松下啓一 自治・政策・まちづくり

【連絡先】seisakumatsu@gmail.com 又は seisaku_matsu@hotmail.com

☆圏域行政を考える⑥総務省研究会報告書とその読み方

2020-05-21 | 域外住民への関与
 総務省の研究会の「圏域」についての考え方は、次のとおりである。
①個々の市町村が行政のフルセット主義から脱却し、圏域単位での行政をスタンダード にし、戦略的に圏域内の都市機能等を守る必要がある。
②現状の連携では対応できない深刻な行政課題への取組を進め、広域的な課題への対応力(圏域のガバナンス)を高める仕組みが必要である。
③個々の制度に圏域をビルトインし、連携を促すルールづくりや財政支援、連携しない場合のリスクの可視化等が必要である。

「まちづくりや産業など,圏域単位での政策遂行が合理的な制度・政策についても,現在は,圏域が主体となることを前提とした制度設計が行われていない。圏域での政策遂行を促進するためには,個々の制度に圏域をビルトインし,連携を促すルールづくりや財政支援,連携をしない場合のリスクの可視化など,広域調整のボトルネックを飛び越える手立てが不可欠である。」(35頁)ということである。。
⇒圏域単位で行政を進めることについて、真正面から認める法律上の枠組みを設け、中心都市のマネジメント力を高めることが必要であるとしている。

 論点は、1.なぜ圏域にしないとだめなのか。2.圏域にすればうまくいくのか。3.法律制度の程度や内容にもよるが、団体自治や住民自治など理論的整理ができているかなどである。

1.については、
 報告書は、迫りくる内政上の危機から立論するので、なぜ圏域なのかとの説明が、しっくりこないのだと思う。
 私の説明は、前の記事でも(圏域行政③)で述べたが、「今の体制(ヒト、モノ、カネ)で、地方自治ができないのではないか」である。
 ・期待されているサービス(現実でもフルセット)ができていないのではないか。つまり、ヒト、カネが足りずに、住民ニーズに応じられていないのではないか
 ・モノの維持が、難しくなってきているのではないか。例えば道路や施設の更新が、きちんとできているのか。
 ①できているから、圏域など不要だ
 ②できていないので、圏域以外のこの方法ならできる
この2択である。
 これを示すのが、自治体経営層の役割である。しかも今だけでなく、2040年だって大丈夫と示してほしい。

2について
 白岡市で地域交通問題を考えたとき、隣り町の病院に通いたいというニーズがあったが、市域を越えるということで、実現できなかった。圏域で考えれば、検討の俎上に乗ってくる。

 圏域制度など考えなくても、今でも、協議の制度はあるではないかという意見もあるが、私の立場は、制度はあるだけではだめなので、それをちゃんと使えているのかである。

 自治体を基本に考えると、他自治体との広域連携は、例外的な事例なので、まず始めることに、相当なエネルギーを使う。はじめましてから、始めないといけない。みな忙しいので、例外的なこと、余計なことはやってられない。やりたくたって、そんな余力がない。面倒なので、結局、後回しになる。それではだめだと、いくら上から心意気を説いても、動きはしない。

 圏域制度が、基本としてあれば、担当者は、ここから考える。圏域になってもうまくはいくはずがないという意見は、半分理解できるが、考えてみる価値はあるだろう。まず、考えてみて、それから事の是非を考えるべきではないか。はなから、圏域はだめだでは、頑固おやじである。私も年を取ったが、そこまで、年を取っていない。

3について
 圏域制度が、住民自治や団体自治に合致するかから考えるのではなく、圏域制度に住民自治を取り込み、団体自治との整合性を図る制度設計にするにはどうしたらよいから考えるのである。一生懸命考えてみて、やはり問題があるということならば、私も納得できる。それを理念から一刀両断しては、可能性まで切ってしまう。頭からの議論は、都会のインテリの議論である。それに対して、うまく取り入れる工夫に知恵を絞る発想は、職人の議論である。日本は、創意工夫の国である。それで這い上がった。強みを見失ってどうする。




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ☆広域連合から派生して・委員... | トップ | ◇賭けマージャンでクビ? »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

域外住民への関与」カテゴリの最新記事