ノロウイルス真っ盛りでございます。
それはさておき
京都文化博物館で開催中のカポディモンテ美術館展 ルネサンスからバロックまでへ行ってまいりました。
作品保護のためでございましょう、照明はだいぶ落とされております。暗い場内の所々にスポットライトによって光のサークルが作られ、会場全体がバロック的陰影に包まれておりました。
とはいえ展覧会のサブタイトルどおり、まずはルネサンス絵画から始まるのでございます。冒頭を飾るのは、あの画期的な死せるキリスト像を描いたマンテーニャのルドヴィコ・ゴンザーガの肖像(とされているもの)。当時流行した横顔肖像画という取り澄ました形式も手伝ってのことでございましょうか、モデルの個性やまだあどけなさの残る表情を捉えながらも、マンテーニャ独特の硬質な画風が伺われる小品でございます。
さて、マンテーニャやコレッジョや、かなーりレオナルドなルイーニの聖母子像といったルネサンス的な作品を眺めつつ進んで行き、ふとふり返るとそこにはもう、調和と静謐のルネサンスとは趣を異にする作品が待ちかまえておりました。
キリストの復活
作者は『美術家列伝』の著者ジョルジョ・ヴァザーリ。ええっこの人ぁ物書きじゃなかったんかい、と思ってあとで調べてみましたら、画家としても有名である上、ウフィツィの設計者でもあるとのこと。ううむ、全く存じませんでした。自らの浅学を恥じるばかりでございます。解説パネルを読みますと、この絵はフレスコ画を共同製作していた画家の助けを借りて描かれたものなのだそうで。
はりつけにされ、脇腹を刺され、亡くなって埋葬されてから三日の後に、なんと元気に復活するイエッさん。さすが神の子、タフにできております。墓の周りには遺体の盗難を防ぐために番兵が配置されていたのでございますが、聖書自体には復活シーンの記述がない(=目撃証言がない)ことから、番兵さんたちはイエッさん復活の時には眠りこけていたのだという解釈で描かれます。
それにしてもこの作品、兵士たちの眠りこけかたがすごいではございませんか。暗い背景のもと、兵士たちが死体と見まごうばかりにごろごろ折り重なって倒れているのを見て「いや、この絵怖いわ~」とつぶやきながら早々に立ち去って行かれるお客さんも少なくはございませんでした。
しかしこちら側に頭を向け、体をひねったポーズで横たわる人体を(手前の兵士の右足がちょっと変な感じではありますが)目立った破綻なく描いているあたり、見事な技量であると申せましょう。えっ。兵士たちはフレスコ画家さんが描いたんですか。そうですか。
寝転がる兵士たちの上に墓室の扉を蹴り倒してお出ましんなるイエッさん。聖火ランナーよろしく颯爽としたポーズは、扉の下敷きになっている番兵さんたちの体たらくとギャップがありすぎて、ちょっと笑えます。
イエッさんの均整のとれたプロポーションはルネサンスの名残りを留めておりますが、画面全体の暗さや、兵士たちがぐにゃぐにゃと眠りこける姿は、この作品の描かれた1545年にはすでに絵画がマニエリスムの時代に突入していることを伺わせるのでございました。
次回に続きます。
それはさておき
京都文化博物館で開催中のカポディモンテ美術館展 ルネサンスからバロックまでへ行ってまいりました。
作品保護のためでございましょう、照明はだいぶ落とされております。暗い場内の所々にスポットライトによって光のサークルが作られ、会場全体がバロック的陰影に包まれておりました。
とはいえ展覧会のサブタイトルどおり、まずはルネサンス絵画から始まるのでございます。冒頭を飾るのは、あの画期的な死せるキリスト像を描いたマンテーニャのルドヴィコ・ゴンザーガの肖像(とされているもの)。当時流行した横顔肖像画という取り澄ました形式も手伝ってのことでございましょうか、モデルの個性やまだあどけなさの残る表情を捉えながらも、マンテーニャ独特の硬質な画風が伺われる小品でございます。
さて、マンテーニャやコレッジョや、かなーりレオナルドなルイーニの聖母子像といったルネサンス的な作品を眺めつつ進んで行き、ふとふり返るとそこにはもう、調和と静謐のルネサンスとは趣を異にする作品が待ちかまえておりました。
キリストの復活
作者は『美術家列伝』の著者ジョルジョ・ヴァザーリ。ええっこの人ぁ物書きじゃなかったんかい、と思ってあとで調べてみましたら、画家としても有名である上、ウフィツィの設計者でもあるとのこと。ううむ、全く存じませんでした。自らの浅学を恥じるばかりでございます。解説パネルを読みますと、この絵はフレスコ画を共同製作していた画家の助けを借りて描かれたものなのだそうで。
はりつけにされ、脇腹を刺され、亡くなって埋葬されてから三日の後に、なんと元気に復活するイエッさん。さすが神の子、タフにできております。墓の周りには遺体の盗難を防ぐために番兵が配置されていたのでございますが、聖書自体には復活シーンの記述がない(=目撃証言がない)ことから、番兵さんたちはイエッさん復活の時には眠りこけていたのだという解釈で描かれます。
それにしてもこの作品、兵士たちの眠りこけかたがすごいではございませんか。暗い背景のもと、兵士たちが死体と見まごうばかりにごろごろ折り重なって倒れているのを見て「いや、この絵怖いわ~」とつぶやきながら早々に立ち去って行かれるお客さんも少なくはございませんでした。
しかしこちら側に頭を向け、体をひねったポーズで横たわる人体を(手前の兵士の右足がちょっと変な感じではありますが)目立った破綻なく描いているあたり、見事な技量であると申せましょう。えっ。兵士たちはフレスコ画家さんが描いたんですか。そうですか。
寝転がる兵士たちの上に墓室の扉を蹴り倒してお出ましんなるイエッさん。聖火ランナーよろしく颯爽としたポーズは、扉の下敷きになっている番兵さんたちの体たらくとギャップがありすぎて、ちょっと笑えます。
イエッさんの均整のとれたプロポーションはルネサンスの名残りを留めておりますが、画面全体の暗さや、兵士たちがぐにゃぐにゃと眠りこける姿は、この作品の描かれた1545年にはすでに絵画がマニエリスムの時代に突入していることを伺わせるのでございました。
次回に続きます。