白菊一輪
9月中ごろ
高校時代の友人から
一通のはがきが届いた、
“妻が本を出版したから
是非とも読んでほしい”
という内容であった、
早速発売日三日後の10月末
近くの本屋に行った、
取り寄せになるということで注文した、
一週間ほどして手元に届いた、
題名「天国とよばれた療養所」
作者:ゆきや星
(株)郁有社
時代は大正期末期に始まる、
偏見の最たるものがこの病気であった、
この患者が親類縁者から出ようものなら
秘密裏に療養所に送り込まれ
縁さえ切られる者が多かったと聞く、
今で言うハンセン氏病、
当時は癩(らい)病と言われて
差別と偏見に満ち満ちて
国家政策で隔離された、
そんな患者の苦悩を描いた内容だった、
巻末に記載された数多くの参考文献は
作者の努力を物語る、
内容からしてストリーは
明るく成りようがないのは
仕方がない、
それにしても
読み進むのに苦労した、
時代は大きく変わって昭和30年代
最終章で主人公の男性患者が
病を克服して結婚し子供も出来る、
あるきっかけで金魚を飼うことになり
それの餌にコオロギを粉末状にして
与えたところ金魚の発育状況に
非常に効果があることが分かった、
主人公がそれをペットショップに持ち込んで
相談したところ好評化され
量産化に成功し取引が始まる、
ここまで来てやっと主人公は
人並みの生活を手に入れる、
それは読者の気持ちにも
明るい光をもたらす、
この病気に感心のある人が読めば
どんなに暗い場面でも
苦にはならないのであろう、
私には最後でやっと
救われた気になった、
それは
どんなに暗い生活の中にあろうとも
何かを作り出すという行為の中には
一縷の望みがあるということだ、
失敗するか
それが成功に繋がるかは
本人の才覚と努力次第。