松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆結の島でまちづくりの基本を考える(奄美大島)

2017-02-11 | 1.研究活動
 結の島でまちづくりの基本を考えた。
 
 奄美大島は、「結の島」である。今日でも、奄美の島のあちこちに、「結いの精神」に基づく地域相互扶助の仕組みが受け継がれている。自治の基本は、相互の助け合い、支えあいであるので、その原点を探るべく、奄美を訪ねた。

 奄美で結の精神が紡がれたのは、島における暮らしがとても厳しいこと、あるいは戦後、米軍施政下におかれ、その復帰運動の団結が、その根底にあるとされている。奄美には、「水は山うかげ,人は世間うかげ」(みでぃはやまうかげ,ちゅはせけん うかげ=水は山の木のおかげで,蓄えられるように,人も世間のおかげで,暮らしができるものだ)という格言があるそうで、人は支えられ、活かされているという感謝の言葉のなかに、「結いの精神」の神髄があるのだろう。

 奄美市役所の東部長さんからは、奄美における興味深いアンケート結果を教えてもらった。総合戦略の策定の際に行った住民アンケートであるが、それによると、①奄美では、日々の生活に満足している人は約3分の2、②日々の生活で助ける人がいるが約4分の3、③奄美が好きですかでは9割近くとなっている。アンケートからは、奄美の暮らしやすさ、奄美に暮らす人びとの穏やかな暮らしぶりが伝わってくる。

 ただ、課題は、結の精神は、家族や隣近所のように小さな関係性では、しっかりと存在しているが、それが地域全体や社会全体の公共性まで、広がりを持ててていないという点である。この点は、奄美地区生活支援コーディネーターをやっている三島照さんが、つとに強調されていた。もはや、家族や隣近所だけでは、人を支えきれない時にあって、より広い範囲で人を支えるシステムをどのようにつくるのかという問題である。これは奄美に限らず、地方には、人のつながりといった「強み」があるにもかかわらず、それが地域全体、社会全体に広がらず、その強みをまち再生の起爆剤に使えていないという問題点でもある。

 この点に対する私の対案、対応策は、①リーダーの育成、②小さな成功事例の積み上げ、③若者、高齢者などそれぞれの居場所と出番をつくること、④行政や議会の後押しを、みんなに見える形で、示すことが重要であると考えている。

 奄美では、三島さんのほか、地域医療に取り組む大島郡医師会の稲源一郎さん、建築というバックボーンを持ちながら、奄美の魅力を形にする重信千代乃さん、自治会で地域づくりに取り組んでいる田丸友三郎さんなど、興味深い人にお会いでき、私自身も大いに触発された。それにあたっては、名瀬地域包括支援センターのTさんはじめ、奄美市役所の方々には、お手数をかけた。

 奄美は、世界遺産を目指している。あちこちに魅力的なところがある。ただ、私が訪ねた日は、日本全体が寒波で、奄美大島でも10度を切る寒さとなった。今度は、もう少し暖かくなったら、奄美を訪ねてみようと思う。聞くところによると、成田からLCCのバニラエアが就航していて、時期によっては5000円で来ることができるらしい。今度は関空からも奄美便が出るらしい。気楽に、奄美の魅力を楽しめそうだ。
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