松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆投稿から(三浦半島)

2014-04-04 | 1.研究活動
 私もメンバー(今は名前だけ)の自治体法務研究会のメールに投稿した。

 こんにちは 相模女子大学の松下です。最近、研究会のほうは、難しい議論が多いので、失礼しています。

 さて、附属機関の条例設置についてですが、実務家の方々が、松江地裁判決に批判的なことに、不思議な感じがしています(待っていたぞというコメントかと思いました)。

1. 言うまでもありませんが、日本の地方自治は二元代表制です。首長も議会もとも  に住民によって選挙され、ともに民主的な存在です。その首長と議会が、互いに民意を反映した政策提案を行うことで、その政策競争を通して市民の幸せを実現していく仕組みです。もし、地方自治が議院内閣制を採用していれば、条例による行政の統制は自然のことですが、この二元代表制のもとでは、首長と議会は対等なので、条例による行政への関与は、限定的になります。

2. 二元代表制が有効に機能するには、お互いが、しっかりとした裏付けのある政策をつくって、ぶつけ合う必要があります。政策立案過程では、その裏付けをつくるために、さまざまな調査を行いますが、市民参加の懇話会等も、そのひとつです。私も、横浜市に勤めていた時には、民意の代表である市長の補助機関の一員として、もう一方の民意の体現者である議会には負けない政策をつくることに心がけました。

3. 二元代表制から考えると、138条の4③は、あまりに踏み込みすぎています。首長によってつくられた政策内容をみて、その是非を争えば足りるのに、設置段階から関与するのは、裏付けのある政策をつくるチャンスをみすみす摘み取ってしまうからです(これは市民の選択肢を狭め、市民の利益にはならないということです)。ここから、138条の4③を限定する解釈が考えられます。

4. 兼子先生は、一時的な組織は、138条の4③の例外としましたが、私は、懇話会等の審議内容で決すべきと考えています。たとえば、専門性、技術性が高く、議会がその是非を検討できないような内容の場合は、設置の段階(目的や人選等)で議会が議論するしかありません。他方、出雲市の自治基本条例のような場合は、議会が十分議論できるので、設置段階から縛りをかける必要はなく、内容で大いに議論すべきと考えています。その方が、自治がずっと豊かになります。

 政策法務は(この研究会も)、もともと市民の幸せな暮らしを実現するために、霞が関法務の枠を乗り越える試みとして始まったと考えています。


 この投稿の動機は最後の部分に書いたところで、自治体法務研究会が当初のダイナミズムを失っているように感じたためです。正直、残念に思っています。

 このテーマについては、何度も論文を書くぞと言って来ました。実際、資料はほぼ集めました。判例を変えようという意気込みだったのですが、その判例も出てしまって、いま一つ、踏ん張れません。
 言い訳をすると、平成25年度は、『協働が変える役所の仕事、自治の未来』、『熟議の民主主義』、『自治の旅』と3冊の本を書きました。暢気な本ですが、それでもエネルギーを使います。今は体系的な『現代自治体論』を書き始めています。でも言い訳ですね。
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