●被害額算定と清算方法を決着
雨漏りで水浸し模様となった隣の部屋に比べれば、私の部屋の被害など補償を求めるに足るのかとも思ったが、やはり一定の不自由が生じている以上、社会人として臆せずに家主に当たるべきとの妙な正義感が生じていた。というよりも、そのころの私の気性として、何か算出すべき事柄があると数字にして明らかにしたいということだったのかも知れない。どうせやるなら面白く被災額を弾いてみたいという興味に駆られたのだ。
つまり、被災した物品を新品に買い替える金額を見積もるなら、近くのダイエー新潟店に小一時間でも立ち寄ってメモすればリストが出来て終わりということだったが、それでは面白くない。そもそもある程度使い込んでいた物の新品で要求するのは違うだろうし、年代もののオーディオラックなど今は同じものを探しようのないものもある。
そこで参考にしようと考えたのが減価償却という概念だった。物品がそもそも何年程度使用できるかを想定して、入手してから今日にいたるまで使用した分の割合相当で取得価格を減額して、いわば残存価格を算出し、それを被災額にしようと考えたのだ。
私は、半年前までの新潟大学経済学部在籍の中できっかけがあって日商簿記二級を持っていたし、この春から新潟県庁の新採用職員として勤めている企業局総務課という部署では、役所仕事では珍しく資産を持って事業を展開する企業会計の実務を担っていたので、減価償却に関する事務は身近なものだったのだ。
現在同じモノが売っていない物品等は、店舗で同種のものを参照したり、店の人から聞いたりして、当たらずも遠からじの取得価格を推定した。
こうした物品に係る損害相当額の算出を終えると、今度は私が被った迷惑に係る補償についても考えてみた。学生時代の個人的関心で、民事訴訟事案などを面白おかしく取り上げた図書を持っていたので、そこから、今回の私のケースに引用できそうなヒントを探してみた。休業補償とか迷惑料、通信費や交通費の費用弁償などなど、そんな類が参考にできそうだった。
そうして、計算用紙に項目建てして私なりに試算した損害相当額や迷惑料、費用弁償などを列挙していくと、結構もっともらしい見積書の体裁になってきた。こうしたものの様式や内容がネットで検索すれば直ぐに倣って作成できる時代ではないので、全て自分で考えたオリジナルだった。
家主への請求額として、その全て積み上げてみると、図らずも家賃にして4か月相当額に及んだ。これが満額認められれば、3月末の入居を予約した新築アパートへ引っ越しするまでの間、家賃はロハとなる。偶然とは言え出来すぎの数字が出たものだと我ながら感心した。
二三日して仲介の不動産業者を通じて「損害補償請求書」を提示すると、翌日には電話で、私がそこに併せて記した清算方法も含めて、要求通り認めるとの家主の回答が折り返し伝えられた。マンパチではなく真摯に見積もった感のある請求書と、清算方法が家賃で相殺という現金持ち出しを伴わないことが好感を持たれたようだ。
かくして、3月までの4か月間にわたり家賃負担の無い生活が始まった。応急処置したばかり屋根の下での雨漏りリスクが心配ではあったのだが…。
(「新潟独り暮らし時代74「被害額算定と清算方法を決着」」終わり。仕事遍歴を少し離れた独り暮らし時代の思い出話「新潟独り暮らし時代75「最初で最後の冬は凍結地獄」」に続きます。)
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