数日前にツイッターのTLで回ってきた記事に、次のようなものがあります。
「STAP細胞をめぐる一連の大騒動」(『西日本新聞』2014年3月23日)。
この記事、ほんとひどくて、
「本来、研究は人、社会に役立つべきものと思うが、ネット上の論文には個人的な知的遊戯に浸っている物が少なからず散見される」
という部分に関して、真面目に反論されていた方も多かったのですが…
どうもそれ以前の問題が多すぎる。
これからレポートや卒論を書く学生さんが注意すべき点も多いと思いますので、ここで取り上げることにします。
まず、文章の構成について。
第一段落は、小保方さんをめぐる一連の騒動の話なのですが、第二段落で論文の話になります。
「大学教員などの公募サイトをのぞくと、論文提出を求めるケースが大半だ」の部分、ここまでならまだ何とか、大学就職のために業績を焦った結果博論のコピペやSTAP論文の不備or捏造が起こったのかと推測した、
という文脈かなと解釈できます。
ただし、そういう説明ないけどね。
でも、続く「脳みそが軽いわが身には」云々のくだりは、どう読んでも第一段落からの脈絡が見出だせません。
STAP細胞はどこへ行った…!
これだけ短い文章のなかで、話題が二転三転するというのは、ふつうありえません。
(1)論点を絞ること
(2)前の部分を受けて続く部分を展開すること
(3)結論は明確に、
序論(立てられた問い)と対応するように
(4)タイトルは内容を的確に表すように
気をつけるようにしましょう。
そして第二段落の、
「ネット上に公開された大学などの論文にある「解釈的文脈」「モダリティ辞」「ディアスポラ」「語用論」って何?」
という部分。
彼がなぜ論文なんぞ閲覧したのかは分かりません。
ただ、ひとつはっきり言えるのは、いきなりネットで論文検索すんなよ、ということ。
ネット上で閲覧できる論文って、紀要など小さな雑誌が多い。
査読なし、評価もよくわからないものが多い。
もちろん中には重要なものがないわけではないですが、それは自分で読んで判断しないと分からない。
内容はおろか用語がわからないという人がいきなり読むようなものじゃないのですよ。
何かで記事を書く必要があって、その下調べのためだった、と仮定してみましょう。
その場合は、
(1)辞書類などレファレンス
(図書館に行けば必ずレファレンスコーナーというのがあります。分からなければ司書さんに聞いてみましょう)
↓
(2)その分野のなかでガイド的な叢書や雑誌
↓
(3)論文
の順で調べてゆくのがふつうです。
論文を探すときも、(2)で言及されている論文→芋づる式に誰かが注にあげている論文を拾ってゆくのが効率的ですが、
検索するのもいきなりネットで検索するのではなく、図書館などのデータベースを利用した方がいい。
たいてい、どこの大学図書館でも論文検索のデータベースを入れてると思います。
Ciniiとか、MagazinePlusとか。
大学図書館でないと利用できないのがつらいですが…
→すみません、Ciniiはネット環境があればどこでも利用できます。
私は専門が日本文学なので、国文学研資料館の論文目録データベースをよく利用しますね。
ここは登録すれば無料で利用できます。
調べ物の仕方、図書館の使い方については、これがおすすめ。
・井上真琴『図書館に訊け!』(ちくま新書、2004年)
面白いです。
ちなみに、「解釈的文脈」は特に何かの用語というわけではないかな。
解釈も文脈もふつうにつかう言葉ですので、ちゃんと推測してね。
「モダリティ辞」と「語用論」は言語学などで用いられる用語。
モダリティ:話し手がある事柄についてもつ判断の内容。事柄が真実である可能性の程度や、命令・義務・許可など。日本語では「きっと」「たぶん」などの副詞、「ようだ」「らしい」などの助動詞のほか、「はずだ」「かもしれない」などさまざまの語句で表す。法性。(『広辞苑』第6版、2008年)
語用論:記号論の一分野。言語を含む記号の通信者が、記号をどう使用するか、また記号の受信者が、どう理解するかといった、通信者、受信者間の言語記号の用法についての理論。言語実用論。(『精選版 日本国語大辞典』2006年)
「ディアスポラ」はユダヤの民や、移民などに関して使われる用語。故郷が失われた民、みたいな文脈。思想系で使われることが多いかな?
ディアスポラ:「離散」の意で、主としてヘレニズム時代以後、ユダヤ人がパレスチナ以外の世界に広く移住したことをさす。このディアスポラのユダヤ人を有力な母体として原始キリスト教が伝播した。(『山川 世界史小辞典』2004年)
(↑引用は手元にある電子辞書に入っているものからなので、適当ですが。もっと適切なものがあると思う)
最後にもう一度いいます、いきなりネットで論文検索とかしないでください。
それじゃ分からなくて当然です。
そんな調べ方じゃ、私だって分からない!
「STAP細胞をめぐる一連の大騒動」(『西日本新聞』2014年3月23日)。
この記事、ほんとひどくて、
「本来、研究は人、社会に役立つべきものと思うが、ネット上の論文には個人的な知的遊戯に浸っている物が少なからず散見される」
という部分に関して、真面目に反論されていた方も多かったのですが…
どうもそれ以前の問題が多すぎる。
これからレポートや卒論を書く学生さんが注意すべき点も多いと思いますので、ここで取り上げることにします。
まず、文章の構成について。
第一段落は、小保方さんをめぐる一連の騒動の話なのですが、第二段落で論文の話になります。
「大学教員などの公募サイトをのぞくと、論文提出を求めるケースが大半だ」の部分、ここまでならまだ何とか、大学就職のために業績を焦った結果博論のコピペやSTAP論文の不備or捏造が起こったのかと推測した、
という文脈かなと解釈できます。
ただし、そういう説明ないけどね。
でも、続く「脳みそが軽いわが身には」云々のくだりは、どう読んでも第一段落からの脈絡が見出だせません。
STAP細胞はどこへ行った…!
これだけ短い文章のなかで、話題が二転三転するというのは、ふつうありえません。
(1)論点を絞ること
(2)前の部分を受けて続く部分を展開すること
(3)結論は明確に、
序論(立てられた問い)と対応するように
(4)タイトルは内容を的確に表すように
気をつけるようにしましょう。
そして第二段落の、
「ネット上に公開された大学などの論文にある「解釈的文脈」「モダリティ辞」「ディアスポラ」「語用論」って何?」
という部分。
彼がなぜ論文なんぞ閲覧したのかは分かりません。
ただ、ひとつはっきり言えるのは、いきなりネットで論文検索すんなよ、ということ。
ネット上で閲覧できる論文って、紀要など小さな雑誌が多い。
査読なし、評価もよくわからないものが多い。
もちろん中には重要なものがないわけではないですが、それは自分で読んで判断しないと分からない。
内容はおろか用語がわからないという人がいきなり読むようなものじゃないのですよ。
何かで記事を書く必要があって、その下調べのためだった、と仮定してみましょう。
その場合は、
(1)辞書類などレファレンス
(図書館に行けば必ずレファレンスコーナーというのがあります。分からなければ司書さんに聞いてみましょう)
↓
(2)その分野のなかでガイド的な叢書や雑誌
↓
(3)論文
の順で調べてゆくのがふつうです。
論文を探すときも、(2)で言及されている論文→芋づる式に誰かが注にあげている論文を拾ってゆくのが効率的ですが、
検索するのもいきなりネットで検索するのではなく、図書館などのデータベースを利用した方がいい。
たいてい、どこの大学図書館でも論文検索のデータベースを入れてると思います。
Ciniiとか、MagazinePlusとか。
私は専門が日本文学なので、国文学研資料館の論文目録データベースをよく利用しますね。
ここは登録すれば無料で利用できます。
調べ物の仕方、図書館の使い方については、これがおすすめ。
・井上真琴『図書館に訊け!』(ちくま新書、2004年)
面白いです。
ちなみに、「解釈的文脈」は特に何かの用語というわけではないかな。
解釈も文脈もふつうにつかう言葉ですので、ちゃんと推測してね。
「モダリティ辞」と「語用論」は言語学などで用いられる用語。
モダリティ:話し手がある事柄についてもつ判断の内容。事柄が真実である可能性の程度や、命令・義務・許可など。日本語では「きっと」「たぶん」などの副詞、「ようだ」「らしい」などの助動詞のほか、「はずだ」「かもしれない」などさまざまの語句で表す。法性。(『広辞苑』第6版、2008年)
語用論:記号論の一分野。言語を含む記号の通信者が、記号をどう使用するか、また記号の受信者が、どう理解するかといった、通信者、受信者間の言語記号の用法についての理論。言語実用論。(『精選版 日本国語大辞典』2006年)
「ディアスポラ」はユダヤの民や、移民などに関して使われる用語。故郷が失われた民、みたいな文脈。思想系で使われることが多いかな?
ディアスポラ:「離散」の意で、主としてヘレニズム時代以後、ユダヤ人がパレスチナ以外の世界に広く移住したことをさす。このディアスポラのユダヤ人を有力な母体として原始キリスト教が伝播した。(『山川 世界史小辞典』2004年)
(↑引用は手元にある電子辞書に入っているものからなので、適当ですが。もっと適切なものがあると思う)
最後にもう一度いいます、いきなりネットで論文検索とかしないでください。
それじゃ分からなくて当然です。
そんな調べ方じゃ、私だって分からない!