眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

別れの重さ ・・・・・ 『トイ・ストーリー3』他

2011-04-02 16:07:15 | 映画・本

長すぎる「ひとこと感想」その22。(結末に多少触れています。)

メモには、「オモチャたちがメインキャラだけれど、人形劇やアニメーションを観ているというよりは、誰かに"物語"を語ってもらった気がした。」とある。たまたま時間が合って通常版(2D)で観たことが、幸いしたのかもしれない。私はただ気持ち良く、アンディのオモチャたちと一緒に旅をしたような気分を味わったのだと思う。

最近アニメーションを観ると、「別れ」の重さをしみじみ感じさせられることが多い。『カールじいさんの空飛ぶ家』『借りぐらしのアリエッティ』『マイマイ新子と千年の魔法』そして今回の『トイ・ストーリー3』・・・どれも大事な家族、大切な人、或いはその人たちと過ごした「幸せな過去」との別れを描いて、深く訴えてくるところがある作品だと思う。

アニメーションは「子ども」を主な観客として想定しているからだろうか、「別れ」は「新しい旅立ち」と対になって描かれることが多いような気がする。(当たり前といえば当たり前のこと。別れと旅立ちはニワトリとタマゴに聞こえるかもしれない。)それをじっと観ていると、「旅立ち」にどのくらい重きを置いているかは作品によって異なるけれど、「旅立つ」決意をすることが人に「別れ」の決心もさせる・・・という風に思えてくる。「新しい世界に出て行く」ということが、それまでの「過去」の持つ本当の意味を教えてくれる。「別れ」は大事な人の記憶を、これまで以上に身近でしかも貴重な「何か」に変えるチャンスでもあるのだ・・・とでもいうように。

それは78歳のおじいさんでも、14歳の小さな人でも、作られてから10年もたったオモチャたちでも変わらない。別れていくことになっても、その人との絆は消えない。その人と過ごした日々が無かったことには決してならないのだ。

『トイ・ストーリー3』の場合、オモチャたちは、17歳になって遠くの大学に行くために家を離れるアンディとの別れを迫られる。彼らにとっては、存在価値・生き甲斐という意味も含めた文字通りの死活問題でもある。

ゴミと間違えられて捨てられたところから始まって、恐るべき託児所サニーサイドを経て、もう一度アンディの家の物置に戻るか新しく4歳のボニーの家に「現役」として貰われていくか・・・。彼らの迷いと決断は、職を失った(或いは定年を迎えた?)人間の迫られるものとも共通していて、「新しい世界」を探すこと、そしてそこに向けて一歩踏み出すことがいかにムズカシイか・・・「アニメーションだからこそ出来る」大胆さと温かさで描かれたスクリーンを観ながら、私は考えさせられるものが多かった。同じシリーズの1・2と比べて「人間」を好意的に描こうとしているのも、作り手側の重ねた歳月が感じられて、私には感慨があったのだと思う。

それにしても、ピクサーもすごいなあ。ここまでオトナをシミジミさせて、尚かつ(現役の)子どもたちもオトナに残るコドモ心も、ちゃんと満足させる作品に仕上げられるんだから。さまざまな事情を抱えたオモチャたちにも、最後に走り回るアンディにも、スタッフの人たちにも拍手~(どうもありがとう!)。

 

 

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2 コメント

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焼却炉は夢に見そうでした。 (お茶屋)
2011-04-03 16:54:31
>1・2と比べて「人間」を好意的に描こうとしているのも、作り手側の重ねた歳月が感じられて、私には感慨があったのだと思う。

なるほどぉ!私は1、2をあまり覚えてないのですが、シリーズものは、そういう感動もあるのですね。
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ホント、もうダメかと~~ (ムーマ)
2011-04-03 18:54:47
>お茶屋さ~ん

>1・2と比べて「人間」を好意的に描こうとしているのも、作り手側の重ねた歳月・・・

私は3が公開される前に、1・2ひと括りで上映されたのを観たばかりだったので
余計にそう感じたんだと思います。

若い友人に言わせると
「オタクは人間よりそれ以外の方が好きなんだよ、やっぱり(笑)。
でも、こういうシリーズはより一般向け(毒のない方向)に向かうしかないからな・・・」
なんだそーな。

3は1、2とは違う人が脚本書いてる?らしいので
ソモソモ私(や友人)の妄想が入ってるのかもしれませんが
ソンナコトをあれこれ考えたり(勝手に)感慨に浸ったりする楽しみが
シリーズものには確かにありますね。(なんだかちょっと大河ドラマ風~(笑))
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