二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

いつもの昼下がり-Ⅲ (ヴァルハラの乙女たち)

2011-06-11 22:42:44 | 習作SS

ロンドン。

西の海を支配する海洋帝国の首都で、そのせいかミーナの祖国と違い海に近い。
古くは大国ヒスパニアの無敵艦隊を打ち破って以来、オランダ、ポルトガル等の欧州のライバルを打ち破ってきた。

海洋を支配することはすなわち貿易の富を独占するに等しい。
海上貿易がもたらす富は自給自足の経済よりも大きく、また陸上の貿易よりも規模が大きく見返りが大きく。
市場である植民地を世界各地に建設することで、経済の優位性を築き、世界帝国としての地位を実現させた。

無論、西洋文明の走りである偉大なる帝国、ローマと同じく衰退は免れなかった。
現在こそかつての植民地人であるリベリオンの追い上げが激しく、帝国としての地位が揺らいでいる。

だが、無邪気な大衆は未だに扶桑皇国とならぶ世界帝国としての誇りを抱いている。
それは現在という時間軸なら正しいが、将来と現状を予測できる人間、選ばれたエリート達の見解は違った。
ことに、部隊長のミーナだけでなく、ロンドンのカールスラント大使館で論ずる眼の前の男も同じだった。

「知ってるかね?ヴィルケ君。
 今この机に並んでいる菓子の原料の大半はリベリオンのレンドリリースで賄われていることを。」

部下が街角で購入した油っぽい菓子を掴みながらアイカシア大佐が言う。

「それは兵器にもいえて我が祖国も同じだ。
 正面装備こそ国産だが、トラックなどの補助は全部リベリオン産だ。」

「ええ、そのくらい。
 39年の時点で私も嫌という程、実体験しましたから。
 世界に冠だる偉大な祖国といえども植民地人の助けがなければ、今頃私自身もここに存在してなかったでしょう。」

苦々しい思い出とともにミーナが言葉を綴る。
頭脳に映像と共に映し出されるのはリベリオン製品が溢れかえっていた戦場での日常。
特にスパムの缶詰などもう見たくもないほど大量にあった。

ここで一つ<史実>の話をしよう。
電撃戦を初めとして対ソ連での戦争で戦史に名を残す機動戦を繰り広げてきたドイツは機械化された軍という印象がある。
しかし、以外かもしれないが、その実<史実>のドイツ軍は完全な機械化ができていなかった。

装甲師団に装甲擲弾兵師団(機械化歩兵師団)こそトラックは充足していたが、
通常の擲弾兵師団は何かと非難の的にされる旧日本陸軍と同じく、人の足と馬匹による移動力しかなかった。

なお、五カ年計画で軽工業を犠牲に達成された重工業国家のソ連も、
終戦までトラックはアメリカ頼りであり、当時自前で完全な機械化を達成できたのはアメリカだけであった。

「で、大佐。
 私はこの間出現した『特殊ネウロイ』に、
 ついて情報をもらえると聞いてここまでやって来たのでありますが。」

「おお、そうだった。
 すまない、自分はどうしてもこういった話が好きでね。つい、無駄話をしてしまった。」

にこやかに答えるアイカシア大佐。
が、その本心はミーナを試していたことは試された側は熟知していた。
ただの前線指揮官か、それとも大局から判断できる司令官かどうか。今後の昇進を左右するだろう。

「では、説明しよう。
 結論から述べれば人間が作り出した可能性がある。」

「な・・・っっっ!!!」

驚愕に声を挙げそうになったが、何とか耐える。
幾らブリタニアにある唯一のカールスラント領内でも、誰かが聞いているかもしれないから。
特にウィッチ隊に対してあまり友好的でない司令官、マロニー空軍大将などが。

「正直、我々も困惑している。
 冗談かと思ったが、様々な情報を整理した結果だ。
 信じたくないかもしれないが、『特殊ネウロイ』はブリタニアの手で誕生した可能性がある。」

淡々と大佐は語る。

「なんて、ことを。」

ミーナは頭がクラクラする感覚を覚える。
超えてはいけない倫理をついに人類は超えてしまった事実に衝撃を受けたのだ。
何せ、バルクホルンが言うには『生きたまま』怪物へ変化させていたと言う。

「本来、この件については、」

ミーナが衝撃から立ち直るのを見計らってやや間を置き、アイカシア大佐は口を開く。

「本来、
 君のは知らせないつもりだった。この件はあまりに危険すぎるから。」

続けて言葉をつなげる。

「だが、君が指揮する501はあまりにも政治的な位置にある。
 もし、501に何かあれば我が国の損害になるゆえ、君は知る義務がある。」

統合戦闘航空団は各国精鋭を集めた部隊。
その分、本来前線部隊にありえないはずの政治的争いの渦中に巻き込まれる危険が高い。
その気になれば、わざと特定のウィッチを使い潰し、特定国の発言権を削るよう裏から手をまわししかねない。
最近動きがあやしいマロニーなどは警戒するに越したことはない。

「味覚障害どもが考えることは、まだ完全に把握していない。」

部下が購入した油っぽい菓子をかじる。

「が、覚えておきたまえ、ヴィルケ君。
 君が愛する501は常に狙われていることに。」
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いつもの昼下がり-Ⅱ (ヴァルハラの乙女たち)

2011-06-11 00:27:15 | 習作SS

「はぁ・・・。」

普段では見られない光景。
面倒臭い人間に出会い、自分と合わないと感じて吐くため息ではない。
もっと深刻な、暗い憂鬱を伴った深い、深いため息をエーリカはしたのだ。

「何を考えているのかわからない。」

とは、おえが言うなと言いたくなる煩悩まみれなミステリアス少女エイラの言だが、本当は超がつくほどのズボラ人間である。
それを知らない赤の他人はエーリカ・ハルトマンという人間に対する評価は大体『最強のウィッチ』としてのみで語る。

曰く、史上初の300機に届くかもしれない。
曰く、史上最強のウィッチ。
曰く、マルセイユと共に祖国が誇るウィッチ。

等などと彼女を直接知っている人間は皆、大爆笑間違いなしの評価が下されている。
ズボラなだけでなく軍隊の命令に幾度も背いた『悪い子』でそんな模範的な人間でないのを熟知していたからだ。

けど、その『悪い子』である原因は、
軍隊でありがちな効率を優先した命令である、仲間を見捨てて目標を達成する事。
それに反発して、強引に仲間を助けたがゆえに下された判定であるのも皆知っている。

地上ではぼんやりと気が抜けた態度を貫くが、一たび空へと駆ければ優秀な戦士。
それも仲間想いで、僚機を一度も失わせたことがないという伝説があるほどになる。
そんな彼女が深い憂慮がこもったため息をつくなど、深刻な事態である。

「・・・・・・馬鹿。」

エーリカの眼にはリビングのソファーで眠るバルクホルンが映っている。
こげ茶色の髪、長いまつげ、凛々しいという意味で整った顔は起きている時と変わらないが、今は少女らしい魅力を放っていた。
灰色の軍服ではなくピンクのヒラヒラの服なんて着せたらさらに魅力が上がっただろう。

その顔が苦痛に耐えるように歪んでいなければ。

「ごめん・・・なさい・・・・」
「ッ!!!」

刹那、寝ているはずのバルクホルンから言語が発せられる。
エーリカは驚いたがすぐにこれは寝言だと思った。

だが、誰に対する謝罪か?そんなの初めから知っている。
理由は話でしか知らないが、よく話してくれた妹のクリスに対するものだろう。
自分は決して姉馬鹿ではない。ただ手間のかかる子だと話していたが、実に嬉しそうに話していたのをよく覚えている。

けど、その子はもうこの世に存在しない。
その子がいたという記憶と記録だけしか存在しない。
バルクホルンの故郷で空襲に巻き込まれて死んでしまったのである。

そしてバルクホルンはその時、彼女を守れなかった。
挙句部下を殺した上におめおめと生き延びたと思い込んでいるのだ。

「トゥルーデさ、諦めてしまえば、楽なのに。」

諦める。
それはズボラな性格だから述べたのではない。
経験から導き出された生き残るために秘術である。

エーリカは辛い思い出に囚われて自暴自棄になった人たちを何人も見てきた。
知り合いではミーナなども一時期悲しみに暮れてそのフォローに追われたことがある。

ゆえに、この経験から出された結論は、
戦争とは人智に及ばぬ災害みたく『しかたがなかった』と思い込むこと、自分にはできないと諦めてしまうこと。
これで、未来に向かって前進する自信がつけるのだ。

しかし、バルクホルンは違う。
エーリカが考えるに一度忘れるころで楽になったが、結局根本は頑固までに諦めようとしない性格。
だからこそ、現在こうして悩んでいるのだ。もし、自分がもっと・・・という風に。

なお、<前世>で<原作知識>があったにも関わらず、
何もできなかったから余計にそうなっているのをエーリカは知らない。

「ん・・・んあ?」

エーリカが思考を巡らしていた最中。
バルクホルンが眼を薄く開けてもぞもぞと動き出す。

「んん・・・エーリカか?何をそんなに私の顔をじろじろ見てるんだ。」

トゥルーデが心配で、とは言わない。
過去を思い出させるような言動はせず、『いつもの日常』を演じ続けるのがリハビリにつながるからだ。

「とりゃー。」
「むが」

と、いうわけで手始めにバルクホルンに抱きつくことから始めた。
胸にバルクホルンの顔を押しつけてわしゃわしゃと髪をなでる。

「胸あたっているぞ。というか骨が固い」
「へへ、当てているだからー。」

これでも成長しているんだから、と続けて言うがバルクホルンは呆れた表情を作る。

「成長?成長というのはせめてペリーヌぐらいなければ話にもならん。」
「ぶぅー横暴だー。女の子のプライドを傷つけたー。」

エーリカはそう言うとバルクホルンを強く抱きしめる。
抱きつかれる側は頬に胸の柔らかみよりもさらにアバラ骨が押し付けられた感覚しかなかった。

「・・・いいかげん、離れてくれないか?」
「ちえ、トゥルーデは冷たいな。」

すくりと立ち上がり、バルクホルンを拘束から解放する。

「冷たいもなにも、おまえがな・・・。」

クドクドと始まる愚痴。
今の出来事だけでなく、これを機に言いたいことを纏めて言うつもりだ。
やれ、書類はしっかり書け。やれ、上層部にはストレートに文句を言わない。あと、ちゃんと起きろ・・・。

「ふふ、」

変わらぬ、日常。
それで、そのまま『現在の日常』に埋もれて『過去』を振りかえらなくなるまで、
この日常を作り続けよう、そうエーリカは思った。

「エーリカ、なんで笑っている?」
「なんでもないよー。」

この戦友が二度と離れるのを止めるために。
再び苦しみを味わらせぬためにも。
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