株式会社プランシードのブログ

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その15.言霊(ことだま)

2012-06-23 14:27:41 | 制作会社社長の憂い漫遊記
私はいまから30年ほど前、この業界に入って、
ビデオを使った商品PRからスタートしている。
「動くカタログ」である。
同じ動画でありながらフィルムとビデオの最も大きな違いは
同時録音(同録)ができること。
つまりインタビューを構成要素として作品に組み込めることだ。
フィルムでも同録できるカメラはあったが、所詮3分間が基本になる。
ビデオテープなら当時でも20分間は回せた。
しかし、この世界に入った頃、私はインタビューを構成要素として
作品の中にあまり取り込んでいなかった。
商品の美しさをどう映像で表現するかに傾注し、
イメージカットの撮影に工夫を凝らしてばかりいた。
いまは「使ってみていかがでしたか?」の答えを
お客さまに求める『インタビュー手法』がPR作品でも主であるが、
当時はイメージカットのうまさこそが、
監督やカメラマンの技量だった。

大学を卒業して、2度目の移籍先「映像館」に、本間さんはいた。
私よりも2~3つ?年上の本間さんはテレビのディレクター上がりで、
インタビューを当然のように作品の中に組み込んでいた。
取材に行っても、本間さんはまずインタビューから始める。
「インタビューにこそ真実が秘められている!」とでもいうように。
その構成をみても、インタビューの使い方がうまい。
当時「映像館」のプレーイングマネージャーであった
映画出身の中畑演出部長も、記録映画出身の山田制作部長も
インタビューは「うまい」とはけっして言えなかった。
逆に本間さんは、情緒的な絵やイメージカットにはタンパクで、
けっして「うまい」とは言えなかった。
私もこの時はまだインタビューが下手だったが、
インタビューを構成要素の一つと捉えるようになってからは
インタビューの仕方や使い方が格段にうまくなっていった。

インタビューで聞く事は、事の流れではない。
その人の『思い』だけでいいのだ。
事の流れは、後でナレーションをつける方がわかりやすい。
その『思い』を聞き出す為に、事の流れから聞いていくこともある。
『思い』が聞き出せていないインタビューは、作品にとってジャマになる。
『思い』は、どんなイメージカットをつなぎ合わせても再現できないし、
イメージカット化すると『思い』を歪曲してしまう。
そしてその『思い』をインタビューで聞き出せたら、
できる限り編集せず、余分な絵もインサートせず、
その人の言葉だけで見せるようにしなければならない。
編集で短くしたり、加工しては、語ってくれた人に失礼であるし、
その人の『思い』は伝わらない。
編集とは捨てることだが、間や息遣いは捨てるべきではない。
日本には古くから「言霊(ことだま)」という言葉がある。
「言霊」とは、言葉に宿ると信じられた霊的な力のことだ。
インタビューとは、まさに「言霊」を引き出す作業なのだ。


最近のニュースを見ていると、インタビューを入れてはいるが
事の流れを代弁させたりする。別にその人でなくても誰でもよい。
インタビューを入れることで、時間つなぎをしているにすぎない。
本間さんを見ていると、
インタビューによる相手の『思い』の引き出し方のうまさではなく、
時間つなぎのうまさを感じた。
おそらくテレビマンとして培ってきた技であるが、
PR出身の私にとって劣等感を大いに感じる技であった。
私はこの劣等感を克服するため、
インタビューを使っての時間つなぎに走るのではなく、
『思い』の引き出し方に時間をかけるようになっていった。
とはいえ、この時はまず本間さんのインタビューの使い方を盗んで、
自分風に構築するようにした。
概して師匠を持たない我流派は真似て取り込み、
消化して自分風に構築するのがうまい。
フィルム出身者よりもビデオ出身者にその傾向が強い。

結局、私は2年間「映像館」に属し、大きな戦果としては
『インタービデオマガジン』(第1~2号)のみとなった。
溝口社長の経営の片腕でもなく、中畑部長や山田部長の助監督でもなく、
独自の路線を歩むことになってしまったが、これも出が出だからしかたない。
こうして「映像館」への紹介者である
安達 弘太郎さん(ソニーPCL大阪・副所長)の期待通り?
飛び級の2年で卒業し、ついにフリーの監督宣言をした。
25歳の春の珍事であった。


(フリーになってはじめて作った名刺
「名刺は体を表す」私の体形をデザイン化した?)


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