松下啓一 自治・政策・まちづくり

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★政策法務研修(藤沢市)

2014-08-29 | 2.講演会・研修会

   今年も藤沢市で政策法務研修(2日間)を担当した。昨年に引き続いてである。

 この研修は、3年目と6年目の職員を対象とするものであるが、選択制なのだろうか、参加者は13人と少数だった。結局、ゼミのような研修となった。

 参加者が少数だったので、今回は憲法と条例の関係をじっくりと考えた。
 違憲判断基準については、精神的自由と経済的自由に区分して考えるのが一般的である。そのうち、経済的自由については、目的の違いで2つの基準がある。
 (1)消極的・警察的規制、つまり、国民の生命及び健康に対する危険を防止するような場合は、�立法目的が必要不可欠やむを得ない、�規制の手段が必要かつ合理的な最小限度なこと。
(2)積極的・政策的規制、つまり、社会政策又は経済政策のための場合は、�立法目的が正当で、�規制の手段が目的達成のために合理的なものであればよい。つまり、規制が著しく不合理なことが明白なときのみ違憲とされる。 

 有名な判例が、薬局距離制限事件である。かつては薬局は、距離制限があって、薬局のそばには薬局ができなかった。それは、主として「国民の生命及び健康に対する危険の防止という消極、警察的目的のため」とされた。つまり、薬局等の偏在→競争激化→一部薬局等の不安定→不良医薬品の供給の危険又は医薬品乱用の助長の弊害という理由である。「薬局をたくさん作ると、消費者のみなさんの健康を害します」という論理は、まるで、風が吹けば桶屋がもうかるといった感じで、さすがに必要性と合理性は認められず、憲法22条1項に違反とされた。

 今回の研修では、1000円カット床屋問題を取り上げた。最近、QBハウスなどのような、洗髪をしない床屋さんが急増しているなかで、それに危機感を抱いた理容師組合が、洗髪場を設置しないと営業できないという改正条例を陳情し、すでに26の都道府県で、制定されているからである。この条例ができると,QBハウスは、洗髪場をつくらないと、営業できないことになる。

 判例の基準を当てはめると、洗髪台の設置は、立法の必要性、手段の最小限度性とも満たさないであろう。憲法的には問題であると考えるのが普通だろう。しかし、これだけ全国で条例制定されているので、もう一方の正当性があると考えて、受講生には合憲論の立場からも考えてもらった。結論的には、相当厳しく、舌を咬むような説明になったが、大事なのは、一方的な議論でなく、さまざまな主張に目くばせした態度である。

 最近は、ポジショントークや決めつけ的な議論が本当に目立つようになった。ネットなどでは、極端な意見のほうが支持を得やすい。たしかに、白の黒の二分論のほうが分かりやすいが、世の中、白と黒だけではなく、中間に曖昧なゾーンがあることは、大人なら何度も体験しているはずである。そんな簡単ではない。少なくとも、自治体職員たるものは、他者の主張にも、耳を傾けることができることが必要である。

 研修生のほうは質が高かったが、対して講師の私のほうは、昔話や体験話が多く、飲み屋で知り合ったおじさんの話を聞いているように感じたのではないか。私が出世して、みなとみらいの理事長になっていたら話などは、一人芝居のようで、政策法務研修の範疇を越えるのではないか。

 藤沢市や近辺には、私のゼミ生も住んでいるので、研修の合間のお昼休みに、ミニゼミをやった。みな明るく、人懐っこく、屈託がない。残り1年半も、たくさんの地域活動を行って、市民性をもっと鍛え、そして希望の就職先に入れるようにするのが私の仕事である。もうすぐ、秋学期が始まる。

 追伸
 ゼミのmeguちゃんが、藤沢市に合格した。1年生から、ずっと松下ゼミだった。おめでとう。

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