公明党幹事長、創価学会員と「ズレ大きくなっているとは感じる」その証拠が創価学会員の良心の声が拡散されている。
創価学会の「タブー」SNSが破る?
ツイッターが公明党を揺るがす 公明党の汚い常套手段終了
春の統一地方選と夏の参院選の勝利は、公明党の最重要事項だ。選挙に向けて、どのような党運営をするのか。斉藤鉄夫幹事長に聞いた。
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──今年は「憲法改正の発議」が大きなテーマになる。憲法9条の1、2項を残し3項に自衛隊を明記するという安倍首相案への公明党のスタンスは。
どういうスタンスを取るか自体まだ決まっていない。わが党は「加憲」という立場で、2004年に憲法9条について議論をした。9条1、2項を厳然と残すことは党として譲れない。その上で自衛隊を明記する条文を加えてもいいという意見と、自衛隊はすでに国民に認知されているので必要ないという2案が出た。それは今も変わらない。ただ4年前の安保法制議論では、現憲法の枠内でできる自衛の措置の限界が明確になったので、今後は9条改正の必要がないということで支援者と納得した経緯がある。この経緯は大きい。与党、野党という枠組みを外して憲法審査会でしっかり議論を進めなければ、幅広い国民合意は得られない。
──特定秘密保護法、安保法制、「共謀罪」にも公明党は賛成した。もはや政権の「ブレーキ役」にはなっていないのでは。
各法案にもさまざまな危惧があったが、平和、人権を守るという立場を公明党が与党内で代弁することで、オール・オア・ナッシングではなく、幅広い国民合意を得られる法案にした。例えば安保法制では、フルスペックの集団的自衛権の行使という自民党案に対して、現行憲法の範囲内でごく限定された集団的自衛権しか行使できないよう歯止めをかけた。党員や支持者の方々と大変な議論をしながら、現行の憲法9条の枠内で許される自衛措置の限界はどこかを明確にした。平和主義を掲げる公明党だからこそ「ブレーキ役」を果たしてきたと自負している。
──昨年9月の沖縄県知事選をどう総括しているか。
行政手腕の高い佐喜真淳氏を推薦したことは間違っていなかった。ただ全県的な知名度がなく、それを補う戦略、運動が足りなかった。SNSなどで情報戦を駆使する「空中戦」でも相手が上手だった。
──基地移設問題で辺野古の是非を明言しなかったことが「争点隠し」と批判された。
マスコミは基地問題ばかりを争点にしたがったが、知事選で本来問われたのは沖縄県の振興であり、県民生活全体の向上をどう図るかということ。われわれはそこに選挙の争点を置いて訴えたが、及ばなかった。
──安保法制議論や沖縄県知事選では、支持母体の創価学会員が三色旗を掲げて反対の声を上げる姿もあった。
創価学会は国民の縮図であり、公明党の政策に反対意見を持つ方がいらっしゃるのも、ある意味では当然だ。創価学会員のほとんどは党員ではないので、党が意見を押し付けることはできない。ただ、何か政策課題があれば、われわれは創価学会の会合にもすぐにご説明に行き、そこで意見交換する。学会側でも頻繁に政治学習会などを開いて、積極的に理解しようとしてくれる。政治家と支持者の間で、ここまで双方向の意見交換をしている党はないのではないか。
──とはいえ、公明党を全面支援できない学会員が増えれば選挙にも影響が出る。前回の衆院選は比例得票数が節目の700万票を割る結果となった。
創価学会員に、公明党の政策に100%同意してくださいというのは現実的に難しい。価値観が多様化していくなかで、そのズレが大きくなっているとは感じている。ズレをなくすよう、一生懸命努力するしかない。
──亥年は選挙イヤー。夏には「衆参ダブル選」もささやかれるが、公明党は反対の立場だ。
衆議院と参議院は機能が違うからこそ、選挙制度も違う。その選挙を一緒にやると、二院制の意味が希薄化する。何よりも、国民が混乱する。衆参ダブル選は望ましくない。その上で、来るべき選挙に向けては「大衆と共に」という立党の原点に立ち返る。先の衆院選で敗北したのは、「公明党らしさ」を前面に出せなかったからだ。その反省に基づき、昨年は全国の公明党議員による100万人調査運動をした。子育て、介護などについて、全国3千人の議員が100万人の方々の声を聞いて回った。それを政策提言としてまとめ、選挙に生かす。それが「公明党らしさ」を取り戻すことにつながり、創価学会を含めた支持者の方々との「ズレ」を埋めることになると確信している。(構成/編集部・作田裕史)
※AERA 2019年2月4日号
今年は春の統一地方選と夏の参議院選挙が12年に1度重なる「選挙イヤー」。この重要な年に、公明党が試練を迎える。党を支援する創価学会員の団結力に危うさが見えつつあるるのだ。背景にはSNSの普及などもあるようだ。
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過去には選挙活動に邁進した現役の創価学会員の女性(50代)も、今は公明党の支援をやめた。女性は関東在住で祖父母の代から続く「3世」。絶対的平和主義の信念のもと、10代後半から集票活動を始め、300~400票を集めた時期もあったという。だが、03年に公明党がイラク戦争を支持したことに仰天し、支部の幹部、友人、身内にも「反対の声を上げるべきだ」と詰め寄ったが、反応はなかった。公明党議員からも、納得できる説明はされず、自分の信念が根底から覆された気がした。
「自分だけがおかしいのかもしれないと、少し距離を置いて公明党の活動を見ていました。でもその後、多くの国民の反対を押し切って安保法制を強行採決したのを見て、もう変わらないのだなと悲しくなりました」
沖縄県知事選でも、女性は「辺野古埋め立てに反対なので公明党推薦候補は応援できない」と地区の会合で発言した。すると、昨年10月、県や支部の幹部が女性の自宅を訪れ「なぜ会合であんなことを言うのか」などと問い詰められたという。
「公明党を応援しないことを非難されました。『あなたが完璧でないのに公明党議員が不完全だというのはおかしい』『今後も会合で発言するならその内容が正しいという証明を持ってこい』とも言われた。私は自由に発言できない組織なら離れます、と言いましたが除名にはなっていません」
女性はツイッターでも発言をしており、リベラル意識の高い人たちに拡散されている。
組織に詳しいある現役会員は、このような創価学会の「二面性」は、SNS時代では機能しづらくなっていると分析する。
つまり、この会員いわく、表向きは「公明党支援は個人の自由」と言いつつ、実態は「公明党支援と信仰活動が一体になっている」という。前者を否定すれば「政治的自由を否定する教団」とのそしりを受け、後者を否定すれば「組織運営が成り立たずに選挙戦が戦えない」というジレンマを抱えている。そこで、創価学会はある「手法」でこれを両立させていたという。
「聖教新聞などの公式メディアでは公明党支援を信仰上の言葉で意義づけないことで、『私たちは選挙活動を強制していない』としつつ、座談会などの宗教的集会では公明党の政策PRのDVDを流したりして『功徳』を語る。それにより、実質的に公明党支援以外の選択肢をタブー化する空気を作ってきた」
しかし、学会内部から、選挙運動を指示する画像などがSNSによって拡散されると、この「手法」が困難になる。ツイッターなどで「同じ会員でも賛同しない人がいること」が可視化されるようになるので、元来公明党の政策に違和感を持っていた人は同調しやすくなる。批判がタブー視されていた会員たちがSNSに触れることで、その心理的ハードルが下がる効果がみられるという。
「同じ信仰を持った学会員の言葉には教義的な意味での正しさがあり、彼らを一方的に否定することは教義上のタブー(法華誹謗)にもなり得るという心理も働きます」(現役会員)
創価学会も、今は世代交代も含めた過渡期。SNSで可視化される時代だからこそ、内部からの批判へどう応答していくかが問われている。「学会員の公明党支持は絶対なのか」「公明党への支援拒否を理由に指導や降格はあるのか」を創価学会に聞くと「そのようなことはございません」と回答した。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は言う。
「公明党幹部は『今年は選挙が全て。党を締め直していく』と断言している。春の統一地方選は勝てると踏んでおり、夏の参院選に全てをかけている。16年の参院選同様、愛知、兵庫、福岡の3選挙区に新人を擁立する方針で、そこに全総力を結集させるつもりだ。学会員が動揺しないよう、参院選前には憲法改正の発議はせず、衆参ダブル選は絶対阻止と決めている。選挙を見越して、公明党からは今まで以上に創価学会を意識した言動が増えていくだろう」
公明党の選挙への危機感は、創価学会における団結力の危うさと通底する。亥年選挙を前に、両組織とも「試練」を抱える。(編集部・作田裕史)
※AERA 2019年2月4日号より抜粋
転載元転載元: 北海道は素敵です!!