神奈川県下自治体職員による研究会である。ここでは市町村から県への逆委譲を考えている。
そのヒントとなるのが、西尾私案である。これは、2002年11月に地方制度調査会専門小委員会において西尾勝副会長(国際基督教大学教授)が示した自治体のあり方や機能に関する討議資料である。刺激的な問題提起になっているが、本研究会の議論では、小規模団体を対象とする事務配分特例方式が関係する。
事務配分特例方式とは、一定の人口規模未満の団体について、これまでの町村制度とは異なる特例的な制度を創設するものである。こうした小規模団体は、法令による義務付けのない自治事務と窓口サービス等の事務の一部を処理するものとする。残った他の事務については都道府県に処理を義務づけるものである(ただ、都道府県は、その事務を近隣の基礎的自治体に委託するか、広域連合により処理するか、直轄で処理するかを選択できるとする)。
これに対して、当時の町村議長会は「自治体の処理する事務の多くは法律によって義務付けられていることを考えると、まことに形だけの自治体を認めようとするものに過ぎず、到底受け入れることのできるものではない」と反発している。
その理由は、次の通りである。
・地域にかかわることは、身近な行政主体である市町村が行うべきであり、都道府県や他の市町村が行うことは、住民の声が届きにくくなり、地域の実情に合った個性豊かな施策が展開できなくなる。
・地方分権の大きなテーマが、住民に密接なかかわりあいのある事務は、できるだけ住民に最も身近な行政主体である市町村に権限を移譲して、行わせるということであるのならば、都道府県に補完させるという「私案」は、この流れに逆行したものである。
・都道府県が市町村の事務を補完して行うことは、広域自治体としての都道府県の性格を曖昧にし、また直接処理を行おうとする場合、出先機関を整備しなければならないことも考えられ、行政改革の理念にも反する。
・都道府県が直接処理をせず、他の基礎的自治体に委託する場合、事務を処理してもらう市町村は属地扱いを受けるという感じを持つようになろうし、責任の所在が不明瞭になり、住民の意向が行政に反映されにくくなる。
いきなり小規模自治体は、一人前ではないといわれて、反発したのは無理もないと思うが、ここでの反論は、建前的に過ぎるように思う。今日では、状況はさらに厳しくなっているなかで、西尾私案を積極的に見直してみようというのが、この研究会の趣旨である。
なお、この日はメンバー全員で大船で暑気払い。大いに語った。この日は、ちょうど鎌倉の花火大会の日で、帰りの横須賀線から花火が見えた。