株式会社プランシードのブログ

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その16.爆報!グリコ・森永事件「番外編」

2012-06-26 07:50:04 | 制作会社社長の憂い漫遊記
硬い話続きなので、私が大事件に巻き込まれた話をしよう。
今から25年ほど前の話である。
京大卒の経営陣を持つ「映像館」をやめて、
晴れてフリー監督になり半年くらい経った頃だったと思う。

人材不足もあり、フリー半年後には仕事も増え、毎日が忙しかった。
そんなある日、自宅に電話がかかった。
「大阪府警天満署の有馬と申します。多田さんですか?」
「はい、そうですが…何か?」
「多田さんは映像館という会社にお勤めになっていましたね」
「はい?」
「実はいまグリコ・森永事件の捜査をしていまして、
天満署までご足労願えませんでしょうか」
えっ?グリコ?森永事件?なんのこっちゃ~?

出頭までの3日間、私は全く仕事が手につかなかった。
心当たりがない。あまりに突然のお誘いに困惑した。
情報が少なければ少ないほど不安で人間は潰されそうになる。
ようやく向えた出頭当日。私は天満署の見える公衆電話から
当時付き合っていた彼女に電話をかけた。
「今日5時からデートできないか?」
すぐにOKの返事。(そりゃ彼女だもんね…)
「これから天満署に行かなければならない。
もし待ち合わせの時間に来なければ天満署まで僕を訪ねて欲しい」
彼女は何のことやらサッパリわからんと理由を尋ねたが、
『私の存在の痕跡』さえ残せればよかったのだ。
電話を切り、天満署に足を進めた。

指定されたフロアーで名前を告げ
「有馬さんをお願いします」とお願いした。
受付したスーツ姿の若い男性は、事前に聞いていたのか
すぐに部屋に通してくれた。
通された部屋は、映画で見る取調室と同じで、
テーブルをはさんでパイプ椅子が2脚あるだけで、
壁にピンクレディーのポスターもない殺風景な部屋だった。
しばらくすると、40歳ぐらいの如何にも「刑事だ!」と
顔に書いた容姿の方が、お盆にも載せないでコーヒーを
皿にのせたまま手に持って運んできた。
このオッチャンは、有馬さんではないようだ。
「どうぞ」と一声かけてきたが、しっかりと睨みを効かせて
私の仕草や人相から犯人かどうかを探っているようだ。

さらにしばらくして、ようやく有馬さんが登場。
取調室のドアを大きく開け放ったまま
私の前に座り、胸から出した名刺をテーブルに置き、
滑らせるようにして私の目線の先に置いた。

『大阪府警察本部 刑事部 捜査第一課 巡査部長』

目線が名刺に止まるや否や
「お待たせしました、有馬です。どうぞコーヒーでも飲んでください」
と、今度はコーヒーを皿ごと私の前に滑らせてきた。
喉はカラカラだったが、コーヒーと納豆は生まれてこの方ダメだった。
有馬巡査部長は、もう一度「どうぞ」とコーヒーを勧めてきた。
私は震えるような声で「結構です」と答える。
と同時に、刺すような視線をいくつも感じた。
開け放たれたドアの向こうから、その視線は飛び込んできた。
この部屋には有馬巡査部長と私が向かい合わせに座っていたが、
ドア越しのフロアーからは、私たちの横顔が見えるのだ。
このコーヒーに手をかけた途端、指紋採取し、
私がこの部屋を出るまでにチェックし、該当したら『確保!』と叫ぶ気だ…
冗談ではない!マジ怖えよ~。
「信じてくれ、俺は何も知らないんだ~」


(有馬さんから頂いた名刺)

当時、グリコ・森永事件は、キツネ目の男の単独犯説と
右翼だか、左翼だか知らないが組織犯説の両面から捜査が進められており、
「映像館」もその親会社の「UPU」も京大卒で構成されていたので、
学生運動家上がりが隠れ蓑で作った会社かもしれないと捜査していたのだ。
「学生運動?ちょっと時代が違う。そんなこと言われても、
一般ピープルの私にはまったくわからない(涙)」
一通り、「映像館」をやめた経緯などを話して、私は解放された。
その時間約30分?しかし体感時間は10時間にも感じられた。

天満署を出ると彼女との待ち合わせの場所へと急いだが、
頭の中は、先ほどの尋問?が何度もよぎった。
足もヨタヨタとしていたに違いない。
と、ハタと気付いた。
なぜ有馬巡査部長は、私が「映像館」に所属していたことを知っていたのか?
なぜ最近私が「映像館」をやめた事を知ったのか?
ちゃんと私の事も調べていたのだ。
もしや尾行?と思い、勢いよく振り向いたが、誰も尾行していなかった。
もちろんその後、溝口社長はもちろんのこと、映像館やUPUメンバーが
犯人として逮捕されたなんて報道は一切ない。
警察は可能性をひとつ一つ潰して、犯人を絞り込んでいく。
その過程で私は恐怖体験をしたにすぎない。



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