(103) マタタビの 裏白光る 奥多摩路
リズムがいいのでいじるのに抵抗を感じる、
作者はマタタビの葉が白いのは裏側だと思い込んでいるようなので
実際のところを調べてみた、
主婦の友社発行の「山野草カラー百科」マタタビ欄
❝花の咲く時期に葉の先が半分だけ白く変色する性質が有り、
遠方からでもよく目立つ、
花が終わるといつの間にか白変は消える、❞
だがこれも又実際とは異なる、
この記事と合わせて掲載された写真を見ても分かるが
半分だけ変色するのは極わずかな葉っぱだけで
大半は葉っぱ全体が白い、
一枝の中で白変した葉っぱに混じって
少数の緑の葉っぱが混在しているので
様々な誤解を生んでいるようだ、
さて 句に戻ろう、
確かにマタタビの白い葉っぱは目立つ、
いやでも目に付く、
❝マタタビの 白葉目につく 奥多摩路❞
くらいでどうだろうか?
(104) 群れて飛ぶ 蛍に遠い夏 懐かしむ
この時の旅には私も同行した、
上越新幹線上毛高原駅の裏手に
ホタルの里と名付けられたホタル田があった、
保護育成されたものであろうが見事な群舞であった、
中の句の字余りがリズムを崩して読みにくくしている、
❝群舞する 蛍ふるさと 連れてくる❞
(107) 対岸の 夜汽車の灯り 雪原照らす
(108) 狐火の 伝えの山に 夜汽車の灯
私にも記憶に残る旅であった、
会津に近い麒麟山温泉は阿賀野川に沿う
鄙びた温泉宿であった、
川沿いに建つ宿の露天風呂からは
遥か対岸を走る夜汽車の灯りが
まるでおとぎ話の世界に居合わせたような
錯角で私を誘(いざな)った、
部屋では酒盛りの始まった同級生一同が
私のいないことに気付いて露天風呂まで
様子を見に来てくれた、
作者から上の2句に追加で新作がメールで
送られてきた、
(108´) 雪原を 流れる灯り 夜汽車行く
暗闇の原野を夜汽車が灯りの糸を引いて走る様を
露天風呂に浸かりながら見ていられる場所なんて
そうそうあるものではない、
いつかまたあの光景を目にしたいと思っている。
(写真はユウスゲの花)