松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆地方自治論6・憲法に地方自治は何と書かれているのか(相模大野)

2014-05-20 | 1.研究活動
 地方自治論の6回目は、憲法と地方自治を考えた。

 憲法第8章には地方自治の規定がある。日本国憲法における地方自治を論ずる場合、普通は、第8章にある92条から95条の4条を考えるが、この授業では、より基本にさかのぼって、憲法における地方自治の位置づけを考えることにした。

 憲法のもっとも重要な基本規定は、第13条である。13条には、「すべて国民は、個人として尊重される」と規定されている。ここが憲法の出発点となる。この「国民一人ひとりを尊重する」ことのために憲法の諸規定がある。

 国民を尊重するために、第3章で基本的人権の規定が置かれる。国家が国民の思想信条に踏み込み(19条)、あるいは表現の自由を奪うこと(21条)を憲法で禁止することで、個人の尊重を確保しようとするのである。

 そして、この基本的人権を守るために、統治機構が定められる。第4章国会以下の規定である。第8章の地方自治も、この統治機構のひとつである。地方自治の制度も、究極的には、個人を尊重するための仕組みのひとつということになる。

 ちなみに個人の尊重とは、一人ひとりが人として等しく価値があるということである。その価値を尊重し、その良さを大いに発揮するなかで、個人が切磋琢磨するなかで、よいよい社会を創っていくというものである。

 ここから考えていくと、地方自治のあり方が、見えてくる。少なくとも、地方自治をお役所や議会だけでやっていこうとする現行の地方自治法の仕組みは、憲法の理念とはずれていると言わざるをえないだろう。市民も自治の主体として、自治を担っていくことが、憲法が予定している地方自治の姿ということになる。

 ここまでは明快であるが、地方公共団体とは何を示した最高裁判決を説明しはじめるとやや切れ味が悪くなった。この判決では、共同体意識と自治体にふさわしい権能を備えているのが地方公共団体であるとするが、共同体意識を言い立てれば、合併によってできた町は、共同体意識があるとはいえないだろう。地方から来た学生たちは、県民意識がとても強いが、これでは、県を廃止して道州制を導入したら、彼女らの意識を基準にすれば憲法違反である。なお、もうひとつの法律で権能を与えられているからという基準は、本末転倒で、説明にならない。

 私の弱みは、このようにそれぞれの説を批判はできるが、では地方公共団体の基準は何なのか、その基準をきちんと示せないことである(これは、どのテキストを読んでもはっきりしない)。桂文楽ではないが、「勉強して出直してくる」といって高座をおりることになってしまった。
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