おもむろに立ち上がり
腰掛をかたづけて
再び
小間へと向かいます
潜り戸をぬけて
蹲踞を使い
いよいよ
後座の席入りです
掛物は外され
かわりに
大胆な動きのある竹花入が掛けられ
底紅と白い小花が一枝
風炉釜の横には
曲げの格調高い水指が据えられ
その前に
細かい更紗模様の仕服を着た
お茶入が置かれていました
ご亭主が
仕組んだ黒楽を手に
入室されました
お点前が始まると
私は
先ほどいただいたお酒のせいか
次第に呼吸が荒くなってきて
それを気づかれないように
息をこらすのに必死でした
そんな私の情けなさをよそに
ご亭主は淡々と茶筅を動かし
目の前に
濃茶が差し出されました
ご亭主が
点前中ずっと
両手扱いをされていたそのお茶碗は
いったいどんなお茶碗なのだろうと思いながら
恐る恐る手をだして
お茶碗を両手で次客との間に置きました
ありがたく押しいただいて
一口いただくと
熱いお茶が
喉の奥からゆっくりと胃の腑へと
流れ落ちてゆくのが感じられました
お茶銘などをおたずねして
張りつめた緊張から
やや解放された私は
少しずつ
お道具のことをおたずねさせていただきました
花入のこと
水指のこと
そして
お茶碗のこと
なぜご亭主が両手で扱っておられたのか
その理由がわかりました
ご亭主は
お茶室の点前座の反古張りについても
お話をしてくださいました
もちろん御三器は
手元にとって拝見させていただきました
そのご由緒に
あらためて
この一会の重さを感じると共に
言葉を知らず
所作の未熟な自分自身に
顔から火が出る思いでした
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