カジノを中核とした統合型リゾート(IR)の誘致計画を県が国へ申請する議案について、県議会(定数42、欠員1)は4月20日、反対多数で否決した。採決は無記名投票だったため、読売新聞は全議員に対し、賛成、反対のどちらに投票したかなどを問うアンケートを実施。IR推進の立場だった自民でも賛否が大きく割れたことが分かった。(北谷圭)
採決は森礼子議長(自民)を除く40人で行われた。賛成18、反対22で否決し、県のIR誘致は頓挫した。
読売新聞は採決後、全41議員に「議案に賛成したか、反対したか、回答しないか」を問うアンケートを送付。賛成15、反対13、回答しない(締め切りまでに未回答を含む)が13だった。
最大会派でIR推進の立場だった自民は27人中16人が賛否を回答し、賛成9、反対7と割れた。複数議員が所属する会派のうち、全員の回答が一致したのは共産(反対4人)だけだった。
アンケートでは賛否の理由や回答しない理由を尋ねた。賛成では「経済効果への期待」が目立った。反対では「IR事業者の資金計画が不透明」「ギャンブル依存症や犯罪を生む」などだった。
一方、回答しない理由は「無記名投票だったため」などとしている。
県議会事務局によると、議決は通常、「起立採決」で行われ、投票の場合は無記名とすることを慣例としている。今回は、採決前の会派代表者会議で無記名投票に合意。これを受けて議会運営委員会(定数12)が正式に決めた。だが、出席した委員の一人からは「大事な議案だから、記名したうえで採決した方がよいのでは」との意見も出た。
IR誘致計画を可決した大阪府議会は起立採決。長崎県議会は各議員の賛否が議場のモニターに映し出される電子投票だった。
地方議会に詳しい同志社大の新川達郎名誉教授(地方自治論)は「賛否の表明は、各議員にとっては最も重要な責務。全国的には、個々の態度を明確にしようという流れもある。採決の方法として、やや疑問符がつく」と指摘する。
一方で、関西大の山崎栄一教授(憲法)は「議員には多くの支持者がおり、事業への賛否も分かれている。議員が自分の信念に基づいて投票するためには秘密投票が望ましく、IRの特殊性を考えると無記名が妥当」とする。