W杯 から バルセロナショック へ ??!
日本経済新聞の
大晦日の社説のタイトルは、「危うさ抱えて越年する世界経済と市場」
元旦の1面のタイトルは、「先例なき時代に立つ……外で作り、内で創る」でした。
その日経新聞の年末の記事の中で、最も興味深かったのは、
12月29日、30日に連載された
サッカ-ワ-ルドカップ日本代表監督 岡田武史 へのインタビュ-です。
(武智孝徳 編集委員 による)
その内容を紹介させていただき、新年の課題を考えてみたいと思います。
ベスト16へ、チ-ムの再編成は、どう実現したか?
日本中を熱狂させた南アフリカのサッカ-W杯日本代表チ-ム
直前の壮行試合の苦戦で、チ-ムはどん底の状態に見えました。
このチ-ムから
(調子を落としていた)中村俊輔、楢崎ら、それまでの主軸を外し、
本田の1トップ登用など、チ-ムに大胆に手を入れて
決勝ト-ナメントに進んでいく 岡田ジャパン ですが
岡田氏は、直前で行われたチ-ムの再編成について、
思いつき や ギャンブル でしたことではないとして、
W杯の予選突破へチ-ムを導いたものについて、次のように述べています。
第一に、
メンバ-の人選にあたり、私心なき一体のチ-ムづくりをしたこと。
このことが、トップからチ-ムの末端にまで浸透し、
5月24日の韓国との壮行試合の敗北を踏まえて行われたチ-ムの再編成の決断が
個人的な感情とか、不純なものが何もなく行われたことについて
チ-ムに間違いのない理解があったこと。
結果、中村俊輔、楢崎、川口らの控えに回った選手が、
レギユラ-メンバ-をフォロ-し、鼓舞し続けたことにより、
チ-ムの一体感が、より強固になったこと。
一方、チ-ムの能力強化としては、
体幹トレ-ニングを続けることにより、
一対一で競い負け、当たり負けしない能力をつちかい、
トップチ-ムと競い負けしないことを実感するところまで、引き上げるとともに
指導方法を、
選手という器に何かを詰め込むことから、選手の能力を引き出すことに変更
指示を守らせることで結果を出すのではなく、
自分で判断してスム-ズに動き、自分でリスクをとって行動しする習慣を
選手に身につけさせた。
こうした準備によって、
合理的判断 が チ-ムの一体化を深め
指揮と選手が深い部分でつながっていると実感できるチ-ムを実現することができた。
新しい高みへ! バルセロナショックとは?
この岡田氏をショックに陥れたのは、
退任後にテレビの解説を務めた FCバルセロナとリアル・マドリ-ドの一戦です。
岡田氏は、レアルを5対0で粉砕したバルサの余りの強さに現地で言葉を失い
これを「バルセロナショック」と呼びます。
変数が多く「勝利の方程式」が成り立ちにくいサッカ-ゲ-ム
これまでのサッカ-チ-ムは、
この複雑系のゲ-ムを安定させるためにセオリ-(定石)をつくり、
このセオリ-(定石)に基づいて、チ-ムの能力を磨いてきました。
ところが、バルセロナは、このセオリ-(定石)そのものを超え
「自分たちのサッカ-はこうだ」というクラブとしての全体設計を優先させ
この力で、リアル・マドリ-ドを粉砕したといいます。
一つ一つの部分に目を向けて、それらをすべて良くして、束ねたら
理想の方向に、全体として向かうとかというと、そうとは限らない。
これからの日本のサッカ-は、
先に全体としてどこにいくかを定めないと、どこにも進めないのかもしれない。
「サッカ-が変わろうとしている」……バルサ発の大きなうねりの中で
岡田氏が感じているのは、上記のことであるといいます。
私心なき一体のチ-ム形成 と このチ-ムを勝利の導く着実な準備ができて、
初めて、
変数が多い複雑系のスポ-ツを自由にコントロ-ルする全体設計が見えてくる……
ということでしょうか?
編集委員の 武智孝徳 氏は、
各論にとらわれることなく、組織を前進させる総論、理念の必要性……
と、総括しています。
社会の前線で、活躍する人のなかに、
次の時代が要求するものが、実感として見え始めていくことを
理解することができます。
複雑系のゲ-ムを闘う 人づくり へ 総結集を!
12月29日のコラム「2011年 日本と世界」では
iPS細胞を、世界で初めて開発した京都大学教授 山中伸弥 氏が、
知財競争の課題について、
「人づくりへ総結集を」のタイトルで、同様のことを述べています。
科学技術予算、研究者数、論文数のいずれも米国の10分の1のわが国
わが国が研究開発競争に打ち勝つためには、
サイエンスの基盤となる技術や評価方法等、一番大切なところを押さえることが必須。
科学論文の発表競争をラグビ-に例えるならば、
知的財産の競争は、複雑系のアメリカンフットボール
(同じようなボ-ルを使うが、
アメフトは前に投げていいし、ボ-ルを持っていない人にタックルしてもいい。)
研究者だけではなく、
知財や広報の専門家、高度な技術をもつ研究支援者を育成することが必須。
国の予算だけではなく、民間の寄付を結集するとともに
研究者が、一般の人に解る言葉で説明して、社会的地位を高め
目先の成果にとらわれずに、高度な課題に取り組む研究者を育成していくとともに
よく努力して、よく働き、手を動かしてコツコツ取り組む
お互いを思いやる気持ちが強いという日本人の美質を取り戻すことによって
自信を回復し、リ-ダ-シップが、明確に行使されることが問われる。
わが国の生命線と言える科学技術、研究開発もまた
アメフトのような複雑系のゲ-ムであり
これを総力を挙げて闘うメンタリティ-と(支援)体制、人材育成が要求されています。
社会の現状を直視し、自己変革から次の一歩を!
さて、大変、困難な環境にあるわが国
2011年は、
わが国にとって、「現状の延長での改革を考えられる最後の年」との指摘があります。
すなわち
激しい破壊や社会の分断を伴わない形で、改革を考えられる最後の年
この年を、無為に過ごすと、様々な改革が自動的にハードランディングになってしまう年
という意味です。
野球 から サッカ- へ
ラグビ- から アメフト へという 複雑系のゲ-ム
けれども、
私たちを導く基本的考え方は「天は自ら助くる者を助く」です。
私たちの社会の現状を直視し、硬直している問題設定を丁寧に解きほぐし
自己変革から一歩を踏み出すことでしょう。