『足軽!!』
コケシから蛇へとアップグレード? した存在をおばあちゃんが取り込んでる時、野々野足軽には自分を呼ぶ声が聞こえた。なんでもない所で振り返った足軽。そんな足軽に不思議そうに声がかかる。
「どしたんですか?」
まるで京都弁みたいなイントネーションで野々野足軽に声をかけたのは片方の角が折れてる長い和服に身を包んだ女の子だ。足軽と彼女は空を飛んでるから彼女の自身の倍以上もあるような和服がひらひらとしきれいである。それに彼女の髪の毛はなんかひかってて、毛先からは粒子かキラキラと放たれてる。彼女は整った顔をしてるが、どうやらただの人ではないようだ。なにせその肌の色は紫色をしてる。そして額の角に、輝く髪の毛はどう考えても普通ではない。
「なんか呼ばれたような?」
「はあ、なんですか? どこかの女にまた呼ばれたんですか?」
「なんだよその言い方。それに女かどうかなんて……」
「何を言ってますのやら」
そういってくるっと空中で回って、並走してた彼女が野々野足軽の上へと位置を移動する。そしてそっと足軽の顔を両側から掴むと、無理矢理自身の方に向かせた。
「なんぼでも……何人も魅了しておいて、それはないやろ?」
「魅了って、俺が何をしたっていうんだよ」
「御冗談を」
「おま――危ない!」
キィィィィィィィィィィィン!! と細長い光が飛んできた。それを足軽はふせぐ。
「あらら、もうポイントでしたね。全く無粋な奴らやね」
そういう彼女の視線の先。そこに何かが広がっていく。空に墨汁が垂らされたみたいに最初は小さなシミだった。それが空に染みるように広がっていって、沢山の硬そうな体の馬がでてくる。だいたいが茶色で統一された形をしてる馬たちの中に、白く、そして鎧を着た騎士がいる。そいつは自身の体よりも大きな槍を持ってる。白い螺旋の槍。
「なんとまぁ、大当たりですなぁ。『さ』が出ておりますへ』
「強い奴が来て、喜ぶなよ……」
「なんや? なに、問題ない……やろ?」
そんな事をいってくる彼女。そして騎士の兜の奥の目が青く光る。それと同時に一斉に襲い掛かってきた。
「ええ、もう終わってもうた。嘘やない。そっちこそわかってとるやろ? 勝どきやよ」
空は静かになってた。黒いシミは既にサッカーボール並みに小さくなってる。そして……足軽の手には騎士の兜と、そして反対側には騎士か持ってた槍を手にしてる。戦闘はあった。けど足軽は涼しげだ。そして彼には傷は一つない。いや、埃一つ、汚れ一つついてない。彼女はどこかと通信してる。目の前には人型におられた紙? その紙には何か書かれてる。
そしてそんな彼女が野々野足軽へと催促してくる。
「ほらほら」
「はぁー」
いやそうだったが、足軽はその手に持ってる兜を掲げてる。それは遠くの人たちを歓喜にふるわせることだったのだ。