「人民よ、ジャガイモを食べよ」と云う刺激的な見出しを付けた記事が、3月4日付のニューズウィーク日本版のウエブサイトに掲載されました。この記事は、中国の農業部がジャガイモを米、小麦、トウモロコシに次いで、第4の主要作物とする計画を正式に打ち出した事を元にした記事と思われます。
2月23日付の新華網(電子版)に拠れば、中国農業部は、「ジャガイモの開発産業化を推進する指導意見」を公表したとの事です。この中で、「2020年迄に馬鈴薯の作付面積を一億ムー以上に拡大して、主食用に適した品種を30%程増やし、主食に占めるジャガイモの割合も30%迄増やす」等と云う具体的な目標を定め、方針を正式に打ち出した様です。
このニューズウィーク誌に記事を書いた人も、このニュース等をネタ元にして、この記事を書いた様ですが、この記事を書いた人が、記事の中で「つまり、一日の三食のうち、一回はジャガイモを食うべしと号令をかけたのである」としていますが、何故このような結論になるか、私には理解出来ません。この様な表現は、ある意味で大きな誤解を生む表現であると同時に、意図的に曲解したと云える様な報道であり、面白おかしく仕立てた記事の様に思われます。
ネット等にアップされた今回のジャガイモを第4の主要作物にする計画に関する記事を読むと、「マントウを作るに際し小麦粉70% じゃがいもから作った澱粉30%でマントウを作る」等して主食に占める割合を増やす事を意味するので、ニューズウィークの記事の様に、「一日の三食のうち、一回はジャガイモを食え」とは読めないハズです。
2015年6月26日河南日報(電子版)には、土豆から作った澱粉30%、小麦70%の割合で作ったマントウが、河南省で売り出された事が報じられています。また、2015年5月7月付の新華日報(電子版)でも、同じ様にジャガイモの澱粉30%、小麦粉70%で作ったマントウが北京市内約200店のスーパーで売り出された事、今後は北京以外では、天津、河北省等でも、そのマントウが売り出されるとの記事もあります。
2015年1月の中視新聞(電子版)記事にも「ジャガイモを将来主要な穀物にすると云う話があるが土豆面条(注:面条とは中国語で麺の事)とはいったいどんなものか」とある様に、別にジャガイモをそのまま食べる訳ではないのです。中国では、既に小麦粉を加工して麺にする際、ジャガイモの澱粉を入れた麺を作る試みもなされているとの事です。「舌尖上的土豆」と云うドキュメンタリー番組の中には、中国の陝西省のある地方では古くから、ジャガイモの澱粉の入った麺が食さている場面も出て来ます。
また、ニューズウィークの同じ記事の中で、2015年に「ジャガイモ入りマントウ(蒸しパン)の開発に成功した。ジャガイモ30%、小麦粉70%という配合なのだとか」と云う所もあります。この所をそのまま読むと、ジャガイモが正しく30%入ったマントウと勘違いすると思いますが、2015年に既に報じられた様に、正確に云うと「ジャガイモから作った澱粉30%、小麦粉70%の割合で作ったマントウ」と云うのが正確な云い方です。このマントウは、外見からは、普通に小麦粉100%から作ったマントウとは見分けはつかないとの事。また、触感や食べた感じでも、澱粉を入れないマントウとそれ程の違いはないとの事です。但し、私はこのジャガイモの澱粉を混ぜたマントウを食べた事がないので実際どうなのかは分かりませんが、、、、。
「ジャガイモ30%、小麦粉70%という配合」と云う表現と「ジャガイモの澱粉30%と小麦粉70%の割合でこしらえたマントウでは、かなりイメージが違うと思いますが、この記事を書いた人も、少し考えればジャガイモ30%のマントウはあり得ない様に思いますが、どんな風にイメージしたのでしょうか聞いて見たいものです。ジャガイモ入りの包子なら分かりますが、、、、、。云う間でも無い事ですが、マントウと包子とは、全く違います。
中国では、ジャガイモの澱粉と小麦粉で作った麺も開発されており、将来売り出される予定との事です。ジャガイモの澱粉と小麦粉で作った麺と思う人も居るかも知れませんか、日本でもスーパー等で売っているウドンは、かなりの割合で澱粉が入っている事は良く知られています。うどん専門等で供されるウドンにも澱粉が入って入る事は周知の事実です。また、即席麺にはジャガイモの澱粉が入っている事も良く知られている事です。
中国ウォルマート等外資系のスーパーでも「うどん麺」と称してうどんを売っているのですが、小麦粉100%で作った物はそう多くないハズです。偶々、私が日本語を教えていた中国人が今四国の大学に留学しているのですが、日本のウドンが好きになり、大理市に一時帰国した際、外資系のスーパーでウドンを買って食べた所、余りの違いに仰天したとの事ですが、言う間でも無い事ですが、四国の小麦粉100%のウドンとは違い、中国のスーパー等で売られているウドンには、澱粉が可なりの割合で入っているからなのです。
まだ、少ない様ですが澱粉の入った乾麺も、大理市や大理古城のスーパーでも売られています。中国でも、今の時点では、小麦粉100%の乾麺が圧倒的に多いのですが、極一部ですが、澱粉の入った乾麺を見かけます。私が、大理市の幾つかのスーパーで見かけた澱粉入り乾麺の澱粉は「摩芋」で作った澱粉の事。以前、このブログで何度かコンニャク(摩芋)に触れた事があるのですが、中国のネット等に摩芋麺条と云う言葉が散見されますが、これは摩芋の澱粉入りの麺と思われます。澱粉がどの程度入って入るかの表示はありませんでした。
中国には、日本と比べても乾麺の種類は実に沢山あり、ざっと見ても日本の10倍位の種類がある様に思いますが、今後はジャガイモの澱粉入りの乾麺の割合も増えるのかも知れません。
この記事を書いた人も恐らく読んだと思われる記事を注意深く読めば、ジャガイモをそのまま食すのではなく、ジャガイモを澱粉等に加工の後、小麦粉と混ぜて、マントウにする、或は麺等に加工して、食べやすい形に加工してジャガイモの消費を増やすと云う様に報じています。「つまり、一日の三食のうち、一回はジャガイモを食うべしと号令をかけたのである」とは読めないハズです。
日本では春雨と云えば、緑豆の澱粉から作った物が多い様ですが、中国ではサツマイモやジャガイモの澱粉から作った春雨(中国語では粉丝と云う)も多い様です。中国では、どう云う訳かジャガイモの澱粉で作った粉丝(春雨)はかなり高いです。この粉丝も鍋に入れる、スープ麺にして食べる、炒めて食べる等日本と比べて中国では、実に良く食べられています。貴州省に居る際には、鍋を囲む際には必ず粉丝を入れて食べていましたが、私は美味しいと思いました。また、中国のスーパーには、色々な原料で作った粉丝が実に沢山並んでいます。
尚、ジャガイモは、貴州省や雲南省等では洋芋と云う呼び方が一般的で、土豆とは呼ばない様です。