2018.7.3 リンク切れを修正しました。
「差し色」を大辞林で調べると、「単一の淡い地色に,濃い色を柄のように小さく配すること。」とあります。
淡色地色に濃色を差すことはできますが、濃色地色に淡色を差すには防染・抜染の技法が必要です。
防染と抜染の違いは、差し色を捺染した時点で地色が繊維に染着しているかどうがです。防染は差し色が捺染された時点では地色は染着していません。一方、抜染は地色染料が染着した生地に差し色を捺染します。
防染は差し色とともに捺染された防染剤が、地色染料の染着を阻止します。抜染は染着した地色染料を無色にする抜染剤を差し色染料とともに捺染します。
綿、レーヨン等のセルロース繊維の反応染料地染めの防染について簡単に述べます。染液を、引き染め、筆描き、捺染等することをここでは付与とします。地色と差し色の付与方法の組み合わせは幾つか考えられます。
1.酸防染
反応染料が固着するには、アルカリが必要です。アルカリを中和してやると反応染料は固着できません。
差し色は、耐酸性の顔料とバインダーに不揮発性有機酸(クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等)です。
地色の反応染料を1相法で固着する場合は、先に酸の差し色を付与します。2相法の場合は、差し色の前でも後でもよいです。
工程例
差し色筆描き → 乾燥 → 地色1相法引き染め → 乾燥 → 蒸し → ソーピング → 乾燥
差し色レシピ例
顔料
バインダー
酒石酸 3-5%
パラフィンエマルジョン 5%
増粘剤
パラフィンエマルジョンは、防染性を向上させる補助剤です。(株)リンレイの白木がこの目的に転用できます。
耐酸性の増粘剤として、メイプロガム NP を使います。
バインダーと増粘剤が調合されたインスタント糊もありますが、入手が困難になっています。
2.亜硫酸塩防染
反応染料には、VS 染料と MCT 染料の2種類あります。この反応基の違いを応用した方法です。VS 染料の反応基は、亜硫酸塩と反応しセルロースと反応できなくなります。地色にVS 染料、差し色にMCT 染料と亜硫酸塩を使えば防染できます。
無水亜硫酸ソーダが写真の現像に使われていて、ヨドバシカメラ等で購入できます。
工程例
地色2相法引き染め → 乾燥 → 差し色筆描き → 乾燥 → 蒸し → アルカリ固着剤引き染め → 60-90分放置 → ソーピング
地色を引き染めする染液はアルカリ性にならないようにします。生地や用水がアルカリサイドになっている場合、地色染料の染液に不揮発性有機酸を添加します。
蒸し中に、差し色の染料が固着すると同時に、地色染料と亜硫酸ソーダが反応します。
地色レシピ例
VS 染料
ポリミンL
不揮発性有機酸 0 - 0.2%
増粘剤
差し色レシピ例
MCT 染料
重曹
尿素
ポリミンL
無水亜硫酸ソーダ 1-5% (地色の濃度による)
増粘剤
ポリミンLと無水亜硫酸ソーダを熱水(60-70℃ぐらい)で溶かし、尿素を加えて冷却し重曹を加えます。
無水亜硫酸ソーダが入手できない場合。
酸性亜硫酸ソーダが藍熊染料(株)から入手できます。酸性亜硫酸ソータは 35% 溶液です(固体ではありません)。
酸性亜硫酸ソーダは重曹と反応すると泡が発生します。予め、酸性亜硫酸ソーダと重曹を反応させておきます。重曹は酸性亜硫酸ソーダの重量で3割です。この重曹は中和に消費されますので、反応染料の固着の重曹は別途必要です。
酸防染、亜硫酸防染とも、地色と差し色の付着量のコントロールが重要です。これは、言葉では説明できません。実際に染めて経験するしかありません。