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厚木騒音訴訟:自衛隊機2審も夜間停止…将来の賠償初認定
毎日新聞 2015年07月30日 10時31分(最終更新 07月30日 13時13分)
米海軍と海上自衛隊が共同使用する厚木基地(神奈川県大和市、綾瀬市)の周辺住民約7000人が、米軍機と自衛隊機の夜間・早朝の飛行差し止めと、騒音被害に対する損害賠償を国に求めた「第4次厚木基地騒音訴訟」の控訴審判決で、東京高裁は30日、1審・横浜地裁判決に続き自衛隊機の飛行差し止めを命じ、国側の控訴を棄却した。★斎藤隆裁判長は「睡眠妨害は相当深刻で、健康被害に直接結び付き得る」と指摘した。差し止めを★命じた判断は高裁レベルでは初めて。各地の基地騒音訴訟に★影響する可能性が強まった。
また、騒音被害に対する賠償について判決は、米空母艦載機が2017年までに厚木基地から岩国基地(山口県岩国市)に移転される在日米軍再編計画があることを踏まえ、「騒音被害の違法性が少なくとも★40年は続いており、今後も継続が見込まれる。艦載機移転予定の16年末までに限って★将来分の請求は認められる」と指摘。16年末までの賠償金★12億円を新たに認めた。過去の被害に対する★82億円を加え、賠償額は過去最高の約★94億円とした。騒音訴訟で判決後にわたって★将来分の損害賠償が認められるのは★初めて。
住民側は4次訴訟で、賠償を求める民事訴訟と同時に、行政★処分や公権力行使の適法性を争う行政★訴訟を起こした。1審は「自衛隊機運航は住民に騒音などの我慢を義務付けるもので、防衛相による★公権力の行使に当たる」と判断。基地騒音訴訟で初めて自衛隊機の飛行差し止めを命じた。
高裁は、自衛隊機の差し止めが行政訴訟の対象となるかを改めて検討し、「睡眠妨害は賠償金による補填(ほてん)では回復できない」として対象になると判断。その上で「夜間・早朝の自衛隊機の運航は、防衛相に与えられた権限の範囲を逸脱し違法」と国の対応を批判し、1審と同様に午後10時から午前6時までは、やむを得ない場合を除いて、自衛隊機の飛行差し止めを認めた。ただ、岩国基地への米空母艦載機移転が予定されていることから「艦載機が騒音の大きな比重を占めており、17年1月以降は騒音状況が★大きく変わる可能性がある」と時期を16年末までに区切った。
一方、米軍機の差し止め請求は「防衛相に米軍機の運航を統括する権限は★ない」として1審に続いて退けた。米軍機は自衛隊機よりも騒音が大きく、離着陸回数も多いため、判決が確定しても基地周辺の騒音被害は継続することになる。
原告は航空機の1日の騒音を表す基準「うるささ指数」(W値)が75以上の地域の住民。環境省の環境基準は、住宅地を中心とする地域はW値70以下と定めており、W値75は午後10時〜午前7時に75デシベル(地下鉄の車内程度)の騒音を50回聞いた計算になる。
判決を受け中谷元防衛相は「関係機関と十分調整の上、(最高裁に)★上訴することを検討していく」と記者団に語った。ただ、海自は緊急時を除いて深夜・早朝の飛行を自主規制しており、判決は部隊の運用に直ちに大きな影響は与えないとの見方もある。【島田信幸】
◇控訴審判決・骨子◇
・防衛相は2016年末までの間、やむを得ない場合を除き、午後10時から翌日午前6時までの間、厚木基地で自衛隊機を飛行させてはならない。
・★米軍機の飛行差し止めの訴えは★退ける。
・16年末までの将来分も含め、原告約7000人に対し、国に約★94億円の賠償を命じる。
◇厚木基地騒音訴訟◇
厚木基地周辺の住民92人が1976年、米軍機・自衛隊機の飛行差し止めと損害賠償を求め、民事訴訟で1次訴訟を起こした。最高裁は93年、差し止め請求を退ける一方、賠償は認めた。賠償額は、1次訴訟は69人に約1億600万円、2次訴訟(99年確定)は134人に約1億7000万円、3次訴訟(2006年確定)は約★4900人に約★40億4000万円。4次訴訟は周辺8市の約7000人が07年12月、民事訴訟と行政訴訟で提訴。横浜地裁は14年5月、行政訴訟で自衛隊機の飛行差し止めを初めて認め、民事訴訟で約70億円の賠償を命じた。