少女への強姦(ごうかん)罪などで懲役12年とされて服役中、被害証言が虚偽と分かって釈放された大阪府内の70代男性に対するやり直しの裁判(再審)が19日、大阪地裁で始まった。男性は「私は犯罪をしておりません」と改めて無実を訴え、「(捜査・公判の)過ちについて解明していただきたい」と述べた。検察側も無罪判決を求める意見陳述をした。

 男性は2008年、10代女性への強姦2件、強制わいせつ1件の罪で大阪府警に逮捕、大阪地検に起訴された。大阪地裁・高裁の一、二審で被害証言は信用できるとされて実刑判決を受け、11年に最高裁から上告を棄却され服役。だが昨年夏、弁護人が女性から「被害はうそ」と告白され、9月に再審請求した。地検も女性の受診記録に「性的被害の痕跡はない」とあったことを再捜査で知り、11月に釈放した。

 この日の公判で、検察側は「(男性は)無罪である」と短く陳述。釈放までの身柄拘束が6年余りに及んだことを踏まえ、午後の論告でも速やかな無罪判決を求めるとみられる。

 弁護側は、検察が早く受診記録を確認し、裁判所が十分な審理をしていれば「冤罪(えんざい)」を防げた可能性があると主張。捜査・公判を通じて虚偽の被害証言が見逃された原因を明らかにするには、取り調べた検事らの証人尋問が不可欠と訴えたが、芦高源(あしたかみなもと)裁判長は「必要性がない」と退けた。

 再審の公判は午後の被告人質問を経て結審する見通しで、地裁は今秋にも無罪を言い渡すとみられる。(阿部峻介)