ウィッチとして、家族の仇のために、貴族としての義務。
そのために軍に入ったのが今から4年前の11歳の時だったはず。
ペリーヌ・クロステルマンは模擬戦の最中そう回想した。
普段ならばそんな事を考える事はない。
しかし、今日は宮藤芳香との模擬戦の最中そんなことを考えてしまった。
宮藤芳香。
坂本少佐により扶桑からスカウトされた人材だが、
聞けば軍のウィッチ養成学校に入っていないどころか、
ついこの間までまったく関係ないごく普通の学校に通っていたと聞く。
しかし、彼女は501に着任する前、何の訓練も受けていない状態で空母「赤城」を見事に守りぬいた。
その後も基地に襲撃してきたネウロイをリネットと共同で撃墜することに成功した。
全て偶然と幸運といった言葉で片付けることはまったくできない。
それなりに修羅場を潜ったペリーヌから見ても彼女の戦場での適応力の高さは異常だ。
どんなに魔法力が高くても戦場に立つ軍人として心構えが十分出来ていない段階でここまで戦果を挙げることは極めて稀だ。
現に同じ501の隊員で現在こそ世界一の撃墜数を誇るエーリカ・ハルトマンの初陣は散々なものだった聞く。
まるで、御伽噺の英雄ね。
ペリーヌの頭の中でそんな発想が思い浮かぶ。
でも、思ってしまう。
仮に英雄ならばどうして彼女のような人間があの時来てくれなかった。
家族を失い、亡国となった故郷から別れる事を余儀なくされたあの4年前の時に。
あるいは、あの時。
自分も彼女のような才能があれば―――。
「っっ!!」
突然体に衝撃が走る。
ペイント弾が命中したのだ。
思考の海に沈みこんでいた意識が強制的に覚醒された。
『そこまで、ペリーヌの撃墜を確認!宮藤の勝ちだ』
地上から判定していた坂本少佐の声が耳のインカムから聞こえる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます