松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆幻の東京湾埋立て計画(三浦半島)

2014-08-31 | 1.研究活動

 かつて首都圏サミットを担当していたころの話である。

 廃棄物処理を巡って、七都県市で激しく利害が対立した。一般的には、ごみを出す東京、神奈川vs受け入れ先になる千葉、埼玉の対立の構図である。

 一般廃棄物は、自区内処理が原則であるが、東京などは自区内で処理しきれず、埼玉や千葉が、その埋立て受入先となっていた。
 産業廃棄物については、広域処理が許されているので、もっとあからさまで、東京や神奈川では、発生する産業廃棄物を自区内ではとうてい処理できず、東北や長野県などの遠方や、首都圏では、群馬、栃木、埼玉、千葉に送り出し、そこで埋立てていた。

 ちなみに私の属する横浜は、一般廃棄物は自区内処理をしっかりやっていたので、どちらに組みせずに、やや中立的な位置づけで、しかも、私たちが事務局でもあったので、東京・神奈川vs千葉・埼玉の仲介的な役割だった。

 両者の確執のなか、出てきた案のひとつが、東京湾埋立て計画である。詳細は忘れたが、東京湾を埋立て、そこに東京のごみを埋めるというものである。東京湾を埋立てると、処分場は200年以上もつという話だった。むろん、本気の話ではなく、東京のあまりに身勝手さに反応して出された案である。この案が実現されるとは誰も思わなかったが、正直、私は、この案に惹かれた(だから今でも覚えている)。

 東京湾埋立て案に対して、せっかくきれいになった東京湾を埋めるなどとんでもないという議論が当然出てくるが、「勝手なことを言うな」というのが返す言葉である。自分たちの出しているゴミで、なんの関係もない地方を汚しておいて、自分のところだけは、きれいなままでいようというのは、あまりに虫が良すぎるからである。せめて、自分たちのごみで、関係のない地方を汚しているのだという心の負い目を持つべきだからである。

 並行案のひとつに、工業団地を造成したら、産業廃棄物処分場をセットでつくるべきというものがあった。
 働く場と税収を確保するために、あちこちで工業団地を造成するが、どこもそこから出る産業廃棄物については頬被りである。自分たちは働く場と税収を確保する一方、そこから出た産業廃棄物は、働く場にも税収にもならない他の町(多くは山村)で処分させるというのは、あまりに都合がよすぎるからである。だから、工業団地をつくったら、産業廃棄物処分場も併設すべきというアイディアである。

  川崎市のエコタウン計画は、地域の工場から出るごみは、地域で自己完結しようという試みである。実際は完結型で処分されているわけではないが、人に負担を押し付けないようにしようという試みは、大いに評価すべきだろう。川崎市の職員は、ものすごく優秀な職員とそうでもない職員の差が大きいのが特徴であるが、当時の川崎市の担当者は、公害先進都市らしく、さまざまなアイディアを語っていた。

 東京湾埋立て計画も、産業廃棄物処分場付きの工業団地も、弱いものイジメに腹を立てた、感情的な案なので、陽の目を見ることはならないが、自分たちが迷惑をかけていることの自覚と責任を問うたものだった。

  もし、東京湾が埋立てられると、わが家から見える東京湾の海も陸地に変わることになるが、広大な緑豊かな森にかわれば、それはそれで、魅力的なところになるかもしれない。

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