中国の北京電視台(中国北京市にあるTV局)の番組の中に「档案」と云う毎週放送している40分程の番組があります。これも一種のドキュメンタリー番組ですが、この番組の中でも、過去に高倉健の事を取り上げて放送した事がある様です。(注:2011年5月放送)。私も、この番組「高倉健 孤独の舞台裏」と題したドキュメンタリー番組は視た事があります。この番組では主に高倉健と江利チエミとの交際や結婚にいたる経緯、結婚の破綻等の私生活に焦点をあてた番組ですが、中国でこのような番組が作られた事自体が、高倉健の中国での人気の程を証明する一つかと思います。この番組の中では当然、高倉健が俳優になる経緯や俳優としての歩み、江利チエミと離婚した後は、再婚しなかった事、東映を辞め独立した事等にも触れており、私としては結構面白かった高倉健を扱った番組の一つです。この番組の中では、山田洋二監督と高倉健との出会い等にも触れていました。この番組も、どちらかと云えば高倉健の人間性に焦点を当てた番組と云えるかと思います。(注:この番組は高倉健が亡くなった事もあり、最近鳳凰電視台等でも再放送されているようですが、再生される回数も、ネット上にアップ番組の中でもダントツの様です。)
高倉健が死亡したニュースに関する日本での報道をネット等で見ていて気になった事があります。某新聞の電子版やブログ等には、高倉健が死亡した事で、中国外務省が特別声明を出したと云う様な類の報道がなされている様ですが、それは違うと思います。中国の外務省が毎日行う定例の記者会見の中で、中国のあるメディアの記者が「日本の有名な俳優高倉健が亡くなったが、この事に関して?」と云う様な質問に対して、当日担当した外務省の報道官が「哀悼の意」を表したと云うのが実情です。この外務省の報道官と記者のやり取りは中国中央TV等のニュースでも流されていて、私も偶々視ました。それだけに、中国の外務省が高倉健が亡くなった事で特別に哀悼の意を表したとか、ましてや、特別声明を出したとかの日本の一部の報道には、とても違和感があります。少し考えれば高倉健が中国ではいくら有名な俳優とは云え外務省が特別声明は出すとは思えませんが。
このブログでも触れた「新聞1+1」と云う番組の高倉健に焦点をあてた番組の中でも、当日担当した若い女性キャスターが、私達の世代は「東京愛情物語」に主演した鈴木保奈美が憧れの的だったと語った様に、中国で高倉健を憧れの対象として懐かしむのは、今の40代、50代以上の人で、当然ですが全ての年代の中国人が高倉健をスターとして見ている訳ではありません。今の20代ともなると高倉健を知らない人も多いのが実情の様です。今の10代、20代は日本の文化の中でもアニメ、漫画、コスプレ等の影響が大きい様で、宮崎駿監督のアニメ映画の話等は良く聞きますが、それ以外の日本映画の話は、あまり聞く事はありません。
「新聞1+1」と云う番組の中でも、2013年行われたある調査に拠れば、普通の中国人の中で「日本に対して良い印象を抱いているのは僅か5.2%にすぎない事、同じように日本人も僅か9.6%の人しか中国に対して良い印象を持っていない事にも触れています。また、今年9月に開催された第10回北京東京フォーラムの際に、中国人の70%、、日本人の80%が双方の国と国民に対して悪い印象を持っている事等にも触れています。多くの日本メディアやブログ等でも、この番組に触れている様ですが、無論この番組も単に俳優高倉健を追悼した番組ではありません。