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ある日、超能力が目覚めた件 387P

2024-02-19 20:31:38 | 日記
「ごめん――」
 
 そんな事を呟いた野々野足軽は再びドラゴンへと攻撃をする。突っ込んでくるドラゴンに合わせての攻撃。太い腕を作って殴る。ドラゴンの鱗へと入る亀裂。野々野足軽はすかさずそこに癒やしの力を流し込む。なにせ殴った瞬間に『痛い痛い』と風の少女が叫んでる。その叫びが激しくなればなるほどにドラゴンは強くなってしまうんだ。ただ攻撃するだけではだめ……だから癒やす。けどその癒やしはこのドラゴンへ対してじゃない。
 
「届け!!」
 
 野々野足軽が癒やすのは今さっきぶっ壊したドラゴンの体じゃないんだ。その奥にいる絶望に沈んでしまった風の少女、その子だ。だからこそ流し込んだ癒やしの力を奥へ奥へと送る。届かせるために。でも……
 
「くっそ……」
 
 消えた。いや、食われた。中へと流し込んだこっちの力が風の少女へと届く前にドラゴンへと吸収された。体内に無理矢理押し込んでるんだからそうなるか。そもそもが力的にはドラゴンの方が大きいんだ。だからきっとただ力を流し込んでも、奥まで行く前に塗りつぶされてしまうんだろう。途中で完全に野々野足軽の制御を外れて、力を感じれなくなった。
 
 けど野々野足軽は諦めない。何度だってやってやる――その気概だ。殴っては送り込んで、蹴っては送り込む。何度も試行錯誤を繰り返す。力の密度を高めたり、速さを出してみたりだ。でも風の少女まで届かない。いや、なんとなく野々野足軽には見えてる。風の少女は確かにドラゴンの中にいる。ただ絶望という殻に閉じこもってしまってる。それもドラゴンの一番奥の場所で。
 そしてこっちの癒やしは届いてないわけで、何回も傷つけてるせいで、ドンドンと風の少女は意固地になってる。今のところ結果は不利に働いてる。それに……
 
「なっ!?」
 
 これまでの様に風のように速いドラゴンを力の巨人の腕で攻撃をしようとした。今までなら、直線的にやってくるドラゴンをぶっ叩くのは見えるようになった時点で簡単だった。慣れたとも言える。だったのに……今の瞬間、ドラゴンは対応してきた。なんと目の前にいたドラゴンが消えた。それはまるで風のようだった。風のようにまるで竜巻が解かれるようにその姿が霧散してそしてすぐ横にその風がゴウ!――と流れる。そして流れた風は再び結ばれてドラゴンの形を形作って食われた。
 
「完全に風になって回避してるのか……」
 
 厄介な……と野々野足軽はつぶやく。確かに元が風の少女がこのドラゴンだ。だから最初はそれこそ風なら攻撃とか通るのか? と思ったときもあった。けど普通に通ってたから、そこら辺は気にしてなかった野々野足軽だ。けどここで通らない様になった。ドラゴンは自身を完全に風へと戻すことで攻撃を回避して、任意の場所に再び集めて元に戻ることができるようだ。
 でも攻略法はある。すぐに野々野足軽はそれを思いつく。だから焦りはしない。厄介だけど……でもまだ……再びの攻撃。また直前でドラゴンは風になった。そして今度は上の方に現れた。けどこっちも用意してた。再びドラゴンへと戻った瞬間、こっちも隠してた別の腕で現れたドラゴンへと攻撃をする。


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