5月19日に発売された週刊誌「新世紀」と云う雑誌に「失楽園」に関して興味深い記事が掲載されています。何故「失楽園」の著者が亡くなった事が、日中関係が冷え込んでいる中で、日本より中国で大きなニュースとして中国の一部のメディアが報じたかに関して分析しているのです。
その記事(注:5月19日発売の19号)に拠れば、「失楽園」は、1998年に中国語に翻訳され中国で出版されたそうですが、その後2003年からは「新浪網」と云うネット上でも連載されたのだそうです。それでより多くの中国人の目に触れたとの事。「失楽園」がネット上で連載された後の、この作品に対する中国人読者の評価は、約61%が肯定的な評価、否定的な評価は約32%、残りは中間的な評価だったそうです。他の調査等でも肯定的な評価は60%以上に上り、否定的評価が10%、中間的な評価は30%だったとの事です。
否定的な評価の原因としては、この作品に対する生理的嫌悪感、読者が受けた教育の影響、日本そのものに対する反感等があるのではないかとも分析しています。
日本では評価が左程高くない渡辺淳一が、中国で高い評価を受けるようになったのは中国では性愛の描写を描いた作品が多くないと云う背景があるのではないかと指摘しています。「好色」で知られる日本では彼の作品の評価が必ずしも高くはなく、人間の性や性愛に付いて語られる事が少ない中国で受けたのは何故かとも書いてありますが、詰まる所彼の多くの作品は、中国人読者の「性愛文学」に対する欲求を埋めたのではないかとの興味深い分析を行っています。
また、中国では彼の作品が中国語に訳され出版されるに従い「情愛大師」としての高い評価、位置を獲得して行ったとの分析もしています。(注:大師はこの場合は大家とでも訳せばいいんでしょうか、、、)
私としては、この記事を読んで中国で何故「失楽園」の様な作品が受けたのか漸く理解出来たような気がしました。