先月昆明市にある新華書店を久しぶりに覗いたら、海外文学の一角にある日本文学のコーナーに、実に沢山の日本文学作品が並んでいるのを見て些か驚きました。村上春樹、大江健三郎、東野圭吾は無論の事ですが、川端康成作品集、夏目漱石作品集等も中国語に翻訳されて店頭に並んでいました。昆明市、大理市の別の本屋には、芥川龍之介、向田邦子、宮部みゆき、松本清張等の幾つかの作品も中国語に翻訳されて店頭に置いてあります。
源氏物語の中国語版は、なんでも70万部を超える売り上げを記録して100万部に迫る勢いとの事です。一年程前に大理市巍山県にある新知書店に源氏物語が置いてあり、その本の帯に70万部を超えるベストセラーとうたってあり吃驚した事を覚えています。上海、北京、成都、昆明市等日本人の多くが知っている中国の大都市の本屋ならいざ知らず、大理州に属する一県(注:中国では市の下に県が属する)の書店に源氏物語が置いてあり本当に吃驚したものです。因みに枕草子も翻訳されています。
大理市の新知書店には、最近太宰治の「人間失格」が平積みで置いてあり、これにも驚きました。例の「うまれて、すみません」を中国語では「生而為人 很抱歉」と云う様に訳してありましたがこれはなかなかの名訳と私は思いました。太宰治の「人間失格」は、別々の出版社から、それぞれの翻訳者に拠って二種類出されている様ですが、同じ本が二種類も翻訳されて出されているが売れるのだろうかと些か心配であります。
太宰治の「人間失格」は二種類翻訳本がある様です。
東野圭吾の幾つかの作品は100万部を超えるベストセラーとなっている様ですし、夢枕獏の作品が映画化(注:中国の題名は妖猫伝)された事もあり、原作も中国語訳され好調な売れ行きの様です。特に、大理の新知書店や大象書店には、東野圭吾の専用コーナーがあり彼の殆どの作品が揃っている様でした。私は、彼の作品は一作も読んだ事はありませんで、何故中国で彼の作品がこの様に売れるのか全く分かりません。
大理市の新知書店の一角には東野圭吾専用のコーナーがあります。これが全て彼の作品ですから人気の程が伺えます。今一番人気があるのが東野圭吾かもしれません。
また、塩野七世のギリシャ人の物語やローマ人物語も中国語に翻訳され大理古城にある新華書店等の店頭に置いてあります。このブログでも以前触れた事もあるのですが、講談社から出されている「中国の歴史」全12巻シリーズも中国語に翻訳されて出版されていますが好調な売れ行きとの事ですが、この作品の評価は中国の専門家の間でも高い様です。
2017年6月に大理州巍山県の新知書店の店頭で見た源氏物語。この時は70万部でしたが今では90万部を超え100万部の大ベストセラーになると予想されるそうです。
昆明市の本屋には「枕草子」もありました。「知日」と云う雑誌では源氏物語の特集を組んでいます。
太宰治の「人間失格」や「斜陽」も。例の「うまれて すみません」は「生而為人 很抱歉」と訳されていましたがなかなか名訳だと私は思います。
こちらは、「羅生門」。
新知書店は、カンボジア、タイ、シンガポール スリランカ等海外にも店舗を展開しており、中国ではかなり大手の書店です。雲南省では、昆明市、大理市、楚雄市等の市部だけでなく巍山県、騰沖県等の県レベルにも積極的に店を出しています。新華書店は、所謂党関係の書店なので品揃えも限られるのですが、新知書店は一応民営の書店なので店頭に並ぶ本も色々の分野の本が並びます。
大理の新知書店では、海外文学のコーナーで一番広いスペースを占めるのが日本文学の様です。