力強く怒りの吐口を得るより、悲しみのうちに、あれは酷かったですと正直に弱々しく見えてる方が、人としてはしては真っ当かも知れない。
勇しくあっては、人の耳に馴染む声にならない。
割り込むみたいに、がなり立ててしまう。
「アメリカがあのタイミングで原爆投下して、どれだけ破壊力があるかを世界中に知らしめられたことで、冷戦中の核兵器使用が防がれた。世界の滅亡を避けられたじゃないか。大体、日本は被害者なのか。ユダヤ人大虐殺をしたドイツと連盟を組んで、他のアジアの国にもひどいことをしたじゃないか。それでいて第二次世界大戦といったら原爆投下の被害ばかり語るのっておかしくない? そもそも戦争中っていろんな国がめちゃくちゃひどいことをしたわけだから、日本が、日本が、って核兵器についてばかり言うのはおかしいと思う」
「日本が他国にした酷いことはもっと語られなければならない。戦時中、日本国政府が日本国民に発したメッセージの問題に対しても、もっと学ばなければいけないことはたくさんある。日本国政府が当時、国際政治の中でよくない判断を下したことも間違いない」さらに続けてこう言いました。
「でも、それでも私は、日本から『Never Again(二度と繰り返さない)』というメッセージは発し続けなければならないと思う。」
世界の報道機関は広島への原爆投下を一斉に報じた。8月25日、アメリカのニューヨーク・タイムズは、こう報道した。「ラジオ東京は伝える。ヒロシマは死者の行列であふれ、生き残った人々も死を待つばかりである。原爆の放射能で、3万人が死亡。放射線によるやけどでいまも死者が増え続けている。放射能は無数の犠牲者を生み、救援にかけつけた人までもが様々な病気に苦しめられている。ヒロシマは死の町と化した」この記事がきっかけとなって、世界中の新聞社が原爆投下に批判の目を向け始めた。イギリスのデイリー・エクスプレスは、「ヒロシマでは原爆が落ちた30日後にも人が死んでいる。それは『原爆の疫病』としか表現できない」と論じ、中国の解放日報(共産党機関紙)は、「原爆で平和を勝ちとることはできない」とアメリカを非難した。
ワシントン・ポストには、コロンビア大学の遺伝学者ハロルド・ジェイコブソンの、次のような主張が載せられた。
「広島に投下された原子爆弾の被害の程度を確かめようとする日本人の試みは、自殺行為である。その結果、血液中の赤血球が破壊され、酸素を取り込むことができなくなり、白血病の患者と同じように死亡することになる。
また、原爆の放射線は約70年間消えないという実験結果もあり、もしそうだとしたら被爆地は、月と同じような荒廃した地域となる。さらに、降り注ぐ雨はこの致死量の放射線を拾い上げ、川や海に運び、その川や海に棲む動物たちは死んでしまう」
翌日のニューヨーク・タイムズに、「陸軍はジェイコブソン博士の説を否定」との見出しで、オッペンハイマー博士の長い論説を掲載させたのである。
「ヒロシマの地面に、はっきり認められるほどの放射線は存在せず、わずかに存在していた放射能もごく短時間に減衰したと信じるべき確かな理由がある」その後ジェイコブソンは、数時間にわたり自宅でFBIと陸軍情報部隊の尋問を受けた。そして政府の秘密保持規則に違反するスパイ活動法により訴追すると脅され、発言を撤回した。
1945年8月9日、米キリスト教会連盟は、「トルーマン大統領閣下、多くのキリスト教徒は日本の都市への原爆投下に深く心を痛めております。それは不必要な無差別破壊行為であるからです。これは人類の将来にとって極めて危険な前例であり、日本国民には新型爆弾に関する事実を確認し、降伏条件を受け入れるのに十分な機会と時間が与えられるべきです」と非難する抗議電報をトルーマンに打った。8月9日付電報でトルーマンは、「けだものと接するときはそれをけだものとして扱わなければなりません」と返信したが、彼はそのとき、自身がけだものになっていたのかもしれない。
真珠湾を攻撃した「輩」に懲罰を下したかったのである。真珠湾攻撃がトルーマンの復讐心を掻かき立てたのは、それが道徳的に許されないものだったとか、米艦隊が壊滅してしまったからというよりも、自分たちより劣っているはずの日本人がそれに成功したからである。若い頃トルーマンは、のちに妻となる女性ベスに送った手紙にこんなことを書いている。
「おじのウィルは、神は白砂で白人を造り、泥で黒人を造り、残ったものを投げたら、それが黄色人種になったといいます。おじはジャップが嫌いです。私も嫌いです。多分、人種的偏見なんでしょう。でも、私は黒人はアフリカに、黄色人種はアジアに、白人はヨーロッパとアメリカに暮らすべきだという意見を強く持っています」トルーマンのとんでもない人種偏見が、欧米人の闊歩してきた世界・歴史に少し見直しが必要だと教えてくれているような気がする。