春休み・・・・と将棋？

学生時代　休みが来れば 岩国に帰省するのも楽しみの一つだった。

　

当時は列車も急行「安芸」だったと思うが定かでない。

仲間とよく車内で時間つぶしと退屈しのぎ等で将棋をしたものだ。

ところが我輩は大体それを横から見ているだけであった。

何故って彼たちとは勝負にならなかったのだ。

時に指すこともあったが大体　我輩が角か飛車を落としてやっていた。

時には両駒も落とすこともあったが流石に友人も、それは人前ではやらなかった。

あるとき我輩が車内で将棋を指していると横に立っているオジさんが我輩の指す手を見て

「それはダメダ！ダメだ！」と口を出し、終いには折りたたみの将棋盤に

「ここだよ。ここに・・・」と指を指す始末になった。

「ここに銀だよ」と言う。

それがいい手なら好いが全く目先の手で、そんな手を打つわけに行かないが、あまりに五月蝿いのでその通りにやり遂に我輩が負けた。

「ああ～ァ負けちゃった」とそのオジさんは嘆いた。

「よし　わしが敵を取ってやる。わしとやろう」と我輩に立てという。

それもいいか？

「やってみな・・・」と友人に言う。そして・・・

「手早く片付けてな・・」と、誰にともなく言って我輩は立ち上がった。

勝負が始まったが、あっと言う間にそのオジさんは友人に負ける。

「こんな筈ではなかったが？」とオジさんは首を振り振り呟きながら

「もう 一丁やろう」かなり熱くなったようだった。

続けて、またもやそのオジさんは ころっと負けた。

友人が

「オジさんね～ェ　さっき わしとやっていた将棋はねェ～角を落としてやっていたんだよ」

オジさんがびっくりして我輩をみた。

「なに！　あの将棋は角落ち将棋だったのか？」

「そうだよ 今頃　気がついくようではダメだね～」と友人が言うと

オジさんは我輩を見て

「キミの友達は勉強しないで将棋ばかりやっているようだな？」と憎まれ口を言う。

それを聞いた友人が

「オジさん　オジさん角を落としていたのは、わしでなくコイツだよ」と友人が我輩を指さした。

「なに・・」オジさんは我輩を見て絶句したようだ。

「近頃の学生は・・・」と、なにやら呟きながら席を立ち何処かに行った。

友人は知らないオジさんに軽く三連勝して、いい気分になったらしい。

我輩ともやろうとは言わなかった。

彼も将棋はかなり強かった。

広島までは長い・・・・。

現場勤務の時に所長が将棋が好きで何時も所員のＡさんと昼休みには将棋をしていた。

一度　横から少し見て直ぐに席に戻り本を読んでいた。

ある日 その所員が病気で休んだ。そこで所長が我輩に

「君　将棋は知っているか？」と聞かれた。

「ええ　少しだけですが・・・」

「よし　此処に来い」と将棋が始まったが、所長の手は大体いつもと同じ手である。

簡単に詰ました。

短気な所長は余りに関単に詰まされて

「おい　もうお前とは二度とやらないぞ」

「お前は少しは手加減を知らないとダメだ」と文句を言われたが・・。

それ以後　所長が我輩に仕事を教えることが多くなった。

その所長の元で数年一緒に仕事をさせて貰った。

普通は一現場が終わると別の現場に配属されるのだが？

建築士の資格もその現場に居る時に取得した。

その所長から離れたときに会社の特殊工事に配属され、しかも副所長としてだった。

将棋にまつわる思い出である。

今は歳を取った所為か？見落としが多い。

パソコンに負けてばかりである。

大きな声で「あッ」と叫ぶことが多い。そして負ける。

半世紀以上も前の春休みや夏休み、や、そして就職してからの仕事の合間の将棋の思い出である。

会社には驚くほど強い方が居られた。構造設計のＩさんだった。

我輩がいとも簡単に負かされた。初めての経験だった。

その方が将棋を指す姿は社内では見たことが無かったが・・・。

我輩と将棋を指したのは多分　当時の現場所長がうち（現場）にも変な奴がいると言ったのではないかと思っている。

今の実力は５～６級くらいかな？