう映画を観ると「何も言えない」(というか「考えようがない」?)と思ってしまう。この映画で描かれているようなことが現実にどの程度あり得ることなのかも、私などには判らない。(「 間違いだらけの戦争描写 」「アカデミー賞に輝いた『ハート・ロッカー』は米軍への敬意に欠ける」 などという声もあったらしい。)タイトルの「ハート・ロッカー」というのは「アメリカ軍の隠語で"苦痛の極限地帯""棺桶"を意味する」とのこと。
舞台は2004年のイラク、登場するのはアメリカ軍の危険物処理班。要するに、「イラクで時限爆弾・爆発物などの処理を業務としている」アメリカ軍兵士たちの「日常」を描いた映画。活動場所がいかにも戦場という場所ではなく、街中の一見何事も起きていないかのような風景の中だったりするので、余計に「日常」を感じさせる。
兵士であることが何かエンジニアや職人ででもあるかのように、次の瞬間に命を奪われるかもしれない爆弾処理が、職業上の「通常業務」ででもあるかのように、淡々とこなす主人公の姿を、私などはどう受け取ったらいいのかワカラナイ。ただ、「アメリカはほとんどいつも、世界のどこかで戦争をしているようなものだから、ここまで適応?してしまうような人も現れたりするのかな・・・」などとぼんやり思ったりするだけだ。
そんな主人公が、知り合ったイラク人少年を見間違えるエピソードが私には痛々しかった。いくらもありそうなことではあるけれど、一米軍兵士であるということは(イラクやイラク人のことを解っていないという意味では)そういうことなのだ・・・と言われている気がした。
或いは、何も知らずに携帯電話を使おうとしている(それをすると、爆弾が爆発を起こして辺り一帯を巻き込んでしまう)市民を止めるには「銃で撃つ」しかないといった場面。一観客の私でさえ、「撃つしかない」と思ってしまう・・・などなど、現代の「戦争」というものを目の前に見せられて、自分がそれをどう受け取ったらいいのか途方に暮れる感じが、この映画にはつきまとっているように私は感じた。
そんな中で私にとって強く印象に残ったのは、映画の終盤スーパーのシリアル棚を主人公が見つめるシーンだった。何十種類?もある商品の中から妻に頼まれているものを選ぼうとした時、主人公を襲ったものがなんであるのかは、やはり私には判らないのだろう。けれど、なぜかその時、私はワカル気がしてしまった。
命がけの戦争業務も、山のようにある(それほどまでして売り込みを図るビジネスとしての)商品も、彼にとって同じ「日常」なのだとしたら、この人の場合はシリアルよりも爆弾を選ぶだろうと私も思ったのだ。
その方がこの人の場合は「理屈に合ってる」気がしてしまった自分は、もしかしたら彼と同じく「過剰に適応」しかねない人間なのかもしれない。これは「戦争」と直接関係があるのか無いのか、それさえ私にはよくわからないのだけれど。
現実とどれくらい近いものなのかは別にして、物語としては良くできているのだと思う。観た後、随分いろんなことを考えた。でも、やっぱり「ワカラナイものはワカラナイ」。作り手は、この映画で一体何を表現したかったのだろう。(支離滅裂の感想だけれど、主人公を演じたジェレミー・レナーという俳優さんにキラキラしたものを感じたので、一応覚え書きのつもりで残すことにした。)
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