(まとまったことが書けそうもないので、アタマにある漠然としたモノをそのままに。)
この映画を観た後、一番強く思ったのは、「これは原作のマンガとは、全く別の作品なんだな・・・」という、ごく当たり前のコトだった。
私は吉田秋生(原作者)のマンガが好きで、この「海街diary」も、映画より先に読んでいた。私がこれまで読んできた「アキミさん」とは、ちょっと違った雰囲気だな・・・とは思ったけれど。
「家族」をシミジミと描いていて、さまざまな年齢の女性・男性たちが、それぞれの抱えている事情(それは現実であったり過去であったり)で互いに交錯しながら、小さな日常のエピソードが積み重なって、物語は進んでいく。
「これまでとちょっと違う」というのは、アキミさんからいつも感じていた「ケレン味」?のようなモノが、極力抑えられているような印象を、私が受けたこと。
「アキミさん」は、(私の目には)「フィクションを描くからには、フィクションでしかできないような『ドラマチック』な設定・展開で、読む人に楽しんでもらいたい」と思っているかのような作品を、これまで多く描いてきたように見える。
それが今回の「海街diary」では、もうちょっと「ドラマチックじゃない」語り方をしたい・・・と思うようになった?かのように、私には見えたのだ。
鎌倉・・・という言葉から受けるイメージも、落ち着いた淡彩風に感じられる。(強烈な白と黒のコントラストを感じさせる『ラヴァーズ・キス』と、同じ場所とは思えないくらい)
・・・と、ここまでは原作マンガの話。
是枝監督が創り出した『海街diary』は・・・というと、原作からさらに「ドラマチック」を排除?して、ほとんど小津安二郎の世界??を、柔らかな光の美しいカラー映像で観ている・・・そんな気分にさせる映画だった。
小さなエピソード。細かい日常のモロモロの事柄。たとえば縁側から見える庭、ゆでたての蕎麦を盛ったザル、祖母の残した梅酒に浮かぶ梅の実、或いは満開の桜のアーチ・・・
そういったものは、ほとんど「映像」の独壇場なのかもしれないな・・・などとも思った。
アキミさんの作品は、風や空気、海や空といった広く漠然としたもの、或いは夜の海に浮かぶ月のような抽象性を帯びたものを描くとき、私の記憶に強く残る。でも、こういう細やかさ、柔らかさ・・・は、映画の作り手が新たに創作したもの・・・という風に、私には見えたのだと思う。
映画では、ストーリーも「家族」の「女性」中心(食堂の女主人は別として)に整えられていて、なんだか「細雪」をのんびり読んでいるような、いつまでもこのまま読んでいたい、ずっとこの風景を見ていたい、終わらなくても全然構わない・・・とでもいうような気分が、映画を観ている間続いた。
物語それ自体は、結構苦味もあって、見ていて切なくなるシーンも多かったのに。
あとは・・・キャストの良さもあって、女性たちがそれぞれ魅力的で、しかも「とても公平・平等」に扱われている気がした。
一番「何事もないかのように育った」ように見えた三女(夏帆)が一番「おとうさんの記憶が少ない」と、異母妹である四女(広瀬すず)に語る場面。
「女子寮の一番下っ端」という四女が声を上げて、「今みんなで話をしないといけないと思うんです」と、二女(長澤まさみ)を玄関先で引き止める場面。
一番「真面目できちんとしている」長女(綾瀬はるか)は、家庭のある男性とつき合い、最後は自分で決着をつける。家を出て行った実母(大竹しのぶ・物凄く上手い!)とのこじれた関係も、彼女なりに立て直そうとする・・・。
たぶん、こういう公平さ、日常というのは、家族というのは、こういう風に納まるべきところに納まって(壊れてしまったと思っていたものも、それなりの形で修復されて)、その先へと続いていくものなのだ・・・というのが、この監督さんの基本的なスタンスなのだろう。(以前、『歩いても歩いても』を観たときにも、同じようなものを感じた記憶がある)
そして、それはアキミさんの原作にある何かとは、一見似て見えるのに全く異質のもののような気が、多分私はするのだろう。
この映画を、多分私はキライではないと思う。けれど・・・
「アキミさん」的なモノを極力排した上に、美しい別の世界を創り上げたように見えるこの作品は、「なんだか妙に・・・クヤシイ(^^;」というのが、原作者の一ファンの正直な感想・・・なのかも。でも、ソンナモノとは無関係に、この映画は複雑な事情を抱えた人々の心情を、きめこまやかに描いた、しかも上質のエンタテイメント作品だとも思うので、なんとなく私は落ち着かない・・・のかもしれない。
先月末の拙サイトの更新で、こちらの頁をいつもの直リンクに拝借したまま、報告とお礼に参上するのがすっかり遅れてしまっておりました。
原作漫画未読の僕としては、いずれ読もうと決めている原作漫画がますます楽しみになってきました。別物とは承知のうえで、「なんだか妙に・・・クヤシイ(^^;」とお感じになった部分を僕がキャッチできるかどうか、実に楽しみです。
どうもありがとうございました。
いつも本当にありがとうございます。
心に残る、美しい映像・映画でしたね~。
ヤマさんの映画日誌で「“綺麗なものを綺麗だと感じることのできる喜び”を与えてくれる」という言葉を思い出すことができて
ああ、本当にそういう映画だったな~と思ったのを今も覚えています。
長女役の綾瀬はるかも、確かに「平成の原節子」だな~って。
原作はもっとザックリした感じ(上手く説明できない(^^;)かもしれませんが
いつかどうぞ読んでみて下さい。
ヤマさんはきっと私の「クヤシイ」がお分かりになって
「ニンマ~」か「あはは」か、なさるような気がします(勝手な想像)(^^)。