石巻市の市役所へ行くと、スーパーマーケットに行ったような感覚になる。
もともとは、石巻駅前で営業していたスーパーマーケットが閉店になり、それを無償取得した市役所が新庁舎として復活させたのが由来である。コストの面もあるが、石巻駅前という中心街の活性化も考えて決断したのだろう。
ここは全体に市役所の建物であるが、一階部分は地元スーパーに貸してある。食料品が並び、しかも建物のつくりがスーパーなのでスーパーである。エレベーターで2階に上がると、普通は、洋服等の売り場になるが、そこからが市役所である。6階建てビルの2~6階が市役所になっている。
この事例は、さまざまな面から議論できるが、ここでは法務の関係から、考えてみよう。
地方自治法238条は、公有財産を行政財産と普通財産に分類している。このうち行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することとした財産をいい、普通財産とは、行政財産以外の公有財産をいう(3項、4項)。
行政財産は、原則として、これを貸し付け、交換、売り払い、譲与、出資の目的とし、若しくは信託し、又はこれに私権を設定することができない。ただし、例外があり、地方自治法238条の4第1項各号の場合には貸付などができる。
地方自治法238条の4の7項では、行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる(目的外使用許可)。使用を例外的に許可するのであるから、期間は通常1年以内(延長は可)、借地借家法の適用がないため(8項)、借主は不安定である。
平成の大合併や人口減少を背景に、平成18年に地方自治法の改正が行われ、庁舎等のうち、余裕のある部分については、これを貸付けることが可能になった(地方自治法238条の4第2項。地方自治法施行令169条の3)。
目的外使用許可と貸付けの違いであるが、貸付けの場合は、借地借家法の適用を受けることになり、借主の地位は安定的になる。それによって、空きスペースを借りようを言う民間の動きを後押ししようというものである。
最近では、公立病院の待ちスペースなどにも、タリーズコーヒーなども入っているが、それも、この地方自治法の改正が追い風になっている。国の補助で建てた場合は、一定の制限があるが、背に腹は代えられないご時世なので、こうした相互乗り入れ、複合化は、これからもどんどんと進むだろう。