絵じゃないかおじさん

言いたい放題、自由きまま、気楽など・・・
ピカ輪世代です。
(傘;傘;)←かさかさ、しわしわ、よれよれまーくです。

あ@仮想はてな物語 大台ケ原のカミナリ

2019-12-23 10:13:52 | 仮想はてな物語 

copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ


  * 大台ケ原のカミナリ(021)

 169号を抜けて大台ケ原へ行った。
 天気は曇り気味であった。
 真夏を少し過ぎていたが、平地はまだまだ暑かった。
 特に、奈良は盆地なので大阪よりは
数度暑い感じがする。
 169号は何度も通ったことあるが、
大台ケ原へは初めてだった。

 約20kmのドライブウェイがある。
 丹生川上社あたりの渋滞には、
いつも泣かされている。
 多くの人が涼を求めに来るためであろう。
 通行量は多い。
 バイクは渋滞に強いのであるが、
このあたりでは通用しない。
 すれ違いできないために、
車がバックしてくる。
 道が狭すぎるのである。
 路肩もあまり良くないので、
流れに従わなければならない。
 下手をするとバイクが邪魔をして
対向できなくなるからだ。
 それでも何とかドライブウェイの
入口にたどりつく。

 11月から3月までは、
このドライブウェイは、
雪・凍結のため閉鎖される。
 それだけ寒いということか。
 逆に夏場は涼しくて人が集まるのだろう。
 車もバイクもかなりの台数が入っていた。
 私は、初めての道は細心の注意を払って進む。
 先がわからないのは不安である。
 地図を見ても頭に入らないから、
身体で覚えることにしている。
 そんな私を皆がびゅんびゅんと追い抜いてゆく。
 お先にどうぞと左に避ける。
 怪我などしては堪らぬからだ。

 雲行きは悪かった。
 雷がやってきそうな雰囲気である。
 引き返そうかと思ったが、
せっかくここまで来たのだから、
 山頂までゆかねば気は治まるまい。
 原始林も見てみたい。
 しかしながら、私は雷が大嫌いだ。
 ましてや、バイク。
 直撃されたら一たまりもない。

 山道の20kmは中々進まない。
 危なくてスピードはあまり出せないのである。
 その上、曲がりくねっているわりには、
 普通車がかなりのスピードを出して、
 前後から走って来る。
 生命知らずの奴らが多いのだろう。

 そのうちポツリポツリと雨が降り始めた。
 夕立だ。
 稲光もし始める。
 他に、バイクは?と捜したが見当らない。
 孤独感と不安感に襲われる。
 バイクが近くに居れば、
 こういう天気の日には
それなりに安心するものだが、
 普通車ばかりだ。
 普通車は雷に強い。
 そういう点が、たまらなく羨ましい。
 しかし、羨んだところでどうしようもないのだ。

 だんだんと雨足が激しくなり、
 雷もほんの傍まで来ている感じがする。
 雨宿りをする適当な場所も見当らない。
 木の下は危険だといわれている。
 泣きたい気分だ。
 サヤカを置きざりにして、
 誰かの普通車のなかに
入らせてもらおうかとも思うが、
 いつの間にか1台も居なくなっていた。
 空は薄気味が悪いほどに黒暗くなってきた。

 ピカーッ。
 バリバリバリ、バッシーン。

 ついに始まった。
 私は、堪らなくなってサヤカを止め飛び降りた。
 サヤカに落ちる可能性がある。
 かといって逃げる場所もない。
 万事休す。

 ピカピカ、ピカーッ。
 ガラガラ、ドッシャーン。
 ああ、サヤカよ、何とかしてくれーっ!


 私は、もう俯せてしまった。
 そんな時であった。
 サヤカのヘッドライトが、
キラーッと物凄い光を放ち始めた。
 キーはつけたままだった。
 稲光の数十倍の光り方である。
 ピカーッと稲光がする瞬間に、
 その方向に向けてサヤカが光を放つ。
 そのたびに不思議なことに雷の音が消えるのだ。 


 右や左にピカッ、ピカーッ。
 サヤカのヘッドライトが
稲光を打ち落としているのだ。
 確実に迎撃している。
 その間20~30分ぐらいだったろうか。

 黒雲がだんだんと軽くなり
晴れ間が見えてきた。
 夕立はだんだんと遠ざかってゆく。
 サヤカが勝ったのだ。


 サヤカよ、お前にそんな力があったのか!


 一戦を終えたサヤカに残る七色の雨の露を
タオルで丁寧に拭い、感謝の気持を表した。





  こわやこわや カミナリこわや 車もこわや
   大台ケ原 ドライブウェイ
                             
 ち ふ


                              
この項おわり



あ@仮想はてな物語 新益京のOさんは、花粉症

 * 新益京のOさんは、花粉症(022)

 Oさんは花粉症である。
 この数年来、春先の明け方が特にひどい。
 鼻水が出て止まらないし、よく眠れないみたいだ。
 原因は杉の花粉にあると言われている。

 私は、北山杉のことを思い出した。
 むかし、サヤカが教えてくれたのだ。
 京都の162号を若狭に向かって、
 かなり行った所の小道を左に入り、
 そこから数キロ入った所に、
 人間と話しを出来る北山杉が居るという。
 その杉と話すのは、
サヤカのガソリン・キャップを外し、
 給油口を通して行なうのである。

 その口に耳を当てたり口をつけて
話しをするのだ。
 ガソリンの匂いは、私は好きではない。
 頭がクラクラしてかなわない。
 けれども、Oさんのためでもある。

 私は、早速、北山杉に花粉症の治し方を
聞きにいった。

 北山杉の北やんは屋久島の縄文杉に
聞けと教えてくれた。
 屋久島までは遠すぎる。
 私は趣味のパソコン通信・「ANP」ネットで
知り合った、
 鹿児島のNさんに頼むことにした。

 その杉と話をするのには、
サヤカのマフラーが要るという。
 私は、すぐさまNさんに事情を伝え、
 宅配便でSサヤカのマフラーを送った。

 縄文杉は大神神社の巳の神杉に聞けと
答えたという。

 あーあ。
 灯台元暗し、だ。
 毎週近くを走っているではないか。
 わずか4~5kmのところにある。
 話しかけ方は北山杉と同じだという。
 私は、ある深夜を選んで出掛けた。

 神杉は大神神社の拝殿前にある。
 数段の石の階段があり、
サヤカを上げるのには苦労した。
 ガードマンに見つかるとうるさいから、
 エンジンを切って手で押し上げた。
 手で押すとなればサヤカは重たいが、
 わずか数段なので、何とか押し上げることに、
 成功した。

 神杉が言うには、神杉がつけている雌花を、
 花粉を散らさないように取り、
 一日一回、一個の雌花を鼻先に
数分あてていれば、
 数か月で治るということだった。 

 やったあ!

 私はすぐさま雌花を摘んだ。
 ガードマンに見つかったら、
 タダではすまないので気が気でなかった。
 それでも革ジャンの両ポケットいっぱいに
詰め込んだ。

 家に帰って、もう寝ていたOさんを叩きおこして、
[杉の教え]を教えてやった。

 「なに寝言、言っているの? 早く寝なさい!」と
一喝された。
 てんで取りあってくれない。
 次の朝も、やっぱり花粉症の症状が
ひどくなっていた。
 私は、またしつこく勧めたがやっぱり同じ。
 相手にされない。

 私の苦労は何だったのだ ?! 

 大神の 神杉に宿る 精霊に
  バイク通して アタック試みる
               
        ち ふ



 なお、この治療方法に関しましては、
 巳の神杉にご相談下さい。
 くれぐれも、ご乱用はお控えくださいとの事です。


                  
 この項おわり


あ@仮想はてな物語 和田山イノシシが ?!

 * 和田山イノシシが ?!(023)

 国道9号を走って秋の山景色を満喫していた。
 和田山を少し過ぎたところで右に折れ、
山の中に入った。
 日本海に出る予定である。
 紅葉も盛りは過ぎているが結構楽しめた。

 車の通りも少ない寂しい山路であった。
 しかし、その道路は日本海方面の道路に
繋がっていると、
 ガソリンスタンドの店員が
 教えてくれてたので、その点だけでも、
気が楽であった。
 所々に[イノシシ注意!]の立て札が
立ててあった。
 そんな馬鹿なと気にもせず走っていた。

 しばらく走っていると前方に小牛が見えた。
 こんな山の中に牛がいるのかなと、
 不思議に思いながら近づいてゆく。
 小牛にしては小さいし毛がたくさん生えている。
 気味悪くなって止まった。
 その生きものも、私に気がついたのか、
こちらを睨んでいる。

 目と目が合ってしまった。
 その瞬間、ヤツは、私の方に突進してきた。

 ヤバイッ! 

 奴は猪だった。
 奴が猪なら、こちらもイノシシ年生まれ。
 今更Uターンは出来ない。
 私は、すぐさまギアをセカンドに入れ
方向指示器を点け、
 ヘッドライトを、
 遠距離と近距離用に交互に変えながら、
 クラクションを鳴らし、
 エンジンを最大に蒸かして直進した。
 正面衝突する覚悟だ。

 というのは建前で、実際は衝突寸前に
ハンドルを左に切るつもりだった。
 それしかないと、咄嗟に判断を下したのだ。


 バリバリバリッ。
 ピカピカピカッ。

 大台が原で出会った雷のゴロッピ並みの脅しだ。
 奴もびっくりしたに違いない。
 10mぐらいの距離に近づいたとき、
奴は急に止まったかと思うと、
 コロコロコロと引っくり返って転がってきた。
 奴も急ブレーキには弱いのだろう。

 ハンドルをすばやく切る。
 Sサヤカのわずか50cmぐらいの傍を転がっていった。
 私は、ギアをトップまで上げ、その場を逃げ去った。
 後ろで奴がどうなっているか、見る余裕もなかった。
 心臓が首の近くまで、押し上がったようであった。

  イノシシの 大突進を 迎え撃つ
   わがバイクの フル回転
                     
  ち ふ

               
 この項おわり


あ@仮想はてな物語 大和三山

 * 大和三山(024)

 冬の寒い晴れ渡った日の朝、
 南大和盆地には靄(もや)が掛かることがある。
 私は、その景色を一度見たいと思っていた。
 そのため、天気予報には特に注意を払っていた。
 土曜日か日曜日の朝であればと願っていた。
 5時起きをしなければならないからだ。
 晴れの日の寒い早朝、目覚ましで起きてはいるのだが、
 なかなか靄は掛からない。
 一冬で数えるほどしか、お目にかかれない。

 不運な(?)ことに、ある月曜日の朝、靄が掛かった。
 私は、Oさんを起こさないように、そっと寝床を抜け出し、
 サヤカを連れ出した。
 近所迷惑になるので、団地のハズレまで手で押して行き、
 エンジンをかけた。
 行く場所は決めてある。
 山の辺の道沿いの小高い丘の上である。
 もう何十回となく行っているので、
 暗闇でもゆけるようになっていた。

 靄のせいで、ヘルメットは曇るし
非常に息苦しい感じがした。
 まだ薄黒白い空気の中を走る。
 丘にたどりついたが太陽は
まだ昇ってはいなかった。
 自分の居場所も、はっきりとはわからないが、
 通い慣れた所なので不安はない。

 夜がだんだんと明け始める。
 靄がそれにつれて白っぽく変わってくる。
 そのうち、三山がぽっかりと靄の上に浮き上がってきた。
 左の方から、香具山、畝傍山、耳成山の順に並んでいる。
 青黒い色が白い靄で弱められ別世界を形造っている。
 その下に多くの人々が生活しているとは、
 到底考えられないような風景である。

 その時であった。

 香具山がパッと女性になり畝傍と耳成が男に変わったのだ。
 男二人は剣を持っていた。
 女は両手を合わせて心配そうに二人の様子を見ている。
 男たちの眼は血走り殺気だっていた。
 しかし、何を言っているのか、さっぱり解らない。
 古代語でしゃべっているようだ。

 そうだ!

 サヤカの不可思議な能力を思い出した。
 ガソリンの給油口に耳を当ててみた。
やっぱり思った通りだ。

 わかる、わかる。

 私は、そこに耳をあて首を傾けて
三人の成り行きを見守っていた。

 「今日こそは決着をつけよう」
 「望むところだ。来いっ!」

 剣のかち合う音が伝わってくる。
 五分と五分の争い。
 香具山は今にも泣き出しそうな顔をして
二人を見守っている。

 そうか!

 これが、あの三山の争いなのか。
 香具山が女で残りのニ山は男だったのか!

 やはり、私が想像していた通りだ。
 人によっては畝傍が女性という者もいるが、
 私は、名前の響きからして、
 香具山が女性に相応しいと思っている。
 それに男二人が女性をめぐって
争うほうが好ましい。
(この偏見! 女性の方すみません)

 香具山の顔は、はっきりとは解らないが、
 私からすると、剣で争うほど美しいとは、
 思われない。

 美女に対する感覚が違うのだろう。
 少なくとも、私だったら争いは避ける。
 けれど二人は必死だ。
 その時、一方の男の耳の辺りから
血が噴きだした。
 耳が削がれたのだ勝負はついた。
 香具山は負けた方の男の傍に走り寄って、
 傷口あたりの血を袖で拭ってやっている。

 「こちらにおいで」

 香具山は顔を上げようともしない。

 その時、パアーッと朝日が射してきた。
 それと同時に3人の姿がすっと消えてしまった

  三山の 遠き物語 映しだす
   冬の朝靄 大和ミステリー
                     
  ち ふ


                  
 この項おわり


あ@仮想はてな物語 新益京の駄犬コロ

 * 新益京の駄犬コロ(025)

 コロは、数年前にわが家に住みついた
白い雑種の牡犬である。
 誰かが生後数か月の時、
わが家の近くに捨てていったのだろう。
 そのまま黙って
縁の下に住みついてしまったのだ。
 子供達も飼ってと譲らなかったので、
そのまま住まわせている。
 最近では、子供達もコロを相手にしなくなり、
 Oさんも散歩に連れていかない。

 一日中寝そべっている。
 そんなヤツを見ていると、
無性に腹が立ってくる。
 定年後の己れの姿を見ているようで
吐き気を催してくる。
 去勢手術を施しているので、
食うことだけが楽しみみたいだ。

 そうだ、駄犬コロに喝を入れてやろう!

 最初は5kmほど離れた山の辺の道に、
 コロをサヤカに乗せて置いてきた。
 私は、わざと自宅から遠い方へ走った。
 ヤツは必死に追い掛けてきたが、
所詮犬の足のこと、
 バイクに適うものではない。

 そのうち撒いてやった。
 それでもヤツはその日のうちに帰ってきた。
 ワンワンと吠えてOさんに
告げ口しているようだ。
 彼女は何も知らない。
 ヤツが私を恨めしげに見上げるが、
そ知らぬ振りをしてやる。

 「コロ、何処に行っていたの?」
 ワォン、ワォンと私の方を顔指しながら鳴くが、
 オレは知らんぷり。
 次は10kmほど離れた
吉野の山の中に置いてきた。
 Oさんはコロが二日も帰って来ないので
心配している。

 「鎖外したの、あなたなの?」

 私は、曖昧な返事をする。

 「何処へ行ったのかしら」

 私は、内心ビクビクしている。
 駄犬でも居れば少しは役に立つ。
 猫を追っ払うことぐらいは出来るのだ。
 最近のように家庭から出す
ゴミの量が多くなると、
 つい家の外に出す。


 それを猫が荒らす。
 コロの仕事は、そういう猫や弱そうな犬を
追い払うことだ。

 3日目の夕方、薄汚れた姿で
少しやつれて帰ってきた。
 今度の鳴き方は前より凄い。
 私に対して大分怒っているみたいだ。
 子供達も普段はそこに居るのかとも
言わないのだが、
 3日も見てないとなると、
少しは気になるらしい。
 撫でてやったりしている。

 良かったな、コロ!
{支離滅裂な、この態度!}

 2度あることは3度ある、のである。
 コロのヤツも、うすうす覚悟しているだろう。
 今度は丹波の山奥に連れてゆくことにした。
 私が近づくと、Oさんに報せようとしているのか、
 大きい声で恐がるように鳴く。
 しかし、今は買物に行っていない。

 季節は夏の盛りを少しばかり過ぎた頃だ。
 真冬までには帰って来られるだろう。
 コロのヤツは小屋のなかに潜りこんでしまった。
 私が、引っ張り出そうとすると軽く咬みついてくる。
 それでも無理矢理引っ張り出した。
 鎖は自然に切れたように細工しておいた。


 {暇な悪知恵オッさん!}

 暴れるので手足を括ってダンボール箱に入れた。
 ギャンギャン殺されるように鳴くので
猿ぐつわを咬ました。

 一路丹波路へ。

 そんなに重くはないのだが、
 暴れ藻掻くのでハンドルが少し取られる。
 しかし、そのうち諦めたのか
疲れたのか解らないが静かになった。
 途中で手足を解き猿ぐつわも外してやったが
もう鳴かなかった。

 丹波路は秋に近かった。
 稲穂が垂れ下り気味であった。
 コロを人気のない山路で下ろしてやる。
 コロはホッとしたのか何度も身震いをしながら
おシッコしている。
 ずっと我慢していたのか
長い長いおシッコだった。
 少し可哀相になった。
 私の方に近づこうともしない私は、
数100gの焼肉を置いて
 サヤカで走り去った。
 コロのヤツは附いて来ようとはしなかった。

 しばらく後ろを何度も振り返りながら走ったが、
 肉に食らいついて、
 その場から離れようとはしなかった。

 あれから3ヵ月もたつのに、
コロはまだ帰ってこない。
 どこをウロついているのだろうか?
 野犬になるような悪い犬ではないはずだ。
 あちらこちらで餌を貰いながら
何とかそのうち帰ってくるだろう。

   わが駄犬 寝そべるだけの 日日(にちにち)に
     喝のショックを 1(わん)プレゼント

(コロのうた:この姿 明日のアンタの 写し絵よ
          腹立てる前に よく見ときなはれ)
                              
     ち ふ

                              
 この項おわり


あ@仮想はてな物語 原発銀座でサヤカの能力アップ

 * 原発銀座でサヤカの能力アップ(026)

 サヤカがもう少し強い放射能を浴びたいと言った。
 強い放射能を浴びれば能力がさらにアップすると言う。

 サヤカの不思議な能力のエネルギーの源泉は、
 どうもこの私の出す超極微量の放射能にあるらしい。

 何でもエラい科学の先生によれば、私も放射能人間だそうだ。
 植物の生理に不可欠な放射性元素カリウム40が、
 食物を通して身体の中に入り、
 それがアルゴン40やカルシュウム40に変わる時に、
 あのクソ恐ろしいβ線やγ線を放出しているとのこと。

 でも別に心配は要らないらしい。
 その他、空気や食物から入ってくる放射性物質、
ラジウム・ウラ ン・炭素14・ポロニウム214などが、
 普通人の中で放つ放射線の総量は年間約15ミリレムで、
 これは国際放射線防護委員会(ICRP)の年間許容被爆線量の
 3%前後とのこと。

 それにしても、知れば知るほど人間のメカニズムは
 面白いものだ。

 サヤカは、α線やβ線は、透過力が弱いので、もっぱら私の
 γ線を利用しているようだ.。
 この近くで放射能を浴びられる所と
 言えば若狭湾に群がる原子力発電所しかない。

 近代科学の粋と言っても所詮人の作ったもの。
 いつかは漏れるのではないか。
 そう睨んだ私は半年だけサヤカと離れることにした。

 事故を起しやすそうな原発を選んだ。
 最新設備の所が一番疑わしい。
 科学の力に過信してしまっているから人間が隅に
 追いやられる。
 そんな所の方が事故が起りやすいと確信したからだ。
 私は、発電所の近くでサヤカの隠し場所を捜した。
 サヤカの欲しがっている被爆量はわずかでもいいらしい。

 サヤカが風雨に晒されて錆びるのも困る。
 人に取られても困る。
 解体業者や大型ゴミとして持ち去られるのも困る。
 私には仕事があるし、ずっと一緒にいてやることは出来ない。
 何かうまく隠す方法はないものかと思案した。
 中々いい知恵が浮かんでこない。

 そうだ! いい事を思いついた。
 原発の近くで不審がられずに、
 ずっと置いていて、盗まれたり錆びたりしない、
 安全な方法は、これしかない。
 金はすこしかかるが、サヤカの能力アップが楽しみだから、
 先行投資だと思って、実行することにした。

 それは、原発で働く人に頼み、
 サヤカを通勤に使ってもらうことだった。
 地元の人で原発で働いていてバイクに乗れる人。
 私は、10回近く通って、そういう人を捜しだした。
 借りて貰う理由づけに、これまた頭を悩ました。

 日本海側と太平洋側とでバイクの錆がどう違うか研究している。
 だから、モニターとして、このバイクを日常的に使ってほしい。
 期間は半年。
 謝礼は20万円。

 このため、名刺まで作った。
 モニターになってくれる人は、
 少し訝りながらも謝礼に吊られたのか何とか
 引き受けてくれた。
 サヤカを預けた帰りはバスと電車を乗りついで帰ってきた。

 サヤカのない生活は、もの足りなかった。
 Oさんには接触事故を起して修理に出していると誤魔化した。
 季節も良かった。
 冬の始まりだったので、
 春まで取りにゆかなくても良いという大儀名分もある。


 それから、3カ月も経たずに、
 私が予想した通り放射能モレが起ったのだ。
 私は約束の期日を心待ちに待った。
 そして、その期日が過ぎた次の土曜日、サヤカを連れに
 行った。
 彼女の能力がどのくらいアップしているのか全然わからない。
 でも確実にアップしていることだろう。
 今後どんなすばらしい力を見せてくれるのか、
 楽しくて楽しくて仕方がない。

  放射能 絶対漏れぬと 言うよりも
    漏れたらどうするかが 皆の大関心
                           
   ち ふ

                         
 この項おわり


あ@仮想はてな物語 道成寺と白いヘルメット

 * 道成寺と白いヘルメット(027)

 私は、元来白いヘルメットを被っていた。
 純白な感じがして、年と共にくっついてくる柵の汚さから、
 気持だけでも逃れたい。
 白のヘルメットを選んだのは、そんな心の現われからだった。

 道成寺は、42号を白浜方面に向かって走ると、
 御坊市のすぐ手前にある。
 初秋の夕方であった。
 ドライブ用のガイドブックに、
 江戸時代から続く径山寺味噌の老舗が載っていたので、
 ツーリングも兼ねて買いにきたのだ。
 Oさんの好物でもある。

 その帰りに道成寺に寄ってみた。
 改築中なのか境内は工事現場と化していた。
 風情も何もあったものではない。
 夕方近くなので参拝の人も居ない。

 私は、3重の塔の前に、
 何気なく白いヘルメットやバッグを置いて、
 寺のなかを歩いてみた。
 予備知識に乏しいので身体で感じるのみである。

 一通り見終わって、白ヘルメの傍で一休みしようと思って、
 メットの方に近づいた。

 何と!!

 白ヘルメを軸にして蛇がとぐろを巻いているではないか。
 鎌首を擡げて眼を血走らせ、私を睨みつけている。
 大きさはそれほどでもなかったが、私はその場に立ち竦んだ。
 これは、もしや清姫蛇の子孫ではないのかと思った。

 安珍を釣鐘のなかで黒焦げに焼き尽くした
 清姫の話は私でも知っている。
 その子孫が延々と情炎を燃やし続けながら、
 今に生き続けているのではないか。
 このだらけ切った現代の男女間の軽い風潮を嘲り、
 憤りを感じながら、
 その存在の重さを訴え続けているのではないか。
 私には、蛇がそう主張しているように思えた。

 サヤカは、62段もあるという石段の下に置いてあるので、
 蛇と話をする手段はない。

 [蛇よ、オレはお前と同類だ。
  オレがOさんを想う気持とお前が安珍を想う気持と、
  どちらが強いか勝負だ。]

 私は、蛇の睨みに負けないように、Oさんのことを想い続けながら
 睨み返す。
 負けるものかと、Oさんへの一途な気持を蘇らせる。

 もう私たちは、年を取り過ぎて、姿・形は社会の種々雑多な垢に
 塗れてしまった。
 しかしながら、心の片隅からは初心の知り合った頃の、
 あの清い心が消え切ってはいない。
 いや、年を取れば取るほど、
 ダイヤモンドのように光り輝いてくるのだ。

 心のその部分に神経を集中させる。
 そのことだけを念じこむ。

 数10分も、そういう状態が続いただろうか?

 蛇のヤツがスルスルと、とぐろを解いたのだ。
 眼の光は穏やかである。
 少なくとも私への敵意は消えていた。

 立ち去る時、蛇のヤツ何を思ったのか、何とVの字形になって、
 私にVサインを送ってきたのだ。
 ヤツが消えてメットを見てみると、
 白ヘルメットが黒ヘルメットに変わっていた。

 ヘルメを焦がしていったのだ。
 所々、斑になっていた。

 その時から、私のメットは、黒いヘルメットに変わったのである。

 清姫よ、お前の気持はよくわかった。

 白ヘルメ 黒く焼き焦がす 情念の
  熱き炎よ この地球(たま)を包みこめ!! 
                            
   ち ふ

                    
 この項おわり


あ@仮想はてな物語 新益京のワープロ

 * 新益京のワープロ(028)

 私は、ワープロを使う時、
 マニュアルは手放せない。

 ちょっと複雑なことをすると、
 即落し穴に落ち込んでしまう。

 それを、だ!

 ガキ(私の子供たち)どもは、
 いとも簡単にマニュアル無しでボカスカ扱うのだ。

 ファミコン・パソコン慣れしていて、キーボードなど
 恐がりはしない。
 親父の威厳もクソもあったものではない。


 ある日のこと、サヤカがワープロを打ってみたいと言い出した。
 彼女の能力も大分上がってきて、
 周囲1km以内に人が居なければ話しかけてくる。


 このあたりでも10km以内に人が居ないところなど
 限られている。
 荒れ模様の天気の日に山の、
 それも大分奥深い所でないとそういう条件にならない。
 少々の雨では人が出ているからだ。

 荒れる山のなかは恐ろしい。
 路は滝のような水が流れ川のようになる。
 岩も転がり落ちてくる。
 木は左右150度ぐらいに揺れ動くし、
 山全体が日頃の欝憤を晴らすように、
 猛烈な口喧嘩をしているようになる。

 サヤカと、どうしても話をしたい時には、
 そういうなかを走ってゆかなければ
 ならなかった。
 しかし、これからはそんなことをしなくても気軽に
 話ができそうだ。
 有り難い。
 投資しただけの価値はあった。

 サヤカも、駄犬コロのように暇を持て余しているに違いない。
 普段の日は、カバーを掛けられて一週間に一回しか、
 お呼びが掛からない。

 かといって、私は、しがない会社員。
 土・日以外は、そうそう乗れるものではない。
 定年になったら思う存分連れ回してやるからな、
 と言っても、
 お互いヨレヨレのジイちゃんと、
 スクラップ寸前のマシンレディ。

 ああ、術なきものか、世の中の道。
 憶良じゃないけど、ボヤきたくなる。

 サヤカは、暇つぶしにワープロでも覚えたいのだろう。
 けれども、練習できるのは土曜日の午前中、Oさんが買物に
 行っている間だけ。
 まあ、それでも刺激にはなるか。

 彼女はもの覚えがいい。
 エンジンを掛けて変速ペダルの所へ割り箸を括ってやると、
 器用なキータッチで、ワープロを打つ。
 大したもんだ。
 機械、機械と侮ってはいけない。

 実は、ここだけの話ですが、
 この文章は、彼女に打たせたものなのです。

  次々と ワープロ・パソコン 生まれ来て
   金は続かぬ 頭は持たぬ
                         
   ち ふ

 この項おわり


註、
   令和元年の今12月も
   ワープロを愛用しています。
   中古品ですが。

あ@仮想はてな物語 新益京鬼門で花咲かオッさん

 * 新益京鬼門で花咲かオッさん(029)

 今日は6時起きした。
 そう、昨日紀伊半島で取ってきた桜の小枝を庭の桜に
 飾るためだ。
 天気はあまりいいとは言えないが、雨の降る心配はなさそうだ。
 あまり寒くもない。
 クーラーの中の桜の花がどうなっているか気になるので、
 そっと開けてみた。

 ショボン。
 花びらはシワシワになっていて元気がない。
 しかし、よく見てみると莟がうっすらと開きかけて
 いるものもある。
 これはもうやるしかない。
 こっそりと脚立を出し桜の木の傍にセットする。
 こちらの方はまだまだ咲きそうにもない。
 瞬間接着剤で小枝をくっつけようとした。 

 あ! 全然、役に立たない。しまった!!
 どうしよう!
 水で濡れている上に表面が凸凹なのでくっつかないのだ。
 ボンドなどを使っていたら日が暮れそうだ。

 あーあ、あさはか!

 しばらく考えてもっと原始的な方法を思いついた。
 糸で縛ることだ。
 もともと、私には美的感覚などないものだから、
 それは見事な桜の木が、出来上がってしまった。

 Oさんは、少しは喜んでくれるかな?

 8時過ぎ、Oさんはいつもの日曜日通り起きてきた。
 普段の日は家族の世話で6時には起きている。

 「たまにはゆっくり寝てみたいわ」

 これが、Oさんの朝の口癖である。

 「桜が咲いてるよ」
 「嘘! 昨日はそんな気配もなかったわよ。どこに?」

 ウィヒヒ!

 「どこどこ」と言いながら庭に出て行った。
 すぐに、すごい剣幕で帰って来て戸を閉めるなり、
 「あんな馬鹿なことしたの、あなたでしょ!!
  いい年して何やっているの!!!」

 私の頭は、予想外の反応に狂ってしまった。
 どう対応していいかわからない。
 ちょっとは喜んでくれると思っていたのに、
 こんなことになるとは、夢にも思っていなかったのだ。

 Oさんは次から次へとスカッド・ミサイル並みの、
 言の葉を投げつけてくる。

 彼女の言い分はこうだ。
 桜は放っておいても咲く。
 それなのに、私がけったいな桜の小枝を
 括りつけたものだから、
 元の木の莟まで、痛めつけてしまった。
 その上、見かけもよくない。
 そんなアホなことする暇があったら、
 お湯のひとつも沸かしておきなさい、
 というようなものであった。

 もっともだと思う。
 しかし、私にしても、もっとましな桜の花になる予定だった。
 花咲かじいさんのように活きのいい花びらが満開になって、
 Oさんが、「綺麗ね」と一言いってくれると思い込んでいたのだ。

 現実は、厳しーいっ。
 朝から反対にOさんを怒らせてしまった。

 「ちゃんと、元通りにしておきなさいよっ!」

 ああ、こちらは迎撃用・パトリオットミサイルを
 打ち返す元気もない。

 花開け ささやかながらの マイホーム 
   ローンは味方か はたまた敵か
                     
       ち ふ

                      
  この項おわり




あ@仮想はてな物語 万博公園の太陽の塔が、サヤカに懸想した!


 * 万博公園の太陽の塔が、サヤカに懸想した!(030)

 万博公園の横は、よく走る道路の一つである。
 近畿自動車道から名神や中国自動車道へ入った時に、
 通るのである。

 いつの頃からかは忘れたが、夜間、万博公園の近くを走ると、
 必ずサヤカのヘッドライトの調子が悪くなるのである。
 照射角度が狭くなる。
 不思議だったが、高速道路は明るいので、
 別に気にもとめてなかった。

 それがある晩のこと、太陽の塔の傍を通っていた時、
 何か視線を感じたので、太陽の塔を見た。

 ヤツがウィンクを送ってきているではないか!

 サヤカのヘッドライトは当然狭くなっていた。
 ははあ、原因はこれだったのか。
 私は納得したのだ。
 不気味な顔してウィンクを送るなど、サヤカでなくともゾッとする。
 私は身震いがきた。
 何ちゅうヤツだ。
 よりによって、私の愛車に懸想をするなんて。
 私は、舌を出してやった。
 ヤツときたら牛の角のような耳を上下に動かしながら、
 浮かれている。
 困ったヤツだ。

 ある時、サヤカに聞いてみた。

 [君、太陽の塔、嫌いかい?]
 [あんなずんぐりむっくりで、へんてこりん大嫌いっ!]

 [君も外見で判断するのかい?]
 [ある程度は・・・ でも仕方ないんじゃない?]

 [じゃ、オレなんかアイツとそっくりだしな]
 [ううん、違うわ。あなたは ト、ク、ベ、ツ]

 [どこが?]

 半分嬉しくなって、ちょっと意地悪く聞いてみる。

 [だって、私に生命を与えてくれるでしょ。それに・・・]

 [それに?]
 [・・・・・・・・・]

 [なに?]
 [よくわからない]

 サヤカによれば、アイツも超能力を持っているという。
 けれども、そんなには強くはないらしい。
 アイツの数キロ以内に近づけば、
 いつもチョッカイを掛けてくるという。
 それがとてもしつこいらしい。

 私と同類みたいだ。
 ずんぐりむっくりも同じ。
 だが、ヤツは彼女に嫌われているし、
 私は、そうではないみたいだ。
 持ち主の強みか。

 彼女はヤツの顔を見るのも嫌いだが、
 傍を通るのも気味悪いと言う。
 私は、愛敬ある顔をしてケッタイなヤツだな、
 ぐらいにしか思っていなかった。
 見る者によっては、こうも評価が違うものか。

 これからは、サヤカのためになるべく他の道を選ぼう。

 芸術に 現わる個性は 天性か 
   それとも単に お人が騒ぐだけ?

 ち ふ

                   
  この項おわり

あ@仮想はてな物語 大みわ神社の大鳥居 ?!

2019-12-23 10:11:22 | 仮想はてな物語 
copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
            
           平成はじめのころです。


                
 * 大みわ神社の大鳥居 ?!(011)

 

 自動二輪の小型から中型に切り換えた。
 バイクも買った。
 例のSサヤカだ。
 彼女に慣れるため、会社を5時過ぎに出ては
毎晩練習していた。
 同僚の少しキツーイ視線も、別に気にはしない。
 コースは大体決まっている。
 自宅に近い所ばかりだ。Oさんも、
 「いい加減にしたら!」と眉をひそめる。

 しかし、私は必死だ。
 合格もスレスレの70点だったし、
今までカブばかりに乗っていたので、
 250ccともなると感覚が全然違うのだ。
 車体重量も150kg前後。

 重たい。
 恐い。
 それでも乗る。
 行のようなものだ。

 慣れて乗りこなしたいという要求も強い。
 跨がると、元来足の短い私は足をつきかねている。
 きき足は左なので、右へ倒れると、
 右足の踏張りがきかない。
 というよりも、コツがわからないのだ。
 シートに跨がるにも一苦労する。
 サヤカは、オン・オフ兼用のバイクだ。
 山路のような悪路でも高速道路でも走れる。

 カブで、この10年近く田圃の畦路ばかり走っていた。
 特に、私は道らしくない道や山の路が好きだ。
 その為、兼用車にしたのである。
 クラッチの切り換えにも慣れていない為、
左手首・左腕が痛いので、
 サポーターをはめて練習している。
 事故から遠ざかるには、身体で覚えるしかない。
 カブの経験からわかっている。
 ギアチエンジもまだまだ、だ。
 エンストもよくする。
 初日に、ガソリン・スタンドで、
キル・スイッチに知らぬ間にふれていて大恥かいた。 
カブにはキル・スイッチがなかったのだ。
 キル・スイッチとは非常時に備えて、
エンジンを強制的に停止させるスイッチである。
 何かの拍子にふれたのだろう。
 ガソリンを入れ終わって、
いくらスタータ・ボタンを押してもかからない。
 あせった。
 あせったが、どうしようもない。

 店員に聞いてみる。
 「今日買ったばかりなのに、もう故障したのかな?」
 店員はちょっと見て、
 「お客さん、OFFになってますよ」と、
 キル・スイッチを戻してくれた。
 やはり、私のような初心者が多いのか、よく知っている。
 思い出すと、今でも恥ずかしくなってくる。

 その夜は、霧がかかっていた。
 大神(おおみわ)神社に行った。
 山全体が、ご神体となっている例の神社だ。
 酒の神様でもある。
 万葉集などにも詠みこまれている、この国最古の神社だ。

 夜の神社はいい。
 誰ひとりいない。
 灯篭が灯っているので恐くはない。
 静かで、こころが落ち着く。
 パンパンと柏手を打つとあたり一面に響き渡る。

 無事故・無違反を祈る。

 巳の神杉が、心憎いほど高い。

 しいーん。

 霧で全体がボヤケていて夜。
 私の眼は夜盲症気味で近眼。

 何とも風情がある。
 いくら居ても厭きないのだが、やはりもっと
 練習しなければならないと、またサヤカに跨がる。
 霧の道も慣れておかねば、という挑戦意欲もある。
 前方に、大神神社の大鳥居が見えてきた。
 その(ころ)日本一大きいという鳥居には、
夜間照明があたっている。
 が、霧のためぼんやりとしか見えない。

 大鳥居は耐候性鋼板で作られていて、
1,300年ぐらいは持つらしい。
 私は進んだ。
 その時である。
 目の前がクラクラッとした。
 何とサヤカが大鳥居の柱を登り五角形になっている、
 大鳥居の上を走っているのだ。

 ワァーッ!

 40mもある一本橋。
 それも空中。
 高さは32.2m。
 教習所の低地でさえ何度も落ちたことのある
 恐怖の一本橋走行。

 不思議だ。
 バランスはくずれない。
 サヤカが勝手に走っているという感じだ。
 私は、こわごわ。
 もう生きた心地はしなかった。

 しばらくすると、サヤカは反対側の柱を下りて、
 普通の霧道を何事もなかったように
 澄まし切って走っていた。



 鉄びとの バチを恐れぬ わがバイク
   大鳥居渡る 霧つつむ深夜
                     
    ち ふ


                   
   この項おわり


あ@仮想はてな物語 石舞台の石が ?!


 * 石舞台の石が ?!(012)

  これもSサヤカに乗り始めの頃の話である。

 その日は石舞台に行った。
 石舞台にゆく道路はカーブが多く、また舗装されているので、
 よく練習を兼ねて走っていた。
 秋も終わりというよりも、冬のはじめの夕方なので、
暴走する
 若者(ばかものと読んでください。ただし、暴走するという
 修飾語がついた時に限ります)も居ない。

 石舞台は、人が寝ているような形にも見える。
 周りが広いので石舞台自身は小さく見える。
 芝生も枯れていて寒々しい。
 人っ子ひとりいない。
 私はそういう風景も好きだ。
 視界内に人がいると気が奪われて
景色に溶けこみにくい。

 初冬の夕暮。
 じっとしていると寒いが、その寒さに耐えて
ひとり座っていると
 [これが人生そのものだ]という実感がこみあげてくる。
 それがたまらなくいい。
 こころが酔っ払ってしまうのだ。
 あたりは薄暗い考えこむというよりも、
ぼんやりとしていた。


 剥き出しになった大岩。
 古墳あとだと言われている。
 わざとそうされたのか、自然にそうなったのか、
よくは知らない。
 いろいろ諸説もあるようだが、
そういうことはあまり気にしない。
 故意にしては、何故か中途半端な壊し方だし、
 自然になったとすると、
 人工的なカバーが何故なされなかったのか、
 もう一つすっきりしない。

 しかしながら、そんなことは私にとっては
どちらでもよい。
 今日は故意で、前回は自然。
 その時々の気分に合わせて勝手に解釈を施す。
 葬られた者が権力者であればあるほど、
 その剥き晒しの巨石が物語る虚しさが、
 よく伝わってくるのだ。

 Oさんは、まだ内職をしているだろう。
 啄木の「手をみる」の短歌が浮かんでくる。

 近くの寺で鐘が鳴り始めた。
 ゴオーン。
 ゴオォーン。
 撞き慣れた者の手による音が聞こえてくる。

 アアーッ!

 その時である。
 どうしたのだ!!

 ゴオーンという音が聞こえてくる度に、
あの何10tもある巨石が
 ジャンプしているのだ。


 1mとまではゆかないが、50cmぐらいは
跳ね上がっている。
 これは何という現象だ。
 目を擦ってみるが、ウン、やはりジャンプしているに
 間違いない。
 不思議だ。
 けれども、そういう情景を見たのは、その日1回限りである。
 その後何度も行ってはいるが、巨石は動いてはくれない。
 でもいつかまた、あの光景に出会えるのではないかと、
 夕暮時今も月に数回は、せっせと通っている。



 石舞台 鐘撞く音に 驚きて
   何百年ぶりかの 巨石のジャンプ
                       
    ち ふ


                  
     この項おわり



あ@仮想はてな物語 潮岬のはまゆうに ?!


 * 潮岬のはまゆうに ?!(013)


 数年前のある日、いつもの林道を走っていた。
 Sサヤカが久しぶりに話しかけてくれた。


 [いいこと教えてあげる] 
 彼女によると、日本海側の鳥取砂丘のある場所の砂と、
 琴引浜の鳴き砂と、太平洋側の白浜の砂とを、
X:Y:Zの割合で
 ブレンドし、太平洋岸のはまゆうの
 球根を取ってきて、そのなかに1/10オンスの
メイプルリーフ金貨を埋めて、育ててごらんなさい、
ということだった。


 私は、早速、鳥取砂丘と丹後半島と白浜に出掛けた。
 もちろん、3回に分けていったので2ヵ月ぐらいかかった。
 休みの関係や天候のせいで土曜日だけとなると、
 そうそうゆけるものではないからだ。
 はまゆうという名前には魅かれる。
 ロマンを誘う名前でもある。
 しかし、花そのものはそう好きではない。
 ヒガンバナの親戚ということを聞くと、ウンと頷ける。
 球根を秋口に植えておくと数年で白い花をつけるという。

 私は、プランターにサヤカの教えてくれた通りの割合で、
 例の3箇所の砂を混ぜ、
 小石・粘土質の土などを下に敷き、苗床を作ってやった。
 そして、はまゆうの球根のなかに、
 これまた、例の金貨を埋めこんで丁寧に植えた。


 始めの数週間は世話をしていたのだが、
 本来、そういうことにあまり興味の湧かない
 私は放っておいた。
 Oさんにまかせきりだった。

 時間というヤツは前に置くと長い。
 そのうち、はまゆうのことなどすっかり忘れてしまっていた。
 ある年の夏、Oさんが[はまゆうが咲いているわよ]と
 教えてくれた。
 私の走りの結晶でもある。
 一目見てやらなければ、はまゆうにも悪い。
 白い花がすまなさそうに咲いていた。

 秋口になって、花も枯れ金貨のことも気になっていたので、
 根元を掘ってみた。


 オオーッ!! 何と!


 1/10オンスの金貨が大きくなっているではないか。
 早速、キッチン・スケールを引っ張りだして、
 その上に乗せてみた。
 30gを少し越えている。
 1/10オンスの金貨は3・110gである。


 そうすると、これは1オンスの金貨ではないか!
 1オンスは、31・1035g。
 10倍の増え方だ。


 ありがたい。
 サヤカの小憎いヤツめ、私が、ガソリン代の捻出に、
 四苦八苦しているのを見て、そっと教えてくれたのだな。
 私は、すぐさまサヤカを撫でに走った。


 はまゆうの ほのかに白い 花のもと
   ゴールドコインは ささやかなお返し
                            
   ち ふ


                      
    この項おわり


 ある日、Sサヤカに{もっと出来ないか?}と聞いて、
{数年に、一個で十分でしょ}と窘(たしな)められた。
 それでも助かる。
{サヤカ、サンキュー!}




あ@仮想はてな物語 太子道のプルトップのこころ


 * 太子道のプルトップのこころ(014)


 道路の左端近くは、今どうなっているのであろうか?

 切り貼り、デコボコ、マンホールのフタ、砂利・小石、
プルトップ、
 潰れた飲料水の空缶、段ボール、ひどいひどい。
 すべてがバイクに危険を及ぼすものばかり。
 そんな光景に腹立って、私は、一時プルトップを
 拾い集めていた。
 走るばかりなので、道路に少しでも罪滅ぼしをしたいという、
 気持もあった。
 捨てられたプルトップにも一つひとつ顔がある。
 似たようでもすべて違う形に潰されている。
 開ける人の個性も滲み出ているのだろう。
 道路ぎわに空缶やプルトップを捨てる犯人は、
 少なくともバイクの一人乗りの
 ライダーではないことは確かだ。
 多くは4輪車の窓から放り捨てさられたものであろう。


 その日の夕方、次男の休次郎がタコ焼きを
食べたいと言った。
 Oさんの内職が終わるのは夜も8時すぎ。
 夕食はそれからになる。
 私は、サヤカに乗ってタコ焼きを買いに走った。
 真冬であるが、寒さはちっとも苦にならない。
 K鉄のM駅前の近くにあるタコ焼き屋に寄ったが、
 店は開いてなかった。
 あと、タコ焼き屋があるところといえば・・・


 スーパーの前に出ている所があったのを思いだした。
 3kmぐらい離れている。
 すぐさま、そこへ走った。
 サイフはジーンズの後ポケットに入れてある。
 そこからサイフを取り出して金を払い休次郎の
 待つ家に帰った。
 湯気は十分たっている。
 うまそうに食べる顔を見ていると、
 私でも少しは役に立つのかと思ったりして、
 日頃の断絶の埋め合わせをした気分になる。

 ふと、その時ズボンのサイフを取り出して、
 引き出しにしまおうと思った。 


 あれ!
 サイフは?


 皮ジャンのポケットも捜した。
 ないっ!!
 サイフがない!
 しまった!

 タコ焼き屋では確かにサイフから1、000札を取り出して、
 金を払ったはずだ。
 そうだ。
 あのまま皮ジャンの右ポケットに入れたのだ。
 ということは、帰る途中でどこかに落としたのだ。

 しまった!
 Sサヤカで往復したが見つからない。
 運転免許証やキャッシュ・カード、クレジット・カードなどが、
 入っている。
 虎の子の現金6、000円も入っている。
 すぐさま机の中をかき回してクレジット会社の
書類を捜しだし、
 TELして、使用停止にして貰った。


 土曜日の午後7時すぎだが、営業していた。
 社員には悪い気がするが、
こういう時は、便利でありがたい。


 Oさんに散々絞られる。
 [そんなに怒らなくとも]と思うのだが、
 落とした方が悪いのだから居直るしかない。

 あーあ、ついてない。

 翌日も朝早く、また捜しにでた。
 自転車で行った。
 転んでもタダでは起きない私のことだ。
 腹が立つからプルトップを拾いながら行った。
 1kmほど行ったところで、
 プルトップの微妙な並び方に気がついた。

 何と!

 点線のように数mごとに規則正しく並んでいるのだ。
 私はプルトップを拾いながら、その指し示す方向に、
 自転車を押しながら進んだ。


 ヤァーッ!
 プルトップの指示に従って拾ってゆくと、何と、
 その先が矢印形になっているではないか!


 その先に黒いサイフが草叢に隠れるようにして落ちている。
 すぐさま中身を調べた。
 現金は無かった。
 しかしながら、運転免許証やカード類は手つかずで残っていた。
 ありがたい。
 プルトップがお返しをしてくれたのだ。
 プルトップは、延べ20日ほど、約6、000個拾った所で、
 止めてしまった。
 腰を痛めたからだ。

 プルトップ 道路を汚す 厄介者 
  でもひとりでは 歩きは出来ぬ
                      
   ち ふ

                      
  この項おわり



 メーカーが、一個1~2円で、美化運動の一環として、
 買い上げてくれたらと、願って止まない。
(これは、平成の始めの頃、書いたものです。最近では
 缶と一体型になっているのが主流となっているようです)




あ@仮想はてな物語 新宮川と北山川の流れが ?!


 * 新宮川と北山川の流れが ?!(015)


 その日は、24号・168号・42号を通って潮岬に
 ゆくつもりだった。
 そのため、168号沿いの谷瀬の吊橋にも天誅組跡にも
 目移りせず 目的地に向かって
 一目散。

 この道路は曲がりくねっていて走りにくい。
 対向車もかなり多い。
 木材運搬のトラックが目につく。
 運転手は、私より年配の者が多いようだ。
 若者が敬遠する職業の一つなのだろう。
 道幅が広くなったり急に狭くなったりもする。
 ダムが多いらしく水は奥深く緑を食わえ込んでいる。

 初夏。
 梅雨上がりの風が爽やかだ。
 しかし、全面的に爽快というわけにはいかない。
 爽快には違いないのだが、この道に不慣れなため運転に
 全神経が食われていたからである。

 当然、景色を見ながらのんびり走るという
わけにはゆかない。
 その日の走りは、かなりハードだった。
 潮岬まで行って、その日のうちに引き返さなければならない。
 安全のため40km前後で走っている。
 事故だけは絶対起こすまいと思う。
 これはバイクに乗る最低の決意である。


 夏場の走りで乾いた咽喉には麦茶が一番だ。
 曲がり道は疲れる。
 麦茶で咽喉を潤しながら休み休み走る。
 本宮町を少し越えたところで面白い光景に出会った。


 川の名前は、このあたりでは、
 十津川から新宮川(熊野川)に変わっている。
 その新宮川と瀞八丁を抱える北山川とが
合流しているところで、
 ひと休みすることにした。
 麦茶を飲みながら川の流れを見ていると、
 新宮川は澄みきった清流である。
 また一方の北山川は濁流で如何にも
泥水ですという感じがする。
 両川の流れは均衡していて仲良く清流と濁流とが、
 お互いの領分を侵すことなく
 平行して流れていっている。

 どこかずっと先の下流で混流するのだろうが、
 目に映る範囲内では、
 きちんと棲み分けができているようであった。
 タバコを吸ったり軽い体操をしたり目薬をさしたりしながら、
 その川の色が2色に色分けされている意外性に、
 視線をチラチラ送っていた。

 [おもろいなぁ! サヤカよ。
Oさんにも見せてやりたいなあ]


 そんなことを思っていた。
 その時である。


 何と!!
 二つの川の流れが押し合いをし始めたのだ!


 どちらが先に手を出したのか気がつかなかったが、
 私が気づいた時は、
 新宮川の清流が北山川の濁流を押し上げていた。
 北山川も敗けてはいなかった。
 押し返している。
 新宮川は後戻り。

 残った!
 残った!

 私は、もう行司になった気分。

 どちらも敗けるな! ガンバレ! 頑張れ!

 手に汗がこもる。

 すっごいな! すっごいな!

 こんなおもろいもん、一人で見てええんかいなあ?


 なあ、サヤカよ!!
 返事はない。


 10分ぐらい、両川は押しつ押されつの相撲を
取っていただろうか。

 今はもう静かに流れている。
 1万円拾ったような気分。
 気持よくその場を離れて、私は潮岬へと急いだ。


 168号 新宮川と 押し相撲
  瀞八丁の 北山川

   ち ふ


    この項おわり




あ@仮想はてな物語 中国道でサヤカが ?!


 * 中国道でサヤカが ?!(016)


 ある金曜日の夜の夢の話である。
 Sサヤカが人間の姿をしていた。
 若い時のOあゆかさん、そっくり。
 とても悲しそうな顔をしていた。
 彼女が何故サヤカだとわかったのか?
 それは私の目の前で、
 バイク姿からOさんにパッと変わったからだ。


 [どうかしたの?]
 サヤカは何も答えない。
 涙を少し貯めて眼をそらしていた。

 どうしたのだろう?

 私は、どうしていいかわからなかった。
 サヤカであるのはわかっている。
 けれども、彼女は今は人間の女性だ。
 Oさんには似てはいるが、Oさんではない。
 違うから、私は迷うのだ。
 肩にそっと手を置いて慰めてやりたかった。
 彼女が、Oさんなら何のためらいもなく、そうしたであろう。

 サヤカは、そのうち私から遠ざかっていった。
 右足が痛いのか少し引きずって歩いている。
 追っかけようとするが足が進まない。
 あまりにも遠くに行ってしまうので、
[おーい]と声をかけようとしたが声がでない。


 あーあ、どうしょうもないのかと、心を絞りこんだ時に
目が覚めた。
 何故あんな夢を見たのだろう。
 夢なんていうものは何か現実と関連性を持っていても、
 良いはずなのに、思いあたるフシはない。


 次の日の土曜日は丹後半島を一周する予定であった。
 中国自動車道・舞鶴自動車道(福知山I・C)から、
 9号・178号を通って、
 時計回りに海岸線沿いに走る予定だった。


 天気は秋晴れ。
 ツーリングには、もってこいの日であった。
 だが、秋の天気は変わりやすい。
 ましてや山陰地方までゆくのである。
 どう変わるかわかったものではない。
 TEL天気予報では曇りはするが、降水確率は
30%以下だった。


 行くのみ!


 中国道に入ってまもなくの時であった。
 走りがおかしい。
 サヤカのハンドルが微妙に震えるのである。
 私はピンときた。
 昨夜の夢はこれだったのか。


 すぐさまパーキング・エリアにサヤカを止めて点検した。
 私は、サヤカが足を引きずって歩いているのを
思い出したので、タイヤをすぐさま疑った。
 前は何ともない。
 後のタイヤを叩けば少し凹むのであるおかしい。
 これぐらいの力でこんなになるはずないのにと思ったので、
 入念にチェックした。

 クギを拾っていた。
 タイヤに釘が深く差し込んでいたのだ。
 危ないところだった。
 サヤカの夢を見ずにあのまま走っていたらと思うと
ゾッとする。


 西宮インターで降り修理工場を捜した。
 朝の9時前だったが、幸いインターの
すぐ近くの店が開いていた。
 ノーパンクのタイヤなので修理は10分とはかからなかった。
 便利になったものだ。
 その応急処置で、あと1、000kmぐらいは大丈夫だと、
 保証してくれた。


 ああ、今日一日は安心だ。
 これで丹後半島へ心おきなく行けるぞ。


 クギ一本 見落とすミスも 許されぬ 
   厳しきマシンの 優しさを知る
                       
    ち ふ


                   
  この項おわり



あ@仮想はてな物語 高野・竜神スカイラインの白い花


 * 高野・竜神スカイラインの白い花(017)


 その日は、高野・竜神スカイラインを走って、
 太平洋に出るつもりであった。

 初秋である。
 24号を橋本で出て丹生川沿いの371号を走るのだが、
 371号は狭くて走りにくい。

 見通しも悪いし狭い道路のあちらこちらに車が止めてある。
 キャンプには少し季節はずれだし紅葉にはまだ早かった。
 この道は真夏になるとバイクでさえも思うように
進まなくなる道だ。
 キャンプや谷川での水泳・涼を求める人であふれる。
 全体としては多くはないのだが、
 道路幅が狭く、車を駐車させるスペースに乏しいため
 混雑する。


 スカイラインに入る入口で金を払う時、
 私は、モタモタして焦っていた。
 料金所の年配の係員が、
 「そうあわてなくていいから、ゆっくり出しなさい」と
言ってくれた。
 有料や高速道路の支払いには一苦労する。
 手袋を外して財布を取り出し金を払う。
 たったそれだけのことなのに、なかなか上手に出来ない。
 後続の車が気になって仕方がない。

 ときたま、面倒だから小銭をワシ掴みにして、
[取って下さい]と横着する時もある。


 最近は、手前で止めて歩いて払いに行っている。
 割り込み支払いだから、割り込まれる者はいい顔しない。
 頭を下げて、ただ割り込むのみ、である。


 スカイラインは快適だった。
 快走!
 稜線を走るのは気持がいい。
 稜線の走りは約20kmほど続く。
 まるで空中を飛んでいるような錯覚にとらわれる。
 久米の仙人になったような気分になる。


 平地が初秋であれば山上は中秋、走りは晩秋の
寒さに襲われる。
 時々、Vサインを対向するライダーが送ってくれる。
 歳のせいか自分からサインを送るのは気恥ずかしい。
 相手が送ってくれると、私は、あわてて送り返す。
 何とも爽やかなすれ違い。


 V! VV!


 私は、その稜線ドライブに没入していた。
 40km前後で左右の景色を捕らえながら走る。
 通行量はそう多くはない。
 土曜日のせいでもあるのだろう。
 日曜日に比べれば2~3割方少ない感じがする。


 そんな時である。
 前方に白い花をいっぱいつけた樹があった。
 私は、もともと花の名前や木の名前にも疎い。
 風景など感覚でとらえれば気の済むタイプである。
 しかし、その時は白い花があまりにも印象的だったので、
 スピードを少し弛めた。
 その樹の下に近づいた時である。

 ナント!

 白い花が次から次へと、くるくると舞いながら、
 一斉に落ちてきたのだ。
 まるで空中ダンスをしているようである。
 ゆらゆらと漂いながら、ゆっくりと道路に積み重なってゆく。


 いいなあ! 


 しばらくの間、サヤカとともに見惚れていた。


 稜線が 滑走路と化す 竜神の
   スカイラインに 白き花降りそそぐ
                      
    ち ふ


                 
     この項おわり


あ@仮想はてな物語 有田のさくら


 * 有田のさくら(018)


 「今年は桜が咲くの、遅いね」
 Oさんが言った。
 私の家には、ささやな庭がある。
 70才まで住宅ローンに縛られている報酬の一つであると
 思っている。
 Oさんは、そこに植えている桜の木のことを言っているのだ。
 まだまだ蕾は固そうである。
 ソメイヨシノの開花日は、緯度が1度違えば、
 4日ぐらいの差があると言われている。

 そうだ!
 いいこと思いついた!

 早速、今年のソメイヨシノの開花日を見た。
 紀伊半島の南西部は、このあたりより、
 1週間ほど開花が早そうである。
 ということは、あのあたりに行けば、
もう大分咲いているはずだ。
 私は、すぐさま出掛けることにした。
 往復8時間もみておけば十分だろう。
 紀伊半島で暖ったかそうな所を捜せばいい。
 BOX型の小型クーラーに水を入れ、
 サヤカの荷台に積んで一路24号から
半島へと向かった。


 24号は慣れた道の一つである。
 寒さも薄らいできたので、すれ違うバイクの量も増えてきた。
 ミニバイクにヘルメットを被らずに乗っている奴も多い。
 自分自身の為なのにと思うのだが、他人のことなので、
 どうにも出来ない。


 和歌山から42号に入る。
 バイクだと2時間でおつりがくる。
 信号が多いので、しょっちゅう流れが狂う。
 桜の花を取るのは何処でもいいのだが、
 人が居なく、なるべく花びらが
 大きいのがいい。


 海南を抜け有田に入る。
 私は、海岸が好きだから、有田で42号を出て
海岸沿いを走った。
 いつもの走りとは逆回りである。
 けれども帰りには海岸を左手に
見ながら走れるので我慢できる。
 春の海はキラキラとして、冬に比べると
大分軽くなっている感じがする。
 ところどころに波が白く盛り上がっているのが
何とも言えず綺麗だ。
 数キロ走ったところに堤防があった。


 桜の木があり十分咲いていた。
 五分咲きぐらいか。
 何分咲きと問われても、私などは全体像も、
 ましてやそれが何分かなどということは、
 分かりはしない。
 五分といっておけばどちらに転んでもそう差が
出ないはずである。

 人通りもない。
 車も少ない。
 私は、桜の花を小枝の根元から丁寧にナイフで切り取って
 BOXのなかに入れた。
 目標は200個である。
 一本の木からたくさん取ると悪いので、
 それぞれの木から、20本ずつぐらい、
 取ることに決めた。

 木の本数が少なかったので目標の本数に足りない。
 この先あてもなく進んでも桜があるかどうかわからないし、
 もしあったとしても、
 このように心おきなく摘めるかどうかわからない。


 桜ちゃん、許せ!


 目標の本数になるまで切った。
 BOXに200も入れると水が溢れた。
 桜の花は傷みやすい。
 もう散っているものもある。
 明日の朝まで持つだろうか?
 心配だ。
 桜の花のことで頭がいっぱいだった。

 Oさんには、ちょっと出てくると言ってあるだけである。
 土曜日は内職をしているからクーラーを持ち出そうが、
 何をしようが知らない。
 私は、ゆっくりと家路に向かった。
 花の生きのよさが心配でたまらなかった。
 帰ってクーラーを隠すように物置の隅においた。
 

 何をするのかって?


 そう、家の桜の木に紀伊半島の桜の花を接着剤で止めて、
 花咲かオッさんになって、
 Oさんを驚かしてやろうと思っているのだ。


 明日の朝は6時に起きよう。
 Oさんは日曜日は8時に起きるから、
 2時間もあれば大丈夫だろう。
 ああ、明日の朝が楽しみだ。
 Oさんの驚く顔が久しぶりにみられるぞ。


 さくらのうた:あと2・3日の 短き生命を アンタはな
           気分ひとつで さらにお縮めか

(ちうのうた:ダラダラと 人喜ばすことなく 消えるより 
          アッと言われて 散りなはれ)



 さくらのうた:知りもせぬ 人喜ばせて 何になる
           おらーオラの道 歩んでみたい

(ちうのうた:桜はん アンタの言うこと もっともだ
          でもオレには アンタが必要)



 さくらのうた:ドン作はん 何であんたは このオラを 
           こんなとこまで 引っ張りこむか

 (ちうのうた:これも縁 アンタのことは 忘れはせん
          アホなことして ごめんなさい)
                             
  ち ふ


                     
     この項おわり



あ@仮想はてな物語 竜野の赤とんぼ文字


 * 竜野の赤とんぼ文字(019)

 赤とんぼの里が見たかった。
 兵庫県・龍野市は赤とんぼのふるさとでもある。
 私の故郷へ帰る途中で、赤とんぼの里への誘いが、
 たびたび目に入って気になっていた。

 ふるさとを離れて、20年以上になるのに帰るというのは
 不適当だろう。
 行くと言った方がいいのかも知れないのだが・・・

 私は、バイクには乗るが普通車の方は
ペーパー・ドライバーだ。
 自信が無いのでハンドルは握らないことにしている。
 その為、いつもOさんの運転する助手席で
ふんぞり返っている。
 足を前に投げ出しているので、
 とてもだらしない格好に見えるらしい。
 これは私の知恵だ。
 ZIが悪い。
 事務で座り続けの仕事をしているせいだろう。
 これは職業病だと思っている。
 奈良の自宅から四国の故郷へゆくのには、約350km、
 7~8時間はかかる。
 まともな姿勢で座っていたら、即、ZIが悪化する。
 だから、そんな座り方をして、Oさんから
 「みっともないから止めなさい」といつも足を叩かれるが、
 一向に気にしないし、
 直しもしない。
 私の既得権の一つだ。

 その日は、Sサヤカを運転して一人で行った。
 人に乗せて貰うより、自分で運転して
好きな所へ行けるのは、喜びの一つであろう。
 太子・龍野バイパスから、179号を中国自動車道の
山崎I・Cの方
 に向かって、少しゆけば、「赤とんぼ」の歌碑が立っている
 公園がある。

 初秋の3時すぎである。
 サヤカを歌碑の近くに止めて、
 文学の小径や哲学の小径を一人歩いた。
 人通りは少ない。
 赤とんぼがチラチラ行き交う。
 ジュ遠亭がひっそりと佇んでいた。
 薄曇りのせいか瀬戸内海ははっきり見えない。

 サヤカの所に引き返し国民宿舎「赤とんぼ荘」に向かった。
 きらびやかな馬車に出会う。
 そこで結婚式を挙げた2人を乗せて巡り歩いているのだ。

 赤とんぼ荘のなかの売店でOさんのお土産に
 名産の薄口醤油を買った。
 前の広場からは龍野の夕暮れ景色が見えた。
 もう夕方である。

 その時であった。
 赤とんぼが、どこからとなく数百匹も現われたのだ。
 数10m先でひしめきあっている。

 おおーっ! あれは!

 [ようこそ、いらっしゃい]

 [ ゆうやけこやけの あかとんぼ ]

 何と!
 赤とんぼが、うす赤くそまりつつある夕空に、
 トンボ文字を書いてくれているのだ。
 それも、歌詞を一小節ずつ。

 ありがとう、トンボ君たち。

 赤とんぼ 夕暮の空に 群れなして 
   歓迎文字の ディスプレイ
                    
 ち ふ


                 
   この項おわり


あ@仮想はてな物語 鹿路トンネルですすきの穂が ?!


 * 鹿路トンネルですすきの穂が ?!(020) 

 秋も終わりに近いある夕暮。

 私は、吉野から鹿路トンネルを通って、
 多武峰に抜ける山路を走っていた。
 秋の夕暮時は膚寒い。
 身体が縮こまっていてハンドルも思うように切れない。
 手先・足先がじんじんと寒さに襲われている。
 首筋から流れこむ寒気に身体が、ぴしっぴしっと反応する。

 寒いーっ!

 けれども、そんなことに負けていては、
 自然は私を寄せつけてくれない。
 どんなことも経験である。
 山の中はもう冬の準備を終わりつつある。
 台風で崩れたガードレールが、ぐんにゃりと曲がり、
 小岩があちらこちらに、
 山となって積み重なっている。
 すすきの穂が小道に向かって頭を垂れている。

 ゆっくりと走る。
 それでも避けきれなくて、すすきを擦ってしまう。
 [ゴメン]と小声をかけながら走り去る。
 あたりは薄暗くて人っ子ひとり通っていない。
 もちろん車も少ない。

 この路は10km前後ある。
 私のホーム・グランドでもある。
 凍結の日と、雷・台風の日、通行止め以外は、
 一年中練習がてら走っている。
 この路と石舞台から吉野に抜ける道を走れば、
 大体、近畿・山陰一円の山道を、
 走るのは苦にならない。


 山道といっても1パターンである。
 そのパターンのなかに場合分けがあるにすぎない。
 往復すれば、往きと帰りでの雰囲気はガラリと変わる。


 石舞台の場合、往きは山側、帰りは崖側となる。
 山側を走る場合は山側の崖くずれ、
 崖側を走る場合は路肩に注意を払わなければ
 ならない。
 路は細く曲がりに曲がっているので対向車も
よくとらえきれない。
 ニアミスもしょっちゅうである。
 こちらがいくら注意していても対向車次第で
事故に結びつく。
 ヘッドライトは昼間でも遠距離用に変えている。
 対向車に注意を促すためだ。
 普通車も山道では、
 ヘッドライト点灯を義務づければいいように思うのだが、
 残念ながら、話にも上ってないようである。


 そんな山路を、ゆっくりゆっくりと最徐行で
家路についていた。
 その時である。
 道端のすすきの穂が、一斉に白骨の手に変わったのだ。
 オイデ、オイデをしていた。


 ゾゾーッ!


 私は恐くて恐くて、震えが倍加した。
 スピードを少しあげて、その路から逃げだそうと
必死で走った。

 すすきの穂 おいでおいでと ゆるやかに
   手招きをする 夕闇の晩秋
                    
    ち ふ


                       
  この項おわり

あ@つぶつぶ(日々)321 今日もまた日が過ぎてゆく七癖の

2019-12-23 06:34:12 | つぶつぶ

多層構造ぶろぐ→Multilayer structure blog

ピカ輪世代(世に団塊とも)の一断面を目指して。


 

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*  English translation 


  321 今日もまた日が過ぎてゆく七癖の



        ↓
      (ほんやっ君のとある無料の英訳)

    The Nanakuse of the day Yuku past also today
         ↓
      (ほんやっ君のとある無料の和訳戻し)

また、一日ゆく過去今日のNanakuse







     この項おわり



つぶつぶ(22”22”)・・・・・

あ@仮想はてな物語 嘆きのゴキオーラ 3/61

2019-12-23 06:33:00 | 仮想はてな物語 

  copyright (c)ち ふ
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でも、考えようによっては、それぐらいの費用で人類初の大経験が出来るのなら安いものかもしれない。
ここは、やはり乗ることにしよう。

金曜日の夜、会社の帰りにデパートで葡萄酒を求め、次の日、松阪まで行った。帰りには信楽に寄る予定である。165号から23号に入る。5月の始めだというのに田植えが始まっていた。オレが住んでいる奈良県のS市よりは数週間早めである。早稲を作っているのだろう。水田に痛々しそうな早苗が心細げに植わっていた。あんなのが大きくなって稲穂を付けられるのだろうかと他人ごとながら心配になってくる。


つづく

あ@仮想はてな物語 キヨヒメの整形手術 37/49  

2019-12-23 06:31:29 | 仮想はてな物語 

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アンジンは熊野へと旅立つ。熊野権現で悟りが開けるかも知れないという淡い期待を胸に抱きながら出立する。しかし、数週間で悟りなど開けられるはずがない。悟りの境地に入った暁には、キヨヒメに正式に交際を申し込む気である。結果は空しかった。恋愛道は己に自信が無ければ走れるものではない。自信は最低限の装備である。女性に誇れるモノが心の内に無ければ進入さえも許されはしないのである。またアンジンは己に錯覚を抱けるような不誠実な男ではなかった。そこが、また彼の魅力でもあったのだが・・・



彼は時間が欲しかった。キヨヒメの時間が止まり自分だけの時間が流れてくれるように祈った。しかし、結果は虚しかった。



つづく