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鶴岡の旅に出かけた理由の一つが、もっけだのぉの語感を確かめるためである。
地方自治論を「もっけだのぉ」から始めることがある。
「もっけだのぉ」は庄内弁で「ありがとう」の意味である。庄内地方とは山形県の鶴岡市・酒田市を中心とする地域で、藤沢周平の小説の舞台になった地域である(「たそがれ清兵衛」や「武士の一分」といった映画にもなっている)。
ちなみに、ありがとうをどのように表現するのかについては、国立国語研究所が全国調査をしている。 関西で使われる「おおきに」はよく知られているが、「ごねんにいりまして」(岡山県)、「わり~っけね」(静岡県)などは何となく分かるが、「にふぇ~で~びる」(沖縄県)になると、なんだろうと思ってしまう。いずれもありがとうを表す言葉である。
要するに、日本は狭い国と言われ、画一的な国と思われているが、言葉ひとつとっても、多様で個性的であることを示す例として、このもっけだのぉから、授業を始めるのである。
ただ、私は、この言葉を直接聞いたことがないのでうまく発音できているか分からない。たまに、山形県出身者がいることがあるが、聞いてみると、その娘は同じ山形でも最上地方なので、庄内地方で使われる「もっけだのぉ」は、全くわからないという(ちなみに山形県は、村上地方(山形市など)、最上地方(新庄市など)、置賜地方(米沢市など)、庄内地方(鶴岡市など)に分かれている。藩が違うので、同じ山形でも文化や言葉も違う)。
もっけだのうぉは、ありがとうよりも含蓄のある言葉とされるが、残念ながらそのニァンスはよく分からないので、今回、鶴岡に行き、この言葉を聞くことになった。うまく、表現できないが、ありがとうの意味で、私たちも微笑みながら軽く「どうも」というが、もっけだのうぉは、そんな感じである。
鶴岡では、羽黒山の2446段の階段を登った。杉の大木が有名であるが、ブナの新緑が綺麗だった。嬉しかったのが、連れ合いが、元気で登り切ったことで、もうすっかり元気になった。その分、ずいぶんと太ったので、この前、街ですれ違っても、犬のマロンは気がつかなかった。