谷中で古着の着物屋を営む女性と、妻子のある男性のお話。
帯に「美味しいものを、一緒に食べたい、ひとがいます。」とあるように、実在するお総菜屋さんやレストラン、居酒屋がたくさん出てきます。
私は谷中の近くで育ったけれど、ミーハーではないので、ベタな洋食屋さんとか行ったことのない場所ばかり出てくるんだろうなと思っていたら、軒並み知っていて笑った。
ベタって、正当なのね。
馬肉の「中江」とか洋食「香味屋」とか、思い出が噴出してしまう。
「焼きかりんとう」は今年の初めに制覇したばかり。
イチゴシャンデだけは聞いたことはあるけど食べたことがないので、今度食べてみたいな。
着物の描写も美しくて、柚子の柄の帯なんてなんてきれいなんだろう、大学の卒業式に来たレンガ色の紋付に合うんじゃないだろうか、是非締めてみたいと思った。
着物なんて着ないのにね。
不倫の関係を描いている話なのに、男性の方から妻子の香りがあまりしない。
でも、そういうものなのかも。
だって、家庭と家庭の外での恋愛なんて別のものだもんね。
ラストは、結局そういうことなんだね、という感じでした。
なんだか悲しくなった。
この本は友人が貸してくれたもので、彼氏と別れたばかりの友人はラストで泣いたと言ったけれど、私は主人公の家族との描写の方がよっぽど泣けた。
これは悩んでいる事の違いに依るものだろう。
文体は好きだし、ストーリーも好き。
三浦しをんのような品格を感じる。
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