私が助監督だったころは、監督はカメラの後ろに座って
指図していたものだが、フィルムからビデオに移行するに従い
低予算化の波が怒涛の如く押し寄せ、1インチから四分三、
ベーカム、DVCAMへと収録テープが小さくなるにしたがって、
スタッフは激減。
DVCAMよりさらに小さなSDカードで収録の頃には、
(ちなみにドローンはさらに小さいmicroSDカード収録)
カメラも格段に高機能になり、ライト無しでも十分撮れるし
大きなガンマイクをぶん回さなくても
カメラに付く鼻マイクでもかなりの高音質で収録できるようになった。
40年前は、取材物でも監督・助監督もしくは制作マン・カメラマン・
カメラ助手・VE(ビデオエンジニア兼音声)・照明マンの
6人体制だったのが、
まず照明マンが消え、次にカメラ助手が消え、
そしてVEに続き助監督もいなくなり、
ついに監督兼制作兼インタビュアーの私とカメラマンの
2人体制になってしまった。
▲インタビューをするだけでも6人がかり
かっては、被写体1人に10~6人が、取り囲んでインタビューしていたが
今では、まぶしいライトや斧のようなガンマイクもなくなり、
襲いかかる機材での嫌悪や緊張から解放された被写体は
リラックスして、ラクにインタビューに答えてくれるようになった。
したがって飛び込み取材(アポなし取材)もしやすくなった。
しかし近年は個人情報がうるさくなり、
使用目的等の断りを入れてから使わないといけないようになった。
そのため編集でボカシを入れたりと後作業に時間がかかるようになった。
いつの時代もラクして撮るのは大変なのだ。
余談だがカメラマンとの2人体制取材での多田組では
私が入れない場所や、車の中ではインタビューは
カメラマンにお願いする。うまいインタビューではないが、
カメラマンと被写体のコミュニケーションが深まり
カメラマン→私(演出)→被写体へのお願い事も
カメラマン→被写体へとダイレクトになり、現場がスムーズになる。
現場はカメラマンが前を、私がカメラの向いていない後ろを担当し、
被写体以外の反応を私が確認して、次に何を撮るかを探りながら
意識はカメラが撮っている被写体に向けている。
よってモニターは必要ない。
これでは丸で16mmフィルム時代に戻ったようではではあるが、
撮影クルーが仮に増えても、私はこれでよいと思っている。
撮影はカメラマン、状況は演出が作るものだ。
しかし2人体制になると、当然のことながら、運転手兼荷物運びまで
2人で行なうことになるし、下手をすると二人で雑魚寝もありうるので
多少気が合う二人でないとやっていけない。
なので、キツイが夜の酒盛りは盛り上がる。
そんな私も年齢を重ねてベテラン演出の部類に入っているのだが、
私自らカメラを持つことにだけは、いまだに抵抗がある。
いまやテレビの世界では助監督はもちろんのこと
演者・インタビュアーまでもが小型カメラを持ち、
簡易複数台カメラクルーとなっている。
それでも演出の私は、カメラを持つのには抵抗がある。
その私がいまドローンにはまっている。
本気でテストフライトを繰り返して、操作には慣れてきた。
そんなある日、ついにお金を頂くドローン撮影を
私自らが行なうことになった。
他の監督作のドローンカメラマンとしての起用には
まだまだおぼつか無いが
社内作品ならいいんじゃな~い、とやってしまいました。
▲移動撮影は本当に大変だった
▲俯瞰撮影はクレーンの出番、カメラマンとカメラ助手がバケットに乗る
私は下で演技指導(中央で偉そうにしている23歳児!)
とはいえ、ドローンカメラマとしてというよりも
今回はむしろ演出としての割合が大きい。
一計を案じた演出こと私は、
メインカメラマンに長らく私の相棒をしてくれている
小沢カメラマンを起用。
彼もまた、ドローン操作ができ、
私の作品ではドローンでの撮影も行なってくれる。
その彼が、最近私の持つドローンと同じ型式のドローンに買い替えた。
好都合である!
私の専属ドローン講師としても活躍してもらうことにする。
撮影前日の講習会となった天気祭り。
さすがに小沢講師はカメラマンである。
ドローン操作は二の次で、カメラの基本機能からレクチャーしてくれる。
ドローンにはF2.8の20mmワイドレンズがついている。
20mmというのは実にギリギリのワイドレンズで
これよりワイドになると、画面の外にいけばいくほど、
直線が曲線になるほど歪曲してしまう。
20mmはギリギリワイドなのだ。
よって10mも上がれば10m四方を撮ることができる。
朝陽や夕陽はオレンジというイメージがあるが
色温度で表すと、約2000K(ケルビン)。
陽が登るにしたがって、だんだん白く輝くようなイメージになる。
昼間だと色温度は約5500Kある。
ちなみに映画用のフィルムには、太陽光で撮影することを前提に作られた
「デイライトフィルム」と、タングステン光源(赤っぽい電球)で
撮影するように作られた「タングステンフィルム」がある。
デイライトフィルムは5500K、タングステンフィルムは
3200K前後の光源が基準の色再現となっている。
このためデイライトフィルムでタングステン光源下の被写体を
撮影すると赤っぽく写り
タングステンフィルムで昼光下の被写体を撮影すると青く写る。
そこで、再現したい色目により、色温度変換フィルターを
ライトにつけるか、レンズに付ける。
私が20代前半の頃は、まだまだ16mmフィルム作品が踏ん張っており
カメラマンの目を盗み、ファインダーをのぞいたことがある。
するとオレンジ色の世界なのである。
レンズにフィルターがついていたのだ。
その時のカメラマンができた人で「10秒なら回していいよ」
と言ってくれたので
むっとしたカメラ助手さんの横で、カメラを回した。
ファインダーを覗くとオレンジ色。フィルターがついているのだ。
ガラガラというモーターの音と共に、
ファインダーを覗く目に入ってくるのは
黒、オレンジ、黒、オレンジと目まぐるしく
パラパラ漫画を見ているようにフリッカーの世界。
これで何を撮っているのかわかるカメラマンはすごい!と
単純に感動すると共に、演出部でよかった!とつくづく思ったものだ。
PR映画は説明カットも多く、4面分割画面が必要な時もある。
オプティカル処理しても16mmの撮影素材では
ざらついて美しくないので、分割画面表現をする時は
35mmフィルムで撮影する。
インタビューでは同録用のフィルムカメラを使う機会にも恵まれた。
演出部の私は、カメラ助手さんに夜な夜なカメラの機構について
学んだものだ(大学でも学んだが記憶にございません!)。
がしかし、ビデオの台頭で16mmフィルムカメラは
一気に押しやられることになった。
▲カメラ助手(左)が持つ16mmフィルムカメラ、空撮で。
私は右、中央はロケサービスのドライバー
▲一体型ビデオカメラ「ベーカム」
右から私、照明マン、カメラマン、VE(ガンマイクとミキサーを持つ)
閑話休題それはさておき。
まずはドローンのカメラの設定を小沢講師の座学で復習する。
40年前の知識が徐々によみがえる。
おっと酒も回ってきた。ドローンカメラの設定は小沢講師に任せ
二日酔いにならない程度の天気祭りを終えて、明日は飛行に専念するため
就寝!爆睡!!
カメラ術についてはまた明日のココロなのだ。
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