合計特殊出生率が、その分母が、その地域に住む(既婚、未婚を問わず)15歳から49歳の女性であることを踏まえると、東京が合計特殊出生率が低い、沖縄が高いと言っても、あまり意味がないことになる。
合計特殊出生率の分母は、結婚している女性+未婚の女性であるが、
①未婚の女性が転出して(東京や大阪に行って)、その地域において既婚の人の割合が高くなり(結果として分母が小さくなると)、必然的に合計特殊出生率は高くなり、
②逆に、未婚の女性が転入してきて、未婚の女性が相対的に増えて、その分、分母が大きくなると、合計特殊率は下がることになる(東京)。
つまり、日本全体で合計特殊出生率を見るのなら意味はあるが、地域ごとに比べても、結婚している若い女性が相対的に多いところは合計特殊出生率は高くなり、未婚の人が相対的に多いところは低くなるという当たり前の結果に過ぎない。
わがまちは合計特殊出生率が高いと自慢する町があるかもしれないが、それは未婚の女性が町から出て行ってしまった結果かもしれないので、あまり自慢しない方がいいかもしれない。
だから、ここでも地域ごとに競争させて、合計特殊出生率を上げる競争を煽る政策は、ほとんど無駄だということだろう。意味の乏しい競争を煽り、そんな政策に補助金等を出している。上げるべきは、日本全体の合計特殊出生率なのだろう。むろん、これは国家戦略である。ここにお金を使いべきだろう。
たしかに、田舎の大家族は、出産や子育ての経験者や担い手がたくさんいるので、子どもを産みやすいということもあるかもしれない。他方、東京のように、病院も施設もふんだんにあり、生活条件の良いところのほうが、子育てしやすいということもあるだろう。それぞれのよさを高め、不足するところは補う政策が必要であるが、少なくとも、合計特殊出生率から単純にその町の暮らしぶりが理想で、子どもを増やす政策の決定打のようには、思い込むのはおカネの使い方を誤るだろう。
繰り返すと、合計特殊出生率が高いから、子どもを産みやすい地域とは、単純には言えないとすると、採るべき子どもを増やす政策の方向性が見えてくる。お金を使うべきは、そこだろう。
それにしても、私のようなほぼ人口問題の素人が、今の政策はずれていて、トンチンカンだと思うのに、なぜ、有識者や専門家は、きちんとした指摘や提案をしないのだろう。不思議でならない。