松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆大いに語る(中華街)

2015-10-10 | 地方自治法と地方自治のはざまで

 米子市からYさんがやってきた。研修で東京に来たという。久しぶりの再会で、大いに語った。

 『自治の旅』(萌書房)では、最も力が入った記述は、米子市の部分である。タイトルも「自治の文化をつくる」になっている。私は、自治基本条例は、自治の文化をつくるものであると言っているが、その起源は、おそらく米子からだと思う。その分、米子ではエピソード満載で、書ききれないくらいの思い出がある。Kさん、メグちゃん、和尚さんといった登場人物が、この本に出てくるが、本に書いたのは、ほんの一部である。今回、横浜にやってきたYさんに関する記述は、こんな内容である。

 米子市では、書いているそばから、いろいろなエピソードを思い出す。いつもにぎやかな宴席。ひとり一人が、いきいきと自治を論じ、仕事を談じ、まちの未来を論じる。米子市に行くと、Yさんたちは、私のことを先生とおだてて、いろいろと気を使ってくれるが、実は私の方こそYさんたちから、たくさんのことを教わった。

 あるとき、大阪だったと思うが飲んでいる席で、Yさんたちから、「自治基本条例といえば、当時どこもニセコ町型で、行政を統制することが住民自治であるとされていたなかで、松下さんは、当初から市民一人ひとりを尊重し、市民が自ら考え、行動することこそが住民自治で、自治基本条例はそういう条例であるべきだと言っていたが、それがすごかった」とぽろっと言われたことがあった。

 それを言われて、私は目の前がパアーと明るくなったことを覚えている。酒のせいではない。ネオンのせいでもない。自分ではもやもやして、うまく整理できなかったことをYさんたちは、自分たちの仕事の中で整理し、消化してしまったことに驚かされたからである。自治の現場で私も大いに鍛えられ、育てられた。

 今回も、中華街のなじみの店で、人生を論じ、自治を論じた。別れた後で、Yさんから、「深いところで分かり合える会話は本当にいいものですね」といったメールがきたが、とてもいい時間を過ごすことができた。

 聞くと、一緒に苦労したKさんが、この3月で退職という。Kさんと言えば、『自治の旅』に次のようなエピソードを書いた。

 Kさんは、自治基本条例の担当係長兼劇作家である。協働まちづくりのイベントがあると、すぐに芝居をつくり幕間にはさむ。その劇の概要は次のとおりである。

 茶髪の兄ちゃんたちが、公園にたむろし、飲んだ缶をポイ捨てしてしまう。この捨てられた缶をおじさんが片付けている(これを演じるのが協働推進課の課長)。おばあさんが、「なぜ片付けているのか」と聞くと、おじさんは答える。「この公園が好きなので、たくさんの人に来てもらいたいから片付けているんだよ」。それを聞いた、おばあさんが、兄ちゃんたちに話をする。兄ちゃんたちは、一見こわそうであるが、意外と心がやさしい。「そうか、俺たち、迷惑をかけているんだ」と気がついて、一緒に公園をきれいにし始める。その輪が広がって、みんなで公園をきれいにするという劇である。

 そして、最後にみんなで歌を歌う。おばあちゃんは三味線しか弾けない。和尚さんは、お経と木魚、給食のおばちゃんは、しゃもじしか叩けない。白い犬が登場するが、犬は「うおーん」としか吠えることができない。しかし、それぞれが、自分ができるところを一生懸命にやると、一つの歌になるという劇である。こうした劇をつくって、「協働とは何か」を市民に分かりやすく発信する。

 米子と言えば、にぎやかな宴席である。夜が更けることを知らず、大いに飲み、大いに語る。Kさんの退職祝いの会には、私も参加することになった。この日は、絶対に講演や研修の予定を入れず、米子に駆けつけることにしよう。

 

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