松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆広域連合から派生して・委員の条件など

2020-05-20 | 審議会の作法
 現在の関心事は、域外住民政策である。ひょんなことで、触発された。域外が生き甲斐に通じるというダジャレもあるが、地方自治体の3原則に対する挑戦で、これは面白い。だから、せっせと論文を書いている。

 その発端にひとつが、ある人から教えてもらった、ある市の広域連合に関する話題で、ここでは、広域連合にふさわしい議員とは何かが論点である。この議論の前提は、広域連合の役割は何か、そこに何を期待し、何を展望するのか、これが先に来る。

(1)これからの自治を切り開く新たな展開の可能性をそこに見れば、人柄や人格とは別に、突破力がある人を議員に選ぶことになる。
(2)広域連合には大して期待していないので充て職的に(法律上は充て職は禁止されている)人を当てるとなると、〇〇委員長を当て込むことになる。
(3)表面的なおつきあいとすると、みんなに好かれている人の良い人を選ぶことになる。

 それぞれの議会において、広域連合など広域組織に対して、どのようなスタンスで、対応しているのか、どれだけ真摯な議論がされているのかを知りたいが、そこまで手を広げる余力がない。

 広域連合に対するスタンスを制度から垣間見ることができる。これは広域連合の議員の給料を見てみると分かる。
 広域連合の議員が、構成団体の議員から推薦されて出てくるという現状のもとで、年間、いくらもらっているかのクイズである。これは沖縄県の後期高齢者医療広域連合の場合である。
(1)360万円
(2)36万円
(3)3万6千円

 普通は(1)かなと思うだろう。(2)では、学生のバイト代にもならない。しかし、正解は(3)である。沖縄県の場合は、特に安いようで、広島では4万3千円というのもあった。日額では、大阪府は1万3千円である。でも、こんなものである。要するに、非常勤特別職に準じているのだろう。

 議員が選挙で直接、選ばれるという仕組みならば(1)になるだろうが、直接選挙は、事実上の想定外である。その理由のひとつに、議員の給料でパンクしてしまうという事情もあるのかもしれない。

 ここから、出てくる議会から見た広域連合の位置づけは、充て職的な位置づけなのだろう。これでは、年数回集まって、既定の議事に多少質問して、賛成といって終わるのが、実態なのだろう。それでもよいという給料である。

 でも、本当に、これでよいのか。フルセットが厳しくなっている中で、ひとつの方向は、広域組織なので、これに各自治体がどう真剣に立ち向かっていくのかが問われている。コップの中の争いをしている場合でなく、こうした本格的な議論を、いま実際やらないと、間に合わないだろう。本当にじれったいが、いかんともしがたい。

 金額の多寡で、熱意が違うように書いたが、実際は、そうでもない。その例といえるのが、埼玉県の白岡市の行政評価委員会は、確か日額6800円(間違ったらごめん)くらいであるが、その熱量はすごい。

 年数回の委員会であるが、こんな風に行われている。
(1)委員全員(6名が)資料を事前に読んで、担当課に分からないこと、疑問なことを質問に出す。一昨年は、8事業もやった。
(2)行政の回答をもらいそれを読んで、まだ分からないことに再質問を出す。
(3)これらを踏まえて、今度は、テーマの行政評価に対する自分の意見を事前に出す。
(4)それをまとめたものを会議開催の数日前に、事前に各委員に配る。
(5)委員は、(4)の他の委員の意見を読んだうえで、委員会に臨む。これでようやく会議が始まることになる。だから、2時間の委員会では、事務局の説明は極めて短時間になり、ほとんどの時間が議論になる。ゆめゆめ、これはどういう意味かなどという時間の空費はない。(1)(2)(3)で疑問点は解決しているからである。
(6)委員会では全員が発言する。メリットは、ほかの人の意見も事前に読んでいるので、自分でも微修正したり、なるほどと思うので、方向転換し、合意ができやすいことである。ここが案外、キモである。合意が難しい理由のひとつが、相互の不理解だからだと思う。
(7)ペーパーで事前に出し、当日の議論にも負けないようにするので、みんな事前によく調べてくる。ほかのまちに調査に行ったなどという例もよくある。

 1回6800円(?)であるが、それでもできる。私なども、三浦半島から、片道2時間をかけて白岡に行っている(職員の人が、三浦半島に来たことがあるが、先生、随分、遠いのですねとあきれていた)。白岡市は絶対、得をしていると思う。

 でも、なぜやるか。メンバーは、みんな、普通のまちの人である。たいていが、リタイアしたサラリーマンなのだろう。おそらく、現役時代は、活躍していたのだろう。力を持っている。
 ルソーも、オルソンも、熟議の民主主義を乗り越える条件を出しているが、私の条件は、少し違う。要するに「面白いと思う」からである。リタイアした後で、ひさしぶりに、出番が来たと感じているのではないか(これが面白いの意味)。

 私だって、面白い。誰もやったことのない闊達な附属機関ができるからである。「ほら、できるじゃないか」(自慢げ)。私は、ちょっと力を出し、市民委員も力を出す。それだけで、2倍のパワーになっていく。これが日本には1億人いるのである。2億人のパワーになる。1億総活躍は、本来は、これだと思う。それを自民党は、頭越しにやろうとする。これでは、だれも活躍しようという気にならない。ぜんぜん分かっていない。

 あらためて、なぜ面白いか考えてみよう。
(1)一人ひとりが期待されていること。自分一人の意見でも、いい意見なら、みんなの意見になる。これは小気味のよいことではないか。
(2)必ず、意見を言う出番があり、話したことがキチンの取り上げれること。全員発言は、私はどの会議でも前提である。
(3)自分の意見に固守せず、いいと思ったら、それに乗っかれる雰囲気があること。サラリーマンとして、この辺りは、鍛えられているのだろう。
(4)事務局との信頼関係ができていること。委員会の議論が違うと、行政職員も発言する。何か、言いたそうだと、私も「何か言いたそうだね」と水を向ける。
(5)少人数であること。これはルソーとおなじ。議論は6人位がちょうどよい。
(6)会議では、笑い声や冗談が時々出ること。「これは議事録カット」といって、私はいつも不規則発言をする。不規則発言の内容は、覚えていないが、夕飯に食べたおかずのような話を唐突にする。別の会議であるが、「早く言ってよ」などとCMをもじった冗談を言う。チコちゃんもときどき出る。 
(7)いい意見を出そうという参加者間で、いい競争があること。
(8)傍聴者がたくさんいること。観客が多いと、みんな燃える。市民のオープン化のメリットである。行政評価委員会に、定員以上の傍聴者がくる。

 ここから、広域連合の委員の適性は、(1)から(8)の会議を許容でき、それをリードできる人がふさわしいというのが、現時点での私の意見になるのだろう。
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