松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆地方自治論7・住民だけで自治ができるか(相模大野)

2014-05-27 | 1.研究活動
 地方自治論の7回目は、住民を考えた。話は、大震災から白川郷まで及んだ。

 地方自治の基本要素は住民である。住民とは、住所を有する者であって、住所とは、そこに住んでいるという客観的事実と主観的要素を総合して判断する。地方自治法は、この住民について、直接請求権等を規定している。

 今回の問題意識は、住民だけで自治ができるかである。
 自治基本条例の検討のなかで、それに反対する人が会議に押しかけてくることがある。その主張のひとつが、住民についてである。地方自治法に権利の主体は、住民と書いてあるので、住民以外を参加させるような制度はおかしいという主張である。よそ者にとやかく言われるのはおかしいという主張である。

 地方自治は、暮らしそのものなので、課題は、日々の生活に引き戻して考える必要がある。
 
 まず、私たちが生活の本拠にいる時間は、どれくらいあるだろうか。私の場合は、今年は、三浦半島にいる時間は比較的長いが、それでも授業や講演等で出かけることも多い。結局、住所は、寝るときと、たまの休みのとき、という人が随分いるだろう。

 この前の3.11の時は、みなさんは、どこにいたのだろうか。私は、たまたま家にいた。遅い食事を終えて、連れ合いとビデオを見ていたのである。アウシュビッツの記録を見ながら、暗い気分になっているときに、大地震が起こって、さらに不安が増幅したことをよく覚えている。

 もし、私の住んでいる地域で大きな被害が出たら、どうするのか。近くの事務所や工場に働きに来ている人たちが、応援してくれたら、どんなに心強いか。これらの人は「住民」ではないが、住民でないからと言って、この人たちを排除したら、私たちの平穏な暮らしは守れない。

 「市民」概念は、いわゆる住民に加えて、こうした在勤、在学の人を包摂する概念である。これらの人を含めた参加や協働の仕組みをつくらないと、地方自治はできない。

 ある町で、自治基本条例を検討しているときに、「住民以外の人に参加や協働を認めるのはおかしい」という人たちに囲まれたことがあった。よそ者に、とやかく言われる仕組みはおかしいというのである。その言いたいところは、理解できないわけはない。
 私は、「ところで皆さんはどこから来ているのですか」と聞いた。「私は隣の○○市」、「県外の○○市」・・・。虚を突かれた私はしばし沈黙することになった。
 
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