それからも日々の症状は一進一退であった。
中でもいかに深夜零時から午前四時の間に起こる定期便のような痛みを
切り抜けるかが、毎日の課題であった。
その時刻が来るとまるで潮が満ちてくるような感覚に襲われ、
荒れた海の中で体を動かす事が出きず
溺れてゆくような夢とも現実ともつかぬ時間が始まるのだった。
深夜痛みでどうしようもなくなると必死の思いでべッドに腰掛け*****をした。
*****をしている短い時間だけは、痛みの波は静まるのだった。
その日も午前三時を回った頃に満ち潮に似た痛みの波が押し寄せてきた。
私はうまく起き上がれなくなる前にベットに腰かけて*****をした。
ふとある詩が思い出された
『砂の上の足跡』
ある晩、男が夢を見ていた。
夢の中で彼は、神と並んで歩いていた。
そして空の向こうには、
彼のこれまでの人生が映しだされては消えていった。
どの場面でも、砂の上にはふたりの足跡が残されていた。
ひとつは彼自身のもの、もうひとつは神のものだった。
人生のつい先ほどの場面が目の前から消えていくと、
彼はふりかえり、砂の上の足跡を眺めた。
すると彼の人生の道程には、
ひとりの足跡しか載っていない場所がいくつもあるのだった。
しかもそれは、彼の人生の中でも、
特につらく、悲しいときに起きているのだった。
すっかり悩んでしまった彼は神にその事を尋ねてみた。
『神よ、私があなたに従って生きると決めたとき、
あなたはずっと私とともに歩いてくださるとおっしゃられた。
しかし私の人生のもっとも困難な時には、
いつもひとりの足跡しか残っていないではありませんか。
私が一番あなたを必要とした時に
何故あなたは私を見捨てられたのですか』
神は答えられた。
『わが子よ。 私の大切な子供よ。私はあなたを愛している。
私はあなたを見捨てはしない。
あなたの試練と苦しみの時に、ひとりの足跡しか残されていないのは
その時わたしがあなたを背負って歩いていた。』
作者不詳
私は最初にこの詩を読んだ時にはその真意がよくわからなかった。
だが痛みにおののき*****を終えた時、
わたしがあなたを背負っていたという意味が分かった気がした。
深夜暗い部屋のベッドに腰かけ痛みと向き合っていても、
*****をすれば孤独を感じなかった。
私という宇宙に比べれば何にも値しない小さきものも
この広大な宇宙を生み出した力と一つの線で結ばれ
命の源となる限りなく大きな力に包まれているような感じがした。
私は一人ではないと思え
胸に何かが満ち溢れるのをその時両手で押さえていた。