三十三式三屯牽引車[ミケ]
架空戦記短編ネタです。
神隠しにあった現代人が明治初頭にタイムトリップ。
ここまでならよくある架空戦記のように政治家や軍人とコネクションを構築。
そして将来の戦争や出来事に介入するのが架空戦記ネタの定番ですが、
この作品ではその結果「日露戦争時に日本軍が牽引車を使用する」という結果がでました。
日露戦争時に牽引車を使用するという架空戦記のネタでは見られなかったパターンは珍しく、
また牽引車の設定も当時の技術的な限界を踏まえた上で現実的な数値にしてあり、納得できる内容です。
「おお、これがそうかね?」どこか楽しげな表情で上原が言う。
「はい。これが今回用意した新型車両、[三屯牽引車]でございます!」
外見は1921~1960年に生産され、高い人気を誇った[ランツブルドック装軌型]に良く似ていた。
そして、その性能もこの時代では破格のものである。
前方に機関室を持ち、そこには深井が開発した2ストローク型焼玉エンジンを搭載し、
後方に運転席を持つ全装軌フルクローラ式の牽引車である。定員は2名で、速度は最大9km/h。牽引力は3屯。
そして何より、本車最大の特徴は堅牢さである。
元々、深井は本車を農業用として開発を進めており、
水田でも使用できるよう徹底的に堅牢、修理しやすさを求めて設計されていた。
焼玉エンジンはセミ・ディーゼルとも呼ばれ、
簡素な構造なので製造が容易で燃料も灯油や軽油、
更に低質重油でも動くことが可能。
そして装軌式のため不整地・泥濘地でも性能を発揮するという、非常に使い勝手が良い車両に仕上がっていた。